多職種協働の機能・スキルを謳う前に

2017-04-27

厚労省が設置した「新たな医療のあり方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」が、報告書を取りまとめました。「医師・看護師『等』」とあるとおり、報告書の中では医療・看護との連携という視野で、「介護」分野の改革にも言及しています。

現場の問題意識は報告書に反映されているか

病床機能の再編と、その受け皿として国が進める地域包括ケアシステムを舞台とする中では、多職種連携のあり方が「医師や看護師」の働き方を大きく左右するポイントの一つであることは言うまでもありません。

たとえば、介護従事者による「現場での早期の異変察知」が、脳血管疾患や心疾患などの重症化を防ぎ、長期入院リスクを避けることで、医療機関側の収益悪化を防ぐことにつながることがあります。いわば「医療・看護と介護の連携の質」が、医師・看護師の処遇、ひいては働き方に影響をもたらすわけです。

今回の検討会でも、「在宅・医療介護の推進」や「介護従事者との役割分担」といった課題が示され、医師・看護師側にも高い問題意識はあるはずです。では、その「問題意識」は報告書にきちんと反映されたのでしょうか。

多職種間の情報伝達をはばむ「階層的」要因

報告書では、医療と介護の連携に関して以下のような文言が見られます。それは、「医療従事者がより高い生産性と付加価値を創出するためには(中略)医療従事者と連携を深めるべき介護従事者の能力発揮をうながす観点」や「介護従事者が能力と意欲に応じ、生活の場における健康管理・疾患管理の視点を身につけることに加え、(中略)簡易的な医療的ケアを行なえるよう、研修制度を含めた環境整備を図ることも重要」としている点です。

このように、介護従事者側の「医療」にかかるスキルや資質の向上を求めたうえで、ICTや遠隔画像システム等の活用によって情報連携を図るというのが、この報告書の大筋です。ちなみに、ケアマネに関しては、退院調整に際しての利用者への面談に「テレビ電話を活用する等、さまざまな遠隔技術の利用策を検討すべき」という提言も見られます。

さて、こうした提言の流れでは、欠けているポイントがあります。それは、現場レベルにおいて情報連携を阻んでいる要素の一つに、「医療・看護と介護の間に今もヒエラルキー(階層)的な空気」が存在していることです。そして、その「空気」が、多職種間の情報伝達などに具体的な影響を及ぼしています。

つまり、医師、看護師、そして介護従事者が、互いの専門性に理解を示したうえで、「真に対等な立場を築く道筋」がまず必要だということです。これがなければ、研修やICTの高度化などをどんなにうたっても、現場で汗を流す人々の意識には響いていきません。

異なる職種間で共有できる「価値」の確立を

15年以上前にデンマークの医療・介護現場を視察したとき、もっとも目を引いたのは、多職種が「その利用者の支援において何が一番大切か(「基礎価値」という言葉が使われていました)」を対等の立場で議論することがスタートラインになっていた点です。医師が治療上の方針を表明しても、その「基礎価値」にそぐわなければ、介護従事者が堂々とそれをたしなめるという光景も見られました。

デンマークといえば、医療職にとっては「プライマリケアの先駆国」という点に関心は高いのでしょうが、これも上記のような風土があってこそ成立しているものです。また、対等な立場で(情報ではなく)価値を共有することで、介護従事者側も「それに見合ったスキル」を身に着けることに自発的な努力を向けようとします。つまり、多職種の自律的な成長の土台ともなっているわけです。

今回の報告書に、こうした現場の多職種を自発的に動かす「基礎価値」が備わっているでしょうか。今、一部の自治体では、医師も看護師、介護従事者が対等な立場で「その地域住民にとって必要な介護・医療とは何か」を地道に話し合う光景が広がっています。もちろん、最初から根強いヒエラルキーを崩すのは難しく、間に立つ自治体職員がいかに多職種の間に立って汗を流すかがカギとなります。地域でできていることを、今回のような中央の検討会でできないことはないはずです。

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