サ高住入居者の「置かれた立場」に注意

2017-05-18

2018年度の報酬改定に向け、「住宅型有料ホームやサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)における過剰サービス対策」が論点として上がっています。介護給付の適正化に向けて財務省が着目するポイントの一つですが、議論に際して考慮すべき点は何でしょうか?

前回改定でも「過剰サービス」等は課題に

高齢者向け住宅の介護保険サービスにかかる「囲い込み」や「過剰サービス」については、前回の改定議論でも早期から課題として指摘されていました。発端は、3年ほど前に行われた「高齢者向け住まいに関する意見交換会」での自治体から寄せられた意見です。

そこで「囲い込み」や「過剰サービス」に関する実態が報告されたことにより、集合住宅におけるサービス提供の場合の減算要件などが厳しくなりました。訪問系サービスでいえば、「事業所と同一建物」だけでなく「同一敷地内、隣接敷地内」も減算対象となり、それ以外でも「同じ建物内の利用者人数が1月あたり20人以上」は減算となります。

また、国が普及させたいと考えている定期巡回・随時対応型や看護小規模多機能型(改定前は複合型)も、改定前は「減算なし」であったのが、一定の減算を行なうこととしました。さらに、国としては、自治体による立ち入り検査やケアプラン点検の強化などを求めています。今回の法改正では、都道府県による有料老人ホームへの「業務停止」権限などがプラスされる内容があり、今後も行政の関与はさらに強めることになりそうです。

「家族の介護力」の代わりはどこで担う?

そうした中で、改めて「囲い込み」や「過剰サービス」が論点とされ、それが財務省の指摘に端を発しているわけです。となれば、住宅型有料やサ高住の入居者向けにサービス提供を行なう事業者にとっては、「さらなる減算」も頭に浮かぶことになるでしょう。議論の流れによっては、訪問系の10%減算や通所系の1日94単位減算(送迎を行なわない場合の片道47単位減算)から、さらに報酬が差し引かれることも考えられるわけです。

これが一律に適用されてしまうと、大きな副作用の懸念が持ち上がります。それは、「過剰サービス」や「囲い込み」をしているつもりはないサ高住などの設置者も、大幅な収益悪化に見舞われるケースが出てくることです。

そもそもサ高住に移り住むという人の中には、単身者や家族介護者の高齢化などによって「家族による介護が難しい」という事情が背景にあるケースも少なくありません。つまり、「家族の介護力」の代わりを期待すれば、おのずと24時間を通じたサービス量は増えやすくなるわけです(要介護者であれば、夜間のトイレ誘導なども必要なわけで、サ高住に内包された安否確認見だけで済むというわけにはいきません)。夜間の定期巡回・随時対応のサービス資源などがまだまだ少ない中では、建物の設置法人が自ら介護サービスを手がけなければならない状況もあるでしょう。

性急な減算策などはネグレクト助長の危険も

この点を考えたとき、仮に実態調査を行なうのならいくつかの注意が必要です。まずは、「サ高住等の管理者が“同居家族の代わり”を担うなら、そこに介護保険サービスに該当するニーズがどれだけあるのか」ということ。また、「サ高住の管理者などが、(仕方なく)介護保険サービスの代替えを担っている」という実態がどれだけあるのかということです。

この点を精査せずに、ただ「同一事業者によるサービス規制」を一律に強めれば、心ない事業者による潜在的なネグレクト(長時間、利用者を車いすに座らせたままにするなど)も助長しかねません。となれば、立ち入り調査などに際して。介護のことがしっかり分かり、利用者への聞き取りなどもきちんと行える人材の育成も急務ということになります。

もう一つ気になるのは、療養病床の再編による「医療外付型」の住まいにかかる基準緩和などが進もうとしていることです。「囲い込み」を問題にするのなら、この新たなしくみが何をもたらすかという検証も欠かせないでしょう。介護側への規制だけを強め、医療側は逆に規制緩和が行われるというのであれば、制度上での大きな矛盾となりかねません。

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