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定期巡回・随時対応型議論のポイント

2017-06-01

介護給付費分科会が、サービスごとの議論に入っています。トップを切ったのは、厚労省がもっとも力を入れようとしている定期巡回・随時対応型と小規模多機能型(看護含む)など。ところが、特に前者は未整備の自治体が約65%という具合に、国の思惑通りの整備が進んでいないのが実情です。

包括報酬型のサービスに基準緩和が加わると

定期巡回・随時対応型について、厚労省が示した論点を整理すると以下のとおりです。(1)事業者から「日中のオペレーターと随身訪問員の兼務」への要望が多い。(2)(1)を受けてICT等の活用を含めた人員基準や資格要件のあり方を検討する。(3)集合住宅居住者へのサービス提供が多い中で、地域全体へサービスが行き届くようにする方策を考える。いずれも、基準緩和をみすえた論点といえます。

ちなみに、定期巡回・随時訪問型が訪問介護、夜間対応型訪問介護ともっとも異なる点は、「随時の対応・訪問」が基本報酬に内包されているか否かという点にあります(例.夜間対応型訪問介護は、「1回の訪問」ごとに算定されるしくみとなっています)。

包括型の報酬体系ゆえに、国としては「事業者努力によって無駄なサービスを効率化しやすい」という思惑もあるはず。ここに基準緩和が加われば、「効率化」に向けた事業者努力もさらに増すというわけです。しかし、果たしてそれで問題は解決するのでしょうか。

本人・家族の生活をいかに整えるかの視点

ここで、厚労省が示す資料から興味深い事例を取り上げましょう。それは、86歳男性で脳梗塞の後遺症などがあり、認知症日常生活自立度IIIというケースです。本人はやはり高齢の妻と二人暮らし。その妻の介護負担の軽減を図ることで、本人と落ち着いて向き合えるようになったという効果も示されています。

このケースで注目したいのは、以下のエピソードです。この利用者は、以前夜間対応型訪問介護を利用していたときに「緊急コールを月に2、3回、深夜帯に利用」していたのですが、定期巡回の23時訪問を始めてから「緊急コールは0回」になったといいます。

つまり、就寝前の定期ケアをきちんと行なうことで、「本人が安眠しやすくなり、家族は本人の夜間不穏が減るので、家族の本人への向き合いも穏やかになる」という良循環が生まれた可能性があります。もちろん他の要因もあるかもしれませんが、施設やGHでも就寝前のケアの質が、夜間の不眠や不穏を軽減し、それが夜勤職員の負担軽減につながるといったケースはよく聞くところです。

この点を考えたとき、定期巡回・随時対応型でポイントは、本人のその後の心理・行動につながる「カギとなる時間帯」をしっかり把握し、そこに一時的・集中的な定期巡回を計画的に入れることにあるといえます。

既存の訪問介護でも「できること」では?

結局、何が利用者の重度化防止・家族の介護負担軽減につながるのかといえば、上記のような「良循環のケア」を導くことのできるマネジメントの質です。もちろん、利用の段階での不安定状況や、利用者の状態、家族の健康状況などの変化という不測の事態は考えられます。しかし、そこに「随時対応」という受け皿を集中機能さえればいいと考えれば、これもマネジメント次第だと言えるでしょう。

もうお気づきのように、上記のような機能は、従来の訪問介護・夜間対応型訪問介護でも、マネジメント強化のしくみを導入すれば十分可能だということです。つまり、既存の訪問介護をきちんと育てるという施策方針こそが、地域課題の解決にも近づくわけです。

先に述べたように、「定期巡回・随時対応型を普及させたい」とする国の思惑には、「無駄なサービスを排除するという事業者努力を促しやすい」という思惑が垣間見えます。しかし、利用者や家族の状態を安定させるまでには、綿密なマネジメントと高度な専門性が必要です。そのあたりを理解していない事業者が「目先の緩和策」に飛びついてしまえば、サービスの本質が一気に崩れかねません。

大切なのは、現場でマネジメントを担う人材(訪問介護のサ責、そしてケアマネ)の「水面下で積み重ねてきたノウハウ」です。まず、それを報酬上でさらに評価する方針を固めること。ここから議論は始まるはずです。

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