「科学的介護の導入」と2018年度改定

2017-06-15

首相官邸開催の未来投資会議で、「未来投資戦略2017」の素案が示されました。介護分野では、「科学的介護の導入による『自立支援の促進』」がかかげられています。2018年度報酬改定にも確実に影響を与えるテーマです。

科学的データ収集前に2018年度改定で評価?

上記のテーマには賛否両論があると思いますが、ここでは、政府が進めようする「施策の流れ」への素朴な疑問を呈してみましょう。

今回の戦略素案を見ると、「課題」について以下のような一文が見られます。それは、「要介護状態からの悪化を防止・改善させるための先進的な取組が一部に広まっているものの、国として目指すべき形として、自立支援等の効果が科学的に裏づけられた介護を具体的に示すには至っておらず」というものです。

この課題解決に向けて「必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築」すると述べているわけですが、その本格運用の開始は2020年度に設定されています。そのうえで、2021年度以降の報酬改定で評価するとともに「見える」化と図るというわけです。

ところが、それに付け加える形で、「次期(2018年度)報酬改定において、効果のある自立支援について評価を行なう」という一文も加えられています。現段階で「科学的裏づけができていない」から「2020年度からデータ収集・分析を行なう」としているにもかかわらず、その前段階で「効果のある自立支援を評価する」とはどういうことなのでしょうか?

政府自らが「科学的に未実証」を認める中で

上記の流れを素直に受け取れば、以下のように解釈できます。(1)データベースの構築以前に、そのたたき台となるデータを収集しておきたい。(2)そのデータ収集のためには、できるだけ多くの現場での多様な取組を集めたい。(3)その「多様な取組」を引き出すためのインセンティブとして、2018年度改定での「取組評価」を行なうというわけです。

解釈として飛躍しすぎかもしれませんが、現段階で「科学的実証がなされていない」のに、2018年度改定で「取組評価を行なう」というのは明らかに施策手順が前後しています。「科学的実証」がないままでは、通常プロセス評価(実証された取組をしているかどうか)はできないわけで、アウトカム評価(要介護の改善率など)が中心とならざるを得ません。

確かに、財務省は「機能訓練などをきちんと行なっていない事業所の減算措置(つまり、プロセス評価にかかる内容)」などを求めています。しかし、「(自立支援の)科学的実証がなされていない」と政府自らが認めている中では、「利用者に個別機能訓練を行なっているか」など、従来の体制要件にかかる尺度評価にとどまらざるを得ないでしょう。

「勇み足」のデメリット防止策を最優先に

いずれにしても、2018年度改定で何かしらの対応を行なうとしても、それは「仮説→実行→検証→再考」という事前のPDCAサイクルを経ないものとなるわけです。仮に、そこで大きなデメリットが生じれば、施策側は重大な責任を負わなければなりません。

たとえば、科学的実証が不十分なままでアウトカム指標を中途半端に設定すれば、(加算等を目当てに)「改善可能性の高い人ばかりを受け入れる」という事業者も出てくる可能性があります。プロセス指標を無理に積み重ねれば、利用者の意に沿わない機能訓練(虐待に近い行為)などが蔓延する懸念も生じます。

また、仮に機能訓練の実施頻度や利用者のADL向上が見られたとしても、現場の人手不足が十分に解消されないままでは、利用者の状態・環境変化等にかかるフォローが追いつかない恐れも生じます。つまり、介護事故リスクの急増という可能性も浮かぶわけです。

こうしたさまざまな現場リスクを考えたとき、今施策を進める前に少なくとも以下のような保障強化策を整えるべきでしょう。(1)高齢者虐待防止法で、「本人の意に沿わない機能訓練等の強要」を明確に「虐待」と位置づけること。(2)介護事故にかかる独立した対応機関を全国に設立し、利用者と現場従事者双方の「保護」に最優先で取り組む体制を作ること。(3)(2)の機関は「国の施策が事故増に結びついている」と判断した場合に、施策変更の提言を打ち出す権限を有するという具合です。国の「勇み足」が、介護現場の崩壊に結びつくのは何としても防がなければなりません。

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