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パラリンピック開催で考えたいこと

2017-08-01

2020年に東京オリンピックが開かれますが、同じくして開催されるのがパラリンピックです。東京パラリンピック統括部長は都内で行われた講演の中で、障がいをもつ選手や観客が直面する課題を一つひとつクリアしていくことが、共生社会を実現する近道ではないかと呼びかけました。このパラリンピックについて、少し考えてみたいことがあります。

知的障がい者の競技参加はどうなっているか?

パラリンピックといえば、どんなシーンを思いつくでしょうか。肢体不自由クラスでの競技用車いすによる陸上競技やバスケットボール、視覚障がいがある人の5人制サッカーや柔道などは、パラリンピックのPR番組などでもふれる機会が多いと思われます。

では、知的障がいがある人はどうなっているでしょうか。もちろん、こうした人々もパラリンピックにアスリートとして参加する門戸は開かれています。パラリンピックの場合、障がい基準によって種目が細分化されていますが、「知的障がい」クラスの種目も設けられていて、日本からも選手団が派遣されています。

ただし、知的障がいの場合、参加できる種目数は(前回大会まで)3競技7種目のみと限られています。2020年の東京パラリンピックで競技数が拡大する可能性もありますが、どうなるかは現段階で未確定です。また、さかのぼると2004年のアテネ大会、2008年の北京大会では、知的障がいがある人のパラリンピック出場自体が認められていませんでした。

2000年シドニー大会の「事件」とその後

なぜ、上記の2大会で知的障がいがある人の参加が認められなかったのでしょうか。ご記憶の方も多いでしょうが、2000年のシドニー大会で起こった「事件」によるものです。

この大会では、知的障がいランクによるバスケットボールが競技に含まれており、スペインチームが金メダルを獲得しました。ところが、この時に出場した選手団12人のうち10人が健常者であるという不正行為が発覚したのです。スペインチームはメダルをはく奪されましたが、それだけでなく、その後の大会で知的障がいがある選手の参加を「認めない」という事態にまで発展しました。

その後、上記の2大会を経て、2012年のロンドン大会で再び一部競技での知的障がい者の参加が認められました。しかし、先のバスケットボールについては、現段階では参加競技として復活はしていません(バスケットボールは肢体不自由クラスの車いす競技のみ)。

確かに、知的障がいは身体障がいと比較して判定が難しいうえ、不正に対して厳しくのぞむという運営側の姿勢も理解はできます。しかし、オリンピックでもドーピングなどの不正はありますが、メダルはく奪はともかく、協議への門戸を閉ざすという例はありません。

2019年のスペシャルオリンピックスにも注目

思うに、知的障がい者のスポーツ参加への理解のすそ野が広がれば、多くの関係者の知恵を結集し、再び幅広い種目参加への道も開かれるのではないでしょうか。上記で示した一連の経緯は、障がい者への理解にかかる社会基盤がまだ弱いことの証のような気がします。

もし、2020年の東京オリンピックを真に「共生社会を実現する一歩」とするのであれば、この知的障がい者の参加種目拡大に向けて幅広く議論を起こしてもらいたいものです。こうした議論がクローズアップされることが、「障がいのことを多くの人が理解する」という機会にもなりうるのではないでしょうか。

ちなみに、東京オリンピックの前年の2019年には、知的障がい者による国際競技大会であるスペシャルオリンピックスがアブダビ(アラブ首長国連邦)で開催されます。なぜ「オリンピックス」という表記なのかといえば、競技大会はあくまでトレーニングの成果発表の場に過ぎないという位置づけだからです。大切なのは、あらゆる知的障がい者が年間を通じてスポーツ参加、ひいては社会参加を幅広く実現していくという理念があるわけです。

大きな祭典というのは、確かに世間の注目を集め、理念を普及させていくうえでは有効でしょう。しかし、それはあくまで「入口」に過ぎません。大切なのは、一つの祭典をきっかけとして、そこから先の社会のあり方を根っこから考えていくことにあるはずです。

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