人手不足の数字から見える深刻課題

2017-08-22

公益財団法人介護労働安定センターが毎年度実施している「介護労働実態調査」ですが、最新となる2016年度の調査結果が公表されました。調査時期が2016年10月ということで、2015年度の報酬改定から1年半が経過したタイミングとなっています。この点も頭に入れながら、注意したいポイントを取り上げます。

「大いに不足」が全体の不足感を押し上げ

今回の調査では、介護職員にかかる人手不足感が2009年度以降、ほぼ一貫して上昇トレンドにあることが特に注目されています。その間、2015年度改定による処遇改善加算の拡充や介護人材確保にかかるさまざまな予算措置が講じられましたが、今調査結果と照らすならば、効果は上がっていないことになります。

まず注意したいのは、この「人手不足感」の数字の内訳です。不足感という形で括られていますが、内訳は「大いに不足」「不足」「やや不足」の3段階に分かれています。そして、ここ数年の不足感の上昇を押し上げているのが、もっとも強い「大いに不足」という割合の増加です。2013年度からの流れを見ると、5.7%→6.4%→7.5%→8.6%という具合です。

このもっとも強い不足感が、全体の上昇トレンドをけん引しているというのは、何を示しているのでしょうか。介護現場の人手不足感というのは、労働力人口の減少や高齢化による利用者増という人口動態によって、一定の不足トレンドは生じやすくなっています。

たとえば、全体の不足感が右肩上がりでも、「やや不足」の割合はほぼ一定です(報酬改定のあった2015年度はむしろ減少しています)。にもかかわらず、「大いに不足」だけが伸びているのは、先の人口動態だけではない要因が影響を与えていると考えられるわけです。

経営難の事業所を襲う負のスパイラル

一言でいえば、それは事業所・施設の経営状況の悪化です。介護事業における人手不足の場合、その状態を放置すれば、人員基準を満たすために利用定員の縮小等を図らなければなりません。しかし、共用部分の光熱費コストなどは、利用定員の減少に完全に比例するとは限りません。定員減分の空きスペースなども一定のメンテナンスコストが必要です。

そう考えた場合、経営する立場としては、想定以上の採用・育成コストがかかろうとも、許容できる費用対効果の範囲内で、無理をしてでも人員の頭数を揃えようとするでしょう。しかし、経営状況がぎりぎりである場合、その「無理」ができなくなります。その間にも、光熱費等の必要コストはかかっていくわけで、経営損失が相乗的に膨らんでいくわけです。

この負のスパイラルに入ったとき、そこで働く従事者としては「事業所の倒産」などが頭をよぎります。生活防衛という視点では転職を考えざるをえなくなり、離職増大の圧力がかかります。そうなると負のスパイラルはさらに加速します。こうした状況が、「大いに不足」の割合を高めていると考えられます。

従事者のワークライフバランスにも悪影響

実際、今調査での経営状況を尋ねた項目を見ると、収入指数が対前年比100%未満という割合が42.4%に達しています。ちなみに、2015年度のマイナス改定をはさんだ前年度調査では、100%未満は49.4%とほぼ5割に達しています。問題は、これほど経営状況が厳しくなった前年度との比較で、さらに経営悪化している事業所が4割あるということです。

この経営悪化にともなう人手不足を物語るのが、「介護関係の仕事を辞めた理由」です。今調査では「結婚、出産、妊娠、育児のため」が20.5%で2位となっていますが、前年度調査では14.1%で6位にとどまっていました。そこから6ポイント近く増加しており、今調査でもっとも大きな数字変動を示しています。

もちろん、こうしたライフイベントにかかる退職の実情は千差万別でしょう。しかし、従事者のワークライフバランスに応える余裕がないという事業所・施設が、2015年度改定後の1年半で急増している可能性は無視できません。ワークライフバランスといえば、「働き方改革」を進める政府には大きな旗印のはず。その政府が設定する介護報酬のもとで、まったく逆の動きが生じているのは極めて大きな問題です。今調査は、介護給付費分科会でも取り上げられると思われますが、状況の深刻化をしっかり受け止める必要があるでしょう。

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