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2018年度改定は「人を守る」を最重点に

2017-09-08

8月23日開催の介護給付費分科会では、介護人材確保対策について議論が行われました。あらゆるデータが現場の厳しい人材不足を示す中、根本的な打開策は待ったなしの状況となっています。次期報酬改定を含めて、今後期待されるべき施策とは何でしょうか。

2018年度改定での処遇改善策の行方は?

2017年度に実施された介護職員処遇改善加算の拡充については、取得率データは出ているものの、その影響を測る処遇状況等調査の実施は10月、結果公表は来年3月としています。このスケジュールでは、2018年度の報酬改定に反映させることはまず不可能です。やれるとするならば、補正予算を組んでの年度内・期中改定という異例の対応をとるか、もしくは介護報酬外での新たな交付金などを設けるかという形になってくるでしょう。

厚労省としては、処遇改善加算IVおよびVの取得率がともに1%程度である点を指摘しており、「報酬体系の簡素化」を理由にこれらの加算区分をなくしたいという意向が見られます。しかし、2018度改定で処遇改善加算の拡充をせず、着手するのは「区分を減らす」ことだけというのは、「厳しい人材不足」の中では社会的にも強い批判にさらされかねません。

何より、施策的な誘導のために加算を次々と増やし、報酬体系を複雑化させてきたのは厚労省自身です。その厚労省が「報酬体系の簡素化」などという理由を出しても、改定に向けた説得力が得られるとは思われません。

ダブル改定でさらに強まる現場の業務負担

以上の点を考えた場合、(1)2018年度改定では処遇改善加算には着手をせず、(2)引き続き議論を重ねたうえで2019年度の期中改定(もしくは補正予算による年度内改定や新たな交付金設置)という対応になる流れが強そうです。

しかし、2018年度改定は診療報酬とのダブル改定であり、「医療から介護へ」という流れをさらに加速させる仕掛けが増えることも予測されます。つまり、現場の利用者像や多職種連携等の環境が変わる中で、業務負担は増えるが処遇改善は変わらないとなれば、一時的であれ実質「処遇悪化」となるわけです。

そもそも処遇改善策というのは、人材の「労働意欲」とそれによって生じる「労働移動」(介護現場に入職する、あるいは働き続けるという行動)に訴えられなければ意味はありません。費用対効果をきちんと計算するのなら、大切なのは従事者をめぐる多様な環境との相対関係を考慮することです。現場で起きている業務環境の変化もその一つでしょう。

たとえば、急性期から間もない利用者には、(1)容態悪化のリスクが高い、(2)ADLや嚥下機能が衰えている、(3)治療優先の環境下で認知症者のBPSDが悪化しているという3つの状況が重なるケースもあります。そうした利用者対応にかかる緊張感は従事者を疲弊させやすく、いったん事故等が起こった場合、相手が「日々向き合っている利用者」であるゆえに、他産業に比べて従事者のメンタル回復は厳しくなります。つまり、他の従事者に押し寄せる業務上の影響も長期化するわけです。

「人」への視点なくして持続可能性もなし

こうした現場環境の中で処遇改善を実感させる方策として、確かに介護ロボット等の導入が効果を上げることもあるでしょう。しかし、それは「厳しくなっている現場環境を補うため」のものであり、そのために人員基準を緩和しては意味をなしません。それどころか、人員緩和とセットにすることで介護ロボットに負のイメージが付きまとえば、国のロボット産業の停滞を招く危険もあります。

むしろ、2018年度改定でなすべきことは、「現場従事者をつぶさない」という強いメッセージを打ち出せる施策でしょう。たとえば、体制強化加算の一環として、基準以上の人員配置をとる事業所・施設への報酬拡充を図ること。この部分の引き上げで全体をプラス改定とすれば、「国の対応が変わった」という社会的メッセージとなります。先に述べた「労働移動」にも訴えることはできるでしょう。

「それでは、介護保険財政はさらにひっ迫する。制度の持続可能性も低下する」という批判はあるかもしれません。しかし、現物給付という制度においては、サービスを担う「人」が健全な職業人生を歩めることこそが持続可能性の前提であるはず。「人」への視点なくして持続可能性の議論はありえないという考え方を、まず根底にすえなければなりません。

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