9月6日の介護給付費分科会では、PT・OT・STの各団体からのヒアリングが行われました。現行の介護保険によるリハビリで、各職能がどのような役割を果たしているかが事例とともに紹介されています。ここで気になるのが、チームリハにおける介護職の役割です。
ヒアリングでは、利用者の「活動」「参加」に向けて、リハビリ専門職が地域に出向いて支援を重ねる状況が語られています。特に、2015年度改定で定められた「生活行為向上リハビリ」により、居宅外・事業所外での社会参加に向けた訓練(公共交通機関の利用や店舗での買い物等を通じた実践的な訓練)の機会も拡大しつつあります。と同時に、多様な地域参加の場面で、リハビリ職がいかに多職種との連携を図っているかも示されました。
そのうえで、PT・OT・STそれぞれの専門性に応じた多角的な支援ができる点を強調しています。また、訪問看護ステーションに所属する各リハビリ職が、他の介護保険事業所に対して「外付け機能」の発揮といった提案もなされました。全体として、介護保険におけるリハビリ専門職の役割にかかる基準の緩和と評価の拡大が示唆されているわけです。
確かに、利用者の「活動」「参加」に向けた目標を拡大していく場合、リハビリ専門職の「かかわり」の範囲を広げていくことは、今後も介護保険施策における重点課題となっていくでしょう。一方で、チームケアにおける多職種連携においては、その中での「介護職の役割」をいかに評価するかという点をもっと掘り下げる必要がありそうです。
ちなみに、今回のヒアリングでは、生活行為向上リハビリ等にかかる事例が紹介されています。目標設定から介入内容、本人の取組み、そして地域生活定着期に至るまでの状況(アウトカム)が明確に示されています。その間の要介護度の改善も示され、報酬改定にもインパクトを与えるものと思われます。
ただし、特定の利用者の社会参加に向けた流れとして、「明確すぎる」という点が気になります。言い換えれば、「直線的」ということです。人の社会参加に向けては、その時々で多様な因子が働くのは(生活者として)当然であり、エレベーター的な上昇ではなく、らせん階段を昇るように「もっと曲線的であること」が自然なのでは……と考えるわけです。
高齢期であれば、どんなにリハビリを頑張っても、完全に昔の元気だった状態を取り戻すのは困難です。もちろん、そうした目標が「困難」というのは、本人も家族も頭では理解していますが、時折フラッシュバックのように「昔のこと」が頭の中をよぎることがあります。たとえば、たまたま昔の友人と会ったら、その人は昔と変わりなく元気で、その姿と自分の現状をつい比べてしまうことはありえます。そうした過去の姿にとらわれ、今の自分を悔いてしまう機会が訪れたりするのは、人間であれば当然のことでしょう。
そうした「悔い」が本人の社会参加意欲に影響を与えれば、一時的に「本人の取組み」が滞ることがあります。そうした状況も想定したうえで、曲線的な人のあり方を支えていくことも支援者の重要な役割のはずです。
もちろん、リハビリ専門職も老年心理学などは勉強しているわけで、曲線的な人のあり方への対処も心得ているでしょう。しかし、要介護者の生活課題が複雑化する中で、本人にかかる多様な心理的因子をカバーし続けることは、リハビリ職単独では困難がともないます。むしろ、本人の「している生活」に寄り添い続ける介護職の方が、多様な心理的因子をカバーする点では適しているといえます。
つまり、ここに介護職の専門性を発揮する重要なポイントがあるわけです。他の専門職の指示に従い、その業務を補完するのが介護職の役割ではありません。他の職種ではカバーできず、しかもそれができなければ自立支援は成り立たないという部分は、人間ならば無数に存在します。リハビリ専門職への評価と介護職への評価は、表裏一体であることを社会的認識として定着させたいものです。