身体拘束廃止に必要なもう一つの視点

2017-10-26

介護サービス利用者の尊厳保持に向け、第三者視点でサービスをチェックする介護相談員。このたび、利用者への身体拘束や虐待の未然防止に向けて「介護相談員を活用する」という趣旨の調査研究の結果が公表されました。

報告書に書かれた「施設側」への厳しい言葉

今回の調査では、現場に派遣されている介護相談員へのアンケート調査を通じ、身体拘束・虐待につながる不適切ケアの実態にかかる掘り起こしが行われました。特徴的は、これまで十分な把握が行われてこなかった「身体拘束・虐待に結びつくグレーゾーン」のケアについてもスポットが当てられたことです。

具体的なグレーゾーン等については、ニュース内でリンクが貼られている報告書をお読みください。ここでは、今回の報告書を受け、「今後どのような対策が必要なのか」を探ります。ポイントとなるのは、介護相談員だけではない第三者チェックのあり方です。

まず、相談員アンケートの結果に対する考察に注目します。その中には、こんな部分があります。それは、「身体拘束にかかわる案件を施設に伝えるとき、『現場がわからない素人が口を出すな』と態度を硬化させることがある」としたうえで、「『現場がわからない』は身体拘束を正当化する常套句であるが、それで議論を終わらせるのは逃げ」という点です。

施設を構成する「雇用者」「経営者」の構図

これに関連して、相談員の位置づけにもふれています。それは、「ほとんどの介護相談員は現場の実情をわかっているが」としつつも「介護相談員に現場の実情をわかる必要はない」としていることです。その理由として、介護を受けている人は素人かつ一般の人であるという趣旨を述べています。つまり、介護相談員が利用者や家族の立場に立って専門職に「説明を求める」なら、素人かつ一般の人が納得できる答えを求めていけばいい(だから実情をわかる必要はない)というわけです。

利用者や家族の代弁者としての機能という点に立つなら、この理屈も分からないではありません。しかし、大きな視点が一つ抜けています。介護相談員は利用者や家族の代弁者として、現場のケアをチェックする。では、現場の職員を代弁する人はいるのかという点です。これを強調したいのは、介護現場は「利用者・家族」と「施設側」という二者で構成されるのではなく、正確に言えば「利用者・家族」「現場職員=雇用者」「法人=経営者」の三者で構成されているものだからです。

たとえば、調査報告でも強調している「身体拘束をしないケア」を進める場合、それは組織としての実践が必要です。雇用者である職員が個別に頑張ったとしても、それを束ねたり、全職員への必要な技能の浸透を図ったりする組織的なしくみがなければ、利用者の尊厳を守り切ることはできません。

組織的なしくみを整えるうえで必要なこと

調査報告では、「少ない人数でも身体拘束を行なっていない施設もある」と述べています。それは「法人=経営者」が上記のことを理解し、「職員=雇用者」への負担も考慮しながら、適切なマネジメントに向けた努力を払っているからです。では、そうした努力を払う気のない「法人=経営者」に対して、「職員=雇用者」はどうすればいいのか。そこには、現場職員の立場から法人に改革を迫っていく介在者が必要です。その立場が、利用者・家族における介護相談員に該当する「もう一つの代弁機関」ということになるわけです。

もちろん、介護相談員の立場からすれば、「それは施設側の話」となるかもしれません。しかし、調査報告書では、(その施設の「よい所を探す」など)施設との信頼関係を築きつつ、「身体拘束をしない介護の方法をともに考えることが必要」とも述べています。つまり、現場との協働作業の意義も認めているわけです。そうであるなら、それを妨げている「現場職員の疲弊」を取り除くしくみにもっと言及する必要があるのではないでしょうか。

報告書では、「介護の現場では、介護者(職員)は絶対的な強者である」と述べています。しかし、そこにはもう一つ「職員に対して、法人は絶対的な強者になりうる」という構図が存在します。これを防ぐべく、個々の職員が気軽に相談できる第三者機関を公的に整備すること。これができてこそ、介護相談員側の役割も「実」をもってくるはずです。

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