介護人材確保のためのチャレンジ

2018-02-12

厚労省は、2018年度予算案において「介護職のイメージ刷新等による介護人材確保対策の強化」として、トータルで3.7億円を計上しています。仮に「イメージ刷新」で介護人材確保の効果を本気で上げようとするなら、どのような切り口が必要となるでしょうか。

施策側の「自分たちの足元」改革が先では?

社会が特定の産業に「悪いイメージ」を持つ場合、そこには「先行きを見通すだけの材料が乏しい」という要因が付きまといます。社会保険事業など、公的な要素が強い分野の場合なら、「施策決定の過程に始まり、それが現場に与える影響への流れが見えにくい」ことが「材料不足」にあたるといえます。

従って、国が「介護職員の処遇改善に力を尽くしている」といくら強調しても、現場側の「実感が伴わない」という意識との間で大きな断層が生じます。仮に、国が「現場の実感は大げさ」とか「マスコミ等によってデフォルメされている」という認識に終始し、これを打ち消すという方向でイメージ刷新を図ろうとするとどうなるでしょうか。

社会が問題とするのは、あくまで先の「断層」(施策決定から現場実感までの「線」が途切れている状況)です。これを「何とかしよう」という根っこへの掘り下げが行われなければ、どんなに予算投入を図っても効果は限定されるでしょう。「断層の解消」に向けて、施策側が「自分たちの足元を改革する」という意思があるかどうかが問題となるわけです。

若手当事者による施策形成の場づくりを

そこで、「断層解消」のための1つの方法を考えてみます。それは、制度と現場をつなぐ「線」を回復させるため、「施策決定のあり方」に新たなチャレンジを持ち込むことです。

たとえば、介護保険制度の場合、大きな枠組みは財務省や経済界の主導で決定され、厚労省が打ち出す施策は、その枠に「はめられた状態」というイメージが付きまといます。このイメージが「断層」につながる根本要因とするなら、「大きな枠は当事者が決めること」という原点に立ち帰らなければなりません。

そこで、現在の審議会内に、現場職員や家族介護者の中の若手リーダー(全国の家族介護者の会でも20代、30代が主導するケースもあります)で構成する「当事者による審議の場」を設けます。業界ヒアリングのような一時的なものではなく、あくまで施策の方向性を取りまとめる場として位置づけます。

現場の同世代(若手)リーダーとは言っても、国の社会保障制度に対しての見解は一律ではありません。従事者側と家族介護者側でも、社会保障に関する考えには溝もあるでしょう。給付(基本報酬など)の増大を求める立場と、保険料や自己負担の抑制を求める立場で対立が生じる場面があるかもしれません。

それでも、「当事者の立場」から施策決定にかかわるという点が重要です。たとえば、「これだけのサービスが保障されて介護不安が解消されれば、ここまでなら国民負担の増加は許容してもいい」という合意が形成されるとします。それは、当事者合意として重いものであり、「あずかり知らぬ所で何かが決まっている」という「断層」を解消する一歩となります。「若い当事者が制度のあり方にかかわっている」ことが社会にはっきりと伝われば、同世代の人々も「この業界で働く甲斐」を見出だせるようになるのではないでしょうか。

当事者参加の審議は法律できちんと位置づけ

ちなみに、メンバーは地域・職能単位、地域の家族介護者の会の単位で推薦・投票等によって人選を決定します(地域・職能単位で分科会を形成して、その合意を代表者が持ち寄るという形式も考えられます)。このあたりの決定方法については様々な議論もあると思うので、国の審議会にかかる法改正などを国会で議論する必要があるでしょう。

その際、この審議の場が単なる「参考意見の提議」で終わってしまわないよう、そこで決まったことは政府の責任で一般公表します。さらに、最終的な制度改正や財務省等の予算方針に際しては、「どの提議を取捨したか」を明らかにすることも法律で定めるわけです。

多くの人は、「今の国のしくみで、そんなことは夢物語」と思われるかもしれません。しかし、わが国の介護にかかる現状を見た場合、そうした地点まで踏み込まなければ、「業界の将来性」への信頼は回復できない状況まで追い込まれています。厚労省が考えているイメージ刷新に、そこまでの危機意識があるのか。単なる広報活動の強化だけでは、進まない問題であることを認識してもらいたいものです。

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