総合事業の危機、地域はどう対処?

2018-08-16

厚労省の老健局長が、都内で地域包括ケアシステムの展望について講演を行ないました。その場で、介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「新しい総合事業」)の進ちょく状況についてのデータが示されています。

「多様なサービス」の割合は悪化している?

新しい総合事業は、2017年4月からすべての市区町村でスタートしています。そうした中、今回の調査結果で注目されたのが、訪問・通所型における(「従前相当」ではない)多様なサービス(「基準緩和型」や「住民主体」など)がどれだけ整備されたかという状況です。

今回のデータを見ると、訪問型で25.9%、通所型で20.3%となっています。この数字をどう評価するかですが、当の老健局長も「本来の姿ではない」というように、施策者側としても「決して芳しくない」というのが現状の認識となっているようです。

さて、これは17年6月時点、つまり全市区町村でスタートした直後の調査です。この中の多様なサービスについては、2年前の介護保険部会でも16年4月時点のデータが示されています。それによれば、訪問型で約30%、通所型で約27%という数字になっています。この時点の数字との単純比較では、今回の最新データの方が「悪化」しているわけです。

施策側は今の危機を予測していなかったのか

もちろん、16年4月時点では全市区町村でのスタート前なので、一部の先行ケースの数字となります。先行する市区町村の多くは、「多様なサービス」にかかる資源が一定程度根づいている可能性もあり、完全実施の直後より割合が高くなったという見方もできます。

しかしながら、16年4月段階のデータにおいては、「総合事業の開始から1年で『多様なサービス』が出現した」という、厚労省からのやや自賛的な講評が目立っています。つまり、「この調子で行けば、『多様なサービス』は順調に伸びていくはず」という前提で介護保険部会の議論を進めたことになります。

そして、今回の調査結果となるわけですが、特に通所型の7ポイントの低下というのは無視できない数字です。「従前相当サービス」の撤退がたびたび問題となりますが、仮に「多様なサービス」でも「撤退」が見られるとするなら、「今後の好転を見込む」という厚労省判断の甘さも指摘されることになります。

この点を考えれば、16年4月の数字が明らかになった時点で、本来なら「自賛」ではなく、強い「危機感」を持つべきだったはずです。それがなければ、PDCAサイクルも機能しようがありません。介護現場に対して、「危機感をもってPDCAサイクルを機能させる」ことを常々述べてきた立場としては、どうしても言行不一致の印象が付きまといます。

総合事業にかかる資源の未整備は、住民の足元の不安に直結します。中央省庁のPDCAサイクルが機能していないなら、各地域で危機感をもって地域資源の検証を進めていかなければなりません。保険者に対しては日常生活圏域ニーズ調査や介護保険事業計画の策定が義務づけられていますが、それらが「お役所目線」で終わらないようにチェックをかけるしくみが必要になるわけです。

地方議会のチェック機能が早急に求められる

本来、そのチェックを担うのは市区町村の議会です。地方議会には、条例等の策定にかかる議決権や行政事務にかかる監査請求権のほか、地元の施策全般について議会独自に調査を行なう権限(調査権)や国や県に意見書を提出する権限(意見書提出権)があります。住民にとって保険料に見合った地域資源が整わなければ、上記のような議会権限が有権者から求められるケースも出てくるでしょう。

問題は、議会を構成する議員の意識が「足元の危機」にきちんと向いているかどうかです。懸念されるのは、保険者機能強化推進交付金の誕生で、議員の目線が「交付金の授受」だけに向きかねないことです。たとえば、上記の交付金算定の評価指標には「ケアプラン点検の実施状況」なども含まれています。その点検が「どのように実施されるのか」を精査しないまま、「わが市ではケアプラン点検の評価点数が低い」という一面的な指摘が議員からなされるとすれば、議会もまた、現場を突き上げるだけの存在となりかねません。

一朝一夕ではいかないでしょうが、介護現場として、地方議員に「実情」をきちんと知ってもらう機会を持つことが重要です。たとえば、地域の職能連絡会などに地方議員を招き、「足元の介護状況に何が起きているのか」を地道に訴えることも必要でしょう。先の交付金問題などが独り歩きする可能性を考えれば、地方議員と現場との距離感をいかに縮めていくかは緊急を要する課題といえそうです。

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