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涼しくなってからが現場負担の山場

2018-09-11

今年の夏は、「災害級」とも言われる猛暑により、熱中症による救急搬送数も対前年同時期で倍近くにのぼっています(総務省消防庁調べ)。これだけの猛暑を経た年では、その後に涼しさが戻ってからも、利用者の生活にはさまざまな影響が尾をひくと予想されます。9月を間近にひかえた今、何が必要でしょうか。

猛暑でフル稼働した自律神経はダウン寸前

厳しい暑さが去った後でも、「身体がだるい」「食欲がわかない」「熟睡できない」という人は多いと思います。いわゆる夏バテと言われる状態ですが、医学的に言うと自律神経が過剰に疲れていることで生じるものです。

人間は高温にさらされると、汗をかくことで体温調節を図りますが、この機能をつかさどるのが自律神経です。高齢者が熱中症になりやすいのは、加齢によって自律神経の働きが衰えて、若い頃のように体温調節がうまくいかなくなることが原因とされます。

さて、今年のような猛暑では、この自律神経は常にフル稼働の状態にあります。これが長期間続くと神経細胞に疲労が蓄積して、暑さが去っても「うまく働かなく」なります。自律神経は私たちの循環器や消化器、呼吸器の働きもつかさどっているので、うまく働かなくなれば、先に述べた「だるさ」や「食欲不振」「不眠」などにつながるわけです。

これからが重要になる現場のモニタリング

こうした中、加齢によって神経細胞の修復がうまくいかなくなれば、自律神経の働きも回復が遅くなりダメージが後々まで残ります。「だいぶ涼しくなったから、利用者の活動も向上するだろう」と思いきや、「元気が出ない」「食も進まない」「夜間の眠りが浅く、日中でもうとうとする」という状態が、思いのほか長期にわたって続くケースも起こり得ます。

食が進まなければ、栄養状態の悪化によって抵抗力が衰え、感染症リスクなども高まります。日中の「うとうと感」が続けば、ふらつきなどから転倒事故等も懸念されるでしょう。「だるさ」を訴えて機能訓練等もうまく進まないとなれば、ケアプラン上の目標設定の見直しなども検討する必要が出てきます。

さらに、認知症の人の場合、自律神経のダメージによる「気分の悪さ」から一時的にBPSDが悪化することもあります。それによって家族の介護負担が増えたりすれば、在宅介護の継続が危うくなる可能性も高まります。

こうした状況を頭に入れた場合、ケアマネとしては「猛暑が去ってホッとする」のではなく、モニタリング等に意識的に力を入れることが望まれます。各サービス担当者との連携も強化しつつ、栄養状態やバイタル数値を丹念にチェックすることも欠かせません。

現場のモニタリング要員拡充への支援を

今年の夏は、猛暑だけでなく台風が数多く発生したり、豪雨災害も見られました。直接的な被災がなかった地域でも、担当する利用者が一時的に避難所等で過ごすというケースも目立ったはずです。つまり、「いつもとは違う生活」を強いられる状況は多かったわけで、その際に心身に与えるダメージは水面下で蓄積している可能性もあります。

この点を考えたとき、介護現場にかかる負担は一時的に重くなるだけでなく、それが長期にわたることも想定しなければなりません。「今は何とか頑張っている」というケアマネや介護職員であっても、これから1~2か月後に一気に燃え尽きリスクが高まりかねません。年末を前に、介護人材不足にさらに拍車がかかることが懸念されるわけです。

本来であれば、(猛暑の時期という一時的なタイミングではなく)長期にわたる緊張感の持続を考慮しつつ、モニタリング等にかかる支援要員の補充が求められます。しかし、現在の人材不足の中で、各法人が自前で補充人員を確保していくことは不可能でしょう。

そこで、国や都道府県、保険者、そして医師会、介護系職能団体などが協働し、せめてモニタリングにかかる一時的な補充要員の派遣を考えてはどうでしょうか。たとえば、2018年度夏季多発災害(熱中症含む)等という名目で補正予算を組み、これを財源としたモニタリングチームを組むといった具合です。

厳しい国の予算の中では「夢物語」と言われそうですが、このタイミングでの集中的なモニタリングが重度化防止に寄与するのは間違いなく、その後の医療・介護費の高騰を防ぐことにもつながるはずです。今のままでは、9、10月あたりに医療・介護費が増大することも予想されます。そのコスト減に向けて、前もっての投資を行なうという発想は、決して財政健全化と矛盾はしないはずです。

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