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通所介護の送迎サービスに求められる専門性とは? vol.3 乗車後のリスク管理

2015-06-17

前回は、送迎サービスでの専門性について各利用者を安全に乗降するための事前準備となる乗降場所や方法、介護技術の必要性についてお伝えしました。今回は送迎サービスのリスク管理のなかから、「乗車後のリスク管理」についてお話ししたいと思います。

送迎サービスを売りにするなら、まずはリスク管理をきちんと行うことが大事

そもそも、送迎サービスのリスク管理とはどのようなものがあるのでしょうか?

おおまかに自宅周辺環境・乗降場所・乗降方法・介護技術・乗車後(車内)・到着時におけるリスク管理があります。安全、安心で良質な「送迎サービス」を追及するには、これらすべての項目におけるリスクについておさえておく必要があるでしょう。

特に、他事業所とのサービスの質の差別化において「送迎サービス」を第一に考え、事業展開したいと考えているなら、リスク管理はとても重要です。各項目において、何がリスクでありそれを避けるには何をすべきか、把握できるように教育する必要があります。

リスク管理の各項目のなかから、今回は、乗車後のリスク管理についてお話します。

乗車後にも車内でアクシデントが発生する可能性がある

まずは、乗車後のリスク管理の目的から考えます。

この場合の目的とは、事前にトラブルを予防し、ご利用者を自宅から目的地まで安全に、快適に送迎することです。

では、なぜ「乗車後」という視点が必要なのでしょうか? それは、乗車後にも車内で「アクシデントが発生する可能性」があるためです。

ここで、乗車後のリスク管理の項目について考えてみましょう。次の2つが挙げられます。

運行中、運転手に任せっきりにせず、運転手と介助者が互いに協力し合うことが重要です。

具体的には、車両事故が多く起こるケースを各事業所でリスト化し、事故傾向を把握することです。そして、各ケースにおける運転手と介助者それぞれの動きを決め、マニュアル化して、予防に努めます。

代表的なケースは、車両ドア開閉時、発進時、左折時、車両バック時等ではないでしょうか。改めて、自社の事故記録を見返して傾向を見ることをお勧めします。

ご利用者が乗降後、介助者は、どのような会話をしていますか? 得るべき情報を意識して会話をしていますか?

まず、得るべき情報のタイミングは、(1)乗降直後、(2)乗降中の2つ(「乗降前」については前回の記事でお伝え済み)が挙げられます。

(1)乗降直後の情報とは、本日の調子、朝食量と質、睡眠量と質についてで、これが基本となります。これらにより、車内でのリスクが予測できるようになります。

たとえば、調子の悪い方や朝食を抜いてきた方は、乗車中にめまいや吐き気など、体調が急変する事もあります。ですから、ときには事前に(ソッと)ビニール袋を準備し、嘔吐に備えます。人によっては、睡眠不足で運行中深く寝てしまい、意識レベルが遠くなる可能性もありますので、あまり深く寝すぎないよう常に「声かけ」を実施して予防することも大切です。

また、季節によって質問を多少変える必要もあります。たとえば夏場の脱水症が多発する時期では、「最近の嘔吐や下痢の発生」、「冷暖房使用具合」について伺うなど、脱水症に特化した質問を通じて情報把握を行うことも大事です。

(2)乗降中の質問は、車内温度、体調変化についてです。

車内温度は、春夏秋冬、季節ごとに傾向が異なりますし、運行時はドアの開閉ごと、乗車人数の増減ごとに変化しますので、基本的に車内温度は変化が激しいことを頭においておきましょう。乗車中に、車内温度の変化に対応できず、体温を一定に保てずに調子が悪くなる方もいます。車内温度の変化は、乗車中のご利用者に与える影響が大きいものだと捕らえておく必要があります。

まずは、車内温度を一定に保つ必要がありますが、そうは言っても先ほどお伝えしたように、どうしても車内は変化が生じやすいので、乗車中は適宜、各ご利用者に「今の車内温度で大丈夫か? 体調変化は発生していないか?」を確認する気づかいを示しましょう。クーラーや暖房機能を上手く使いこなして(なかにはこれらが苦手、嫌いな方もいるので要注意です)、寒い季節はブランケット、暑い時期はうちわなども活用しながら、各利用者の体温変化を一定に保つよう工夫し、体調悪化が起こらないように支援します。

このように、乗車後の車内ではアクシデントが発生する可能性が結構多いものです。

ご利用者をご自宅から施設まで安全に快適に送迎するには、上記のような視点からリスク管理を行って、質の高いケアに取り組むことが求められます。

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