送迎サービスでの事故報告書・ヒヤリハットについても、日ごろ意識して取り組みをしていますか? 発生後、その場での処理等は実施しても、他職員との情報共有や今後の発生予防の取り組みまで実施するような事業所は少ないのではないでしょうか?
通所介護の事故報告書・ヒヤリハットと聞くと、その多くは、食事・入浴などのサービスに焦点が当たりがちですが、毎日行う送迎サービスについても忘れてはなりません。ただ、他のサービスと比較すると、なぜか「他職員と共有しにくい」「意識を向けにくい」傾向があるのはなぜでしょう?
理由はさまざまあるかと思いますが、送迎サービスを実施する職員の傾向をみても、運転できてなおかつ、ご利用者を安心して乗車させられ、送迎できる、といった高い技術を持ち合わせている者がなかなか少ない現実もあります。
通所介護サービスの勤務シフト上、送迎は、比較的決まった職員が実施しがちで、現実には、運転は運転手としてのみ契約された、非常勤職員が実施する傾向が多くみられます。このような実情ですから、正直言って、安全運転ができる職員を探し、接遇などの要素も含めた教育システムを整えることは、なかなか難しい点もあるかと思います。
そんな状況下でも、今いるスタッフ内で手がけやすく、即サービスにも反映しやすいのが、事故報告書・ヒヤリハットの活用です。これによって、送迎サービスの重要さ、それに関わる介助技術等を改めて認識することができ、質の向上にもつながります。
送迎サービスにおける事故報告書・ヒヤリハットを活用することは、その事業所の「ウリ」につながるかもしれません。
ここで大事なのは、送迎サービスに関わる職員を限定しないで、定期的に入れ替えをさせることです。多数の職員が送迎サービスに関わることによって、職員同士の一体感につながります。なおかつ、幾つもの気づきや知恵を共有することができて、新たな教育要素としても活用できるのです。ひいては、職員育成や送迎サービス全体の底上げにもなるでしょう。
他通所介護施設とのサービスの差別化にも結びつくかもしれません。
ところでなぜ、送迎サービスにおいて事故報告書・ヒヤリハットが必要なのでしょうか?
事業所運営においては、さまざまなトラブルが発生します。
送迎サービスの仕事では、割合的には事業所内の仕事よりもその比率は低いかもしれません。でも、ここで忘れてはならないのが、些細な事故から、事業運営に大きく支障を来たすような重大な事故、自身自身に関わる事故まで、トラブルの深刻さも多種多様で、そこには大から小までの「リスク(危険)」が潜んでいるということです。
有名な「ハインリッヒの法則」に基づいて考えれば、重大事故を防止するには「些細な出来事・トラブル」から軽視しないことが大事といわれます。
「すべては、ご利用者、事業所、自分自身のために」……実際に、発生した事故はもちろん、「その背後にある無数のヒヤリハット」に着目し、「職員一丸」となり、事故報告書やヒヤリハット事例を活用して、再発防止や予防活動に取り組み続けることが大切です。
ハード・ソフトの両面を踏まえてレベルアップし、ご利用者、事業所、自分自身のためにも、安心・安全なサービスを追求していく必要があるのです。