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福祉用具の新たな制度改正「複数貸与の減額」のメリット・デメリット

2015-03-11

今回は、介護保険法改正における、福祉用具に関する「複数貸与における減額」についてお話ししたい。

一物一価だった福祉用具貸与

2015年の介護保険制度改正で、「給付の効率化・適正化の観点から、貸与事業所が複数の福祉用具を貸与する場合において、予め都道府県等に減額の規定を届け出ることにより、通常の貸与価格から減額して貸与することが出来る」ということが決まった。

前回もお話ししたとおり、福祉用具のレンタル価格は、「市場の価格競争を通じて適切な価格による給付がなされるよう、保険給付における公定価格を定めず」、事業者ごとの設定となっている。定めた価格は、事業者として開設するための指定申請の際や、価格の変更を行った際に届け出として必要である。つまり、「一物一価」が基本であった。

今回の改正ではパッケージ価格がより柔軟に

ところが今回の改正ではこう変わる。例えば、大げさではあるが、

今までもこのようなセット出しはあったのだが、限度単位数がギリギリの利用者を受け持つ、価格重視のケアマネジャーにとっては、ありがたい話に聞こえるだろう。

改正のメリットとデメリット

メリットとしては、福祉用具貸与事業者側では効果的な営業ツールとして、さまざまな提案ができるようになるのではないか? 割引ルールは各事業者で決めることができるので、多くのアイデアが生まれてくるであろう。

だいたいは、「ベッド本体+決まったマットレス+サイドレール」や「決まった車いす+決まった車いすクッション」などの組み合わせで、割引が想定される。

価格を重視し、例えば特殊寝台セットで導入したとしても、利用者のADLの低下があった場合、マットレスの変更や付属品の変更の検討の必要性が出てくるだろう。そうなるとセット割引の法則が崩れてしまう。それにより、単位数変更に対する混乱が起こり、そのことを嫌がっていつまでも合わない商品を使い続けてしまうことも考えられる。その結果、二次障害(褥瘡など)という負のスパイラルに陥ることも懸念される。

果たして低価格=適正価格と言えるのか?

今回の改正の背景として、福祉用具には、ますます低価格(適性価格?)であることが求められている。また、厚労省による介護保険給付費抑制などの意図も暗に感じ取れる。

利用者の身体条件にあった組み合わせであれば良いのだが、ただでさえ価格競争が起きていて、利益率が低下している。質の向上、納品スピードやアフターフォロー、そして少なくはない事務作業を求められる中、過度の価格競争は「質より量」となり兼ねない。その状況で利用者全ての希望に合わせられる複数貸与割引を打ち出す事業者はそんなに多くはないだろう。

利用者の条件にかなったものが低価格で貸与できることはとても大事であると思うが、目先の単位数だけで決めずに、福祉用具貸与事業者ごとの独自のルールをしっかり作成し、それを把握したうえで、「本当にその利用者に合っているものが出せるのか?」を見極めたい。

そのうえで、福祉用具をもっと効果的に利用していただきたい。

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