「触れあうこと」の大切さ vol.2 終末期の癒し

2015-04-22

年齢を重ねるにつれて、触れ合いやスキンシップの機会は少なくなってくる。しかし、「触れる」ことで生まれる豊かな感情や心地よさは、何にも代えがたい癒しとなる。人生の終末期に、人が求めることは、人と触れあうことだと筆者は考える。

触れるという感覚がもたらす情報

「皮膚刺激」と聞くと、強い刺激のようにイメージする人もたくさんいるが実はそうではない。

私たちは触れるということを意識しないまでも、日常生活のすべてにおいて触れるという行為を行っている。

座る、歩く、物をつかむといった動作全てが「触れる」ということと関わっており、物が熱いとか冷たいという感覚や、危険から回避するための痛みも「触れる」ことによって起こる。これらは、私たちが生命を維持するためにも重要となる。

そして、衣服の肌触わりや肌と肌の触れあう心地よさは、「触れる」という感覚がないと存在しない。

皮膚は、私たちの身体にある感覚器の1つであり、「触れる」ということは、温度や物理的、化学的、電気的刺激による接触であって、皮膚の受容器で感知され圧迫や痛み、温かさなどといった感覚が生じる。

例えば、パソコンのキーボードを打つことや服を着ている感覚なども、日常生活の中では気づきにくいが、「触れる」ということである。

「擦る」ときは手のひら全体で触れると心地よい

高齢者の方へトリートメントを施す前には、ほとんどの場合、手に触れて挨拶をする。その際に、「手が温かいね」といわれることが多い。高齢者の方の手は血行不良などによって、冷たくなっていることが多い。だから、私の手を「温かい」と感じるのだが、これは、皮膚の温度感覚である温点で手の温度を感じ取ることによる。

また、皮膚への刺激といった場合、圧迫や振動、擦るといったことも含まれる。

高齢者の方は、身体的な機能が低下するのと同時に感覚も鈍麻になってくる。皮膚の感覚についても同じことがいえる。

たとえば「擦る」ことでいうと、指だけで擦るよりも皮膚を密着させ手のひら全体で触れることで、「擦ってもらっている」という感覚をしっかり感じ取ることができる。当然、指よりも手のひら全体で擦られると、心地よさの満足度は変わってくるのだ。

「皮脳同根」…触れることで脳刺激が生じる

皮膚は、私たちの身体を覆っている(守っている)大きな袋であり、身体の中では一番古く大きな器官であり、生命を維持するために重要な役割を担っている。

皮膚がなければ、身体の内部は外部のさまざまな刺激にさらされ、生命を維持することさえままならない。

胎芽細胞は3層から成り立っているが、ヒトの発育期において、皮膚と中枢神経系は一番外側の外胚葉から形成されることから、「皮脳同根」と言われる。

毛髪や爪、歯なども外胚葉からであり、さらに視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった感覚器も同じく外胚葉から形成される。

皮膚刺激は脳刺激でもあると言われているから、皮膚が刺激を受けると、すぐさま脳に信号が送られ身体をコントロールする。それゆえに、心身にさまざま影響がおよぶのである。

トリートメントを施していると副交感神経が優位になり、リラックスし呼吸が深くなってくる。手の拘縮が強い方であれば、全身の筋肉が緩み、拘縮した手は施術を施す前と後では、明らかに緊張度合が異なってくる。

「幸せホルモン」オキシトシンは触れあいによって分泌される

近年、「幸せホルモン」や「癒しホルモン」とも言われるオキシトシンが注目されている。オキシトシンは、母親になった女性が分泌するホルモンで2つの役割があると言われてきた。

一つは、出産するときに子宮を収縮させて出産を促すこと。もう一つは、出産後の母乳の分泌を促すことである。

ところが、この10年くらいで研究が進み、母親になった女性だけが分泌するのではなく、男性も、年齢と関係なく分泌することがわかってきた。

さらに最近になって、「母性愛を育む」といった心理面だけでなく、「信頼」という心理状態をつくり出すという点でも注目され始めている。

オキシトシンは、このように“触れあいやスキンシップ”によっても分泌されるのだ、ということがわかってきた。これは、高齢者の方にも同じことがいえる。

寝たきりになって人と接する機会が少なくなると、表情が乏しくなってくるが、触れあうことでオキシトシンの分泌が促され、笑顔が増えることはもちろんのこと、発語も増え、表情が豊かになり、さらには顔の肌つやも変わってくる。

オキシトシンの効果としては、次の5つがあげられている。

人と人との関係が希薄になっている現在の社会環境だからこそ、良好な人間関係を築ける状態をつくりだせる“触れあいやスキンシップ”といった皮膚刺激が必要なのではないだろうか?

そして、年齢を重ねるにつれて触れあう機会が少なくなってくる高齢者にこそ、“ふれあいやスキンシップ”が大切なのではないか。

人生の終末期に人が求めることは、“人と触れあう”ことだ。触れ合うことを通じて、最期の時間を豊かに、そしておだやかに過ごすことにつながれば、と筆者は考える。

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