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「CCRC」は介護難民を救えるか

2015-06-26

東京都杉並区が、区の高齢者を優先して受け入れる地方移住型の特別養護老人ホームを静岡県南伊豆町に整備する構想を打ち出しました。このことをキッカケに関心が高まっているのが「退職移住」です。実際、政府によって行われた「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」によれば、60代男性の約3割が定年後を地方でゆっくり暮らしたいと考えているとのこと。しかし移住を成功させるには、さまざまな課題がありそうです。

CCRCとは

移住を成功させるための方法として、アメリカで行われている「CCRC」が検討されています。CCRCは「継続的ケア付きリタイアメントコミュニティー」という意味を持ち、住居や生活サービス、介護、看護、医療などを、住んでいたコミュニティから離れず総合的に提供していく施設サービスです。

アメリカの場合、最初は「自立型住居」に住み、生活する上で何らかの支援が必要になると「支援型住居」へ移住。さらに常時介護が必要となった高齢者のためには「介護型住居」が用意されているというシステムになっています。

そして日本におけるCCRCでは、高齢者が地域にある医療資源と福祉資源を中心に、以下のような地域のケアシステムを集めるという方式で検討されているようです。

CCRCの問題点

しかしこの方法では、移住先の人たちが「いきなり大規模な老人のための施設が建った」という印象しか持てません。そのため、「働けなくなった人に来られても困る」という不満が大きいようです。

CCRCを成功させるには、住所地特例について地域に理解を得ることが必要と言えるでしょう。

また「今でも老人ばかり住んでいるのに、なぜ別の土地からの老人を受け入れなければならないのか」という反対も見られます。

日本で地方に施設をつくるのであれば、その地域が「老人ばかりのコミュニティ」にならないための工夫が必要と言えそうです。

問題の解決策

では、どうすれば解決できるのか。そのためには受け入れる側に対し、お金だけでは解決できない利益を提供することが必要ではないでしょうか。

そんな利益として考えられることの一つが、「雇用の機会」です。

CCRCレベルの施設ならば、運営には多くの人員が必要となります。これに対しては、「3Kの仕事まで押し付けるのか」という拒否反応もありました。

しかしそれならば、入居者や職員のために日用品や食費などを提供する仕事も必要です。あるいは、その家族のための幼稚園や学校、あるいは日常生活では商店も求められるでしょう。こうした各場面では、雇用が生み出されます。

「仕事があったら、故郷から離れなかったのに」という思いを持つ方は、少なくありません。地方に働ける場所をつくり、幅広い年齢の人が集まる街づくりをすることは、そうした希望の実現にも繋がるでしょう。

街から作るCCRC

日本でコミュニティへの移住を成功させるには、まず高齢者だけでなく、いろいろな属性の家族が集まることが求められます。その中に高齢者も混ざりながら、移住を進めていくのです。

多様な世代の人々がいるからこそ、その街は成長することができるでしょう。

産前産後ケアから介護サービスまで揃う、まさに「ゆりかごから墓場まで」という街づくりが必要です。

現在、日本で進んでいるCCRCの一つに「シェア金沢」があります。ここでは高齢者や障害児、学生、乳幼児の居住する家がバランスよく配置され、交流が生まれているのです。

このようなCCRCの街づくりが、すでにゼネコンを中心として日本全国で始まっています。

どうすれば移住を成功させ、充実した人生をおくれるのか。介護に従事する側も、しっかりと考えていたいですね。

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