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栄養士と在宅ケア

2016-01-08

高齢者が病気や怪我で入院すると、退院時にADLが落ちていることが少なくありません。リハビリの実施や家庭内のバリアフリー改築などには目がいきますが、食事についてはどうでしょうか。栄養管理指導をプランに入れることは、あまりないかもしれません。しかし「食べる」ということは、身体的にもメンタルにも重要なものです。栄養指導の大切さを確認し、家庭で適切な食事ができるような支援を考えてみましょう。

体験してみると?

以前、栄養指導の大切さを痛感した出来事がありました。

病気で入院していた母が退院することになり、病院関係者や通所施設の介護福祉士で集まり、カンファレンスを行ったのです。しかし栄養士からの指示は、「大腸から下血があったので、消化がいいものを」ということだけでした。

透析を受けているので、塩分やたんぱく質の量を考えなければなりません。キザミ食やミキサー食にすることで、噛む機能が衰えてしまうのも困ります。インターネットで情報を探し、電話で問い合わせはしたものの、結局は何を食べれば良いのか分からずお手上げ。やはり、プロの指導が必要だと感じました。

管理栄養士の専門性

在宅で、何をどう食べれば良いのか。これを教えてくれるのは管理栄養士です。月に2回まで自宅に定期的に訪問し、療養に必要な栄養指導を実施。この指導料は同一建物の居住者以外ならば530点、 同一建物の居住者ならば450点となっています。

管理栄養士は在宅の高齢者のもとへ定期的に訪れ、栄養状態をチェック。患者や家族に対して、調理方法や何をどのように食べれば良いのかアドバイスします。尚、1回の訪問の時間は30分〜1時間程度です。

食事は健康の要

在宅介護を受けている高齢者は、食欲やかみ砕く力の低下に伴って、全体の6割以上が「低栄養傾向」とのこと。では、どうすれば管理栄養士の訪問を活かすことができるのでしょうか。

訪問時に「何をどれくらい食べたか」などをチェック。これは、身体状況を把握するためのポイントとなります。普段と様子が違うときは、ただちに医師・看護師に連絡をとらなければなりません。

低栄養では褥瘡になりやすくなります。また、糖尿病や腎不全の場合は「食事」が病状改善の鍵ですが、家庭で正しい食事をとるのは難しいことでしょう。どのような料理を作るのかを考え、おいしく食べられたかどうかを確認する。そのためには、ヘルパーとの連携が必要です。そしてケアマネージャーは、各職種間で持っている情報を共有できるように調整します。

今後の動き

メタボリック症候群が注目されてから「食」の重要性に関心が集まり、子どもの食生活の乱れまで問題になっています。実際、学校では「食育」が必要になったそうです。

以前より多様な面から栄養指導が必要なのに、学校では管理栄養士を増やす動きはない。嘱託でいくつか掛け持ちしているのが現状でしょう。それでも、管理栄養士の力を活かしていくための動きは少しずつ出てきています

意外に思われるかもしれませんが、薬局に在宅管理栄養士がいることがあります。これは薬局に在宅管理栄養士を置き、在宅サービスをするようになる可能性があるからです。かかりつけ薬局で薬の管理をしてもらい、栄養士から食事指導も受けられる。病院よりも薬局の方が気楽ですし、高齢者の健康管理にとても役にたつと思います。

また、日本栄養士会が「在宅医療とかかわる多職種と連携が取れ、かつ在宅療養者の疾患・病状・栄養状態に適した栄養食事指導(支援)ができる管理栄養士を育成する」として、管理栄養士に対する研修を行うことになったようです。

どのような人に栄養管理指導が必要か。また、連携していくにはどうすれば良いのか。管理栄養士の側からだけでなく、ケアマネージャーもまた管理栄養士の仕事を理解することが大切ではないでしょうか。高齢者のADL向上のためにも、プランに取り入れたいものの一つです。

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