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疲れていれば、いい仕事はできない……認知症の暴力・暴言への対応

2016-04-15

施設を利用している高齢者からの暴力や暴言。受ける側としては、とても辛いものです。高齢者の虐待は社会問題になっています。では、私たち介護者は誰が守ってくれるのでしょうか。こうした状況は介護離職の原因にもなりますし、職員にかかるストレスは大変なもの。どのような対策があるか、考察してみたいと思います。

職員が工夫すること

手加減なしで噛んだり、蹴ったり。あるいは罵詈雑言などに、どう対応すれば良いのでしょうか。まずは高齢者から、「どのようなときに暴力・暴言が出るのか」をチェックしてみます。そこには、何か理由があるかもしれません。

記録することによって原因を探り、暴力・暴言が出る環境をつくらないというのも一つの方法です。「昨日はこのような対応でやったら上手くきました」などと引き継ぎをきちんと情報を共有し、全員で対策を考えていきたいものです。

また、介護者の体調によって、当日の仕事を割り振るという施設もあります。同じ暴力・暴言でも、体調によって受け止め方が違うはず。気にせず流せるときがあったり、いつも以上にガックリしてしまったり。そんな際に工夫の一つとして、申し送りで介護員本人の体調を報告するという施設がありました。

「今日は昨日の入浴介助の疲れが残っていて少し辛い」

各職員がこうした精神・身体状況を申し出て、暴力・暴言が見られる利用者様には、その日元気な職員が中心にケアに当たるとのこと。例えば生理中で真っ青になっている人に、入浴介助は辛いでしょう。結果的にサービスの質が維持できず、事故に繋がる可能性もあります。

対応できないときは?

中には、大怪我させてしまうほど暴力がおさまらないケースもあります。そうした高齢者には、どのように対応していけば良いのでしょうか。

中には、「受け入れない」という施設もあります。確かに個別対応しなければならない人がいるという状態は、どこの施設でも人員的に厳しいもの。しかしプロでも対応できないならば、家族にはもっと無理なはず。そのため、家庭に帰ってもどうしようもない状況となるでしょう。

基本的に「大変だから見ない」というのは、プロとしてやってはいけないことだと思います。難しいことではありますが、例えばプロである介護者が家族に対応方法を教えるというレベルになるのが理想でしょう。場合によっては、医師の指示を受けて安定剤を処方してもらう。あるいは入院させるなど医療的な対応が必要なこともあります。

公的に認められる?

高齢者に、介護者へ大怪我させられるほどの力がある。これは、実態としてほとんど知られていません。では介護中に高齢者からの暴力で怪我をしたというとき、怪我した側は黙っていなければならないのでしょうか。労働基準監督署に、次のような質問を投げかけてみました。

「高齢者から蹴られたり噛まれたりして怪我したとき、これは労災になりますか?」

回答は「労災で診療できる」「休業したときも手当は出る」というもの。書類に代表者と本人の捺印があれば、申請できると言います。

また、目にみえる怪我ではなく、鬱病も多い疾患です。しかし状況として、鬱の原因が高齢者からの暴力・暴言であるという因果関係を証明することが難しい問題でしょう。これは「バーンアウト・燃え尽き症候群」とも呼ばれ、介護離職の大きな原因の一つです。

中には、「弱い」「向いていないのでは」と責められる人もいます。しかし、本人は介護の仕事が大好きという場合も多く、こういう方の離職は好ましくありません。もちろん、「仕事だから仕方ない」という部分もあるでしょう。しかし職場では職員同士の連携、詳しい申し送りを徹底し、制度をしっかり使うなど、自分たちを守って介護の仕事を続けていけるような体制ができればと思います。

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