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どんな「療養」が必要か

2016-09-14

2011年度までに介護療養型医療施設を廃止し、新型老健へ移行することが進められていました。しかし実際にはなかなか上手く移行できず、これは2017年までと期限を伸ばすことに。慢性期の人のための機関として、いったい何が必要なのでしょうか。慢性期のケアについて考察してみます。

医療法に基づく療養病床

従来の老健には、「リハビリテーションを行って在宅を目指し、3か月で在宅に戻ること」を目標とするイメージが強くありました。そのため「3か月経ったらまた別のところを探すのか」とあまり積極的ではなく、入院したまま特養の入所を待っているという形が多かったと思います。

また、介護療養型医療施設は多床で共同トイレという状態。人が亡くなる場所としては決して相応しいとは言えなかったでしょう。しかし、その割に利用料が高いという点も、入所をためらう原因の一つでした。では、人生の仕上げに相応しいケアができる機関や施策には、どのようなものがあるのでしょうか。

まず、従来の介護保険のもとで行われていた「介護療養型医療施設」でなく、医療法に基づいた「療養病床」が創設されました。ここでは積極的な治療が終了し、慢性的な病態になった人たちのケアを行うこととされています。

療養病床では経管栄養や喀痰吸引等を中心とした日常的・継続的な医療管理、また充実した看取りやターミナルケアを行うことになっています。長期的な療養、そして死を迎える可能性がある施設のため、利用者の生活様式に配慮。療養生活を送るのに相応しいプライバシーの尊重、家族や地域住民との交流が可能となる、「住居」としての生活が送れるようにすることが大切です。

ではこの機能を重視した場合、療養病床からの退所理由が「ホスピス」になるのか、療養病床がターミナルケアをするようになるのか。ホスピスとの棲み分けについても検討する必要がありそうです。

看護小規模多機能型居宅介護事業所

「看護小規模多機能型居宅介護事業所」が新しいサービス提供機関として認可されました。利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて施設への通所を中心に短期間の「宿泊」や利用者の自宅へ訪問介護を実施。加えて、看護師などによる「訪問看護」も組み合わせて利用します。

さらにグループホームでも外付で利用することが可能とのこと。グループホームの家庭的な雰囲気の中で医学的処置が受けられるのであれば、現段階ではなかなか良い形なのではないかと思います。

高齢者が在宅へ戻るために

代替施設がハッキリしないままでも、介護療養型医療施設を廃止しようという施策が変わることはなく、どうするのかまだ答えが見つかっていません。さまざまな施策が作られていますが、人間を相手にしていることですから、細かい区分に入れ込むことは不可能ではないでしょうか。

在宅へ戻るためには、訪問型看護や介護が安心受けられるように充実したケアが必要です。しかし、そのためのサービスも介護保険の点数も足りません。異変があったとき、ポケットベルなどでセンターへ連絡が入り、すぐに看護師がきてくれる。そんなシステムなどがあれば、在宅でも安心かもしれません。

「一人のときに何かあったら困る」

そんな心配に応えていけなければ、在宅で療養することは難しいでしょう。

ほとんどの施設では「在宅を目指す」という文言が掲げられています。しかし実際には、死亡が理由で退所するという人が多いのが現状です。また、人工呼吸器や胃瘻をつける状態になったら、「過剰な延命を行わず苦しまずに死にたい」と考える人が少なくありません。

療養で目指すのは、リハビリテーションによって在宅へ戻るのか、それとも安らかに死ねるよう援助するのか。高齢者の「苦しまずに死にたい」という思いと「どこでどのように死ぬのか」という不安に対し、現実的な対応を行うことが必要だと思います。療養先、または自宅で安らかに死ぬことができると確信できたら、老いて死んでいく恐怖から逃れ、前向きに人生を送ることができるでしょう。

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