介護施設に株式会社参入、介護はどう変わる?

2016-10-11

公正取引委員会が9月5日に発表した「介護分野に関する調査報告書について」で、多様なニーズに対応していくため、介護施設への株式会社参入という案が挙がっています。さまざま案が出されている中、実際に株式会社が参入することで高齢者サービスの質は上がるのか。また、どんな問題が懸念されるのかなどについて考察していきたいと思います。

介護事業の特性と株式会社参入における懸念点

一番ハッキリさせておかなければならないのは、介護事業がモノつくりやサービス業と異なり、例えばAという施設が人気だったとしても利用人数を増やせないということです。介護サービスは利用人数によって、施設の占有面積や人員配置が決まっています。そのため、希望者がいても施設の面積が変わるわけではなく、また、どんどん人手を増やすことはできないのです。

独特な良い雰囲気を持っていても、新しい利用者や職員が入ることで以前と同じレベルのサービスを保てなくなることもあります。これが、人間相手のサービスの難しいところです。実際に参入したとしても、補助がなければ介護特別老人ホームと同じ価格帯で同等以上のサービスはできないという営利法人が少なくありません。これで「自由競争」といえるのでしょうか。

また、多くの職員の手がとられる“処遇困難者”を避けるということも考えられます。規制緩和によって参入した新規事業者が,収益性の高い分野にのみサービスを集中させるクリームスキミングへの対応も必須となるでしょう。現在でも、身元保証人がいない人は入所しにくくなっています。民間の株式会社が収益を考えるのは当然ですが、ペイしなくても必要とされているサービスは多いのです。

入所者の人生を考えると、施設が倒産することは社会的に問題があります。しかし、例えば銀行などのように公共性が高いことを理由に、経営が失敗しているのに税金からの補助金が入るということになると、自由競争とはいえなくなるでしょう。もし倒産したとして、そのとき入居している人たちが困らないように受け皿を作りながら、経営を立て直すか、あるいは別の施設に転所できることを確約しなければなりません。

年金額による入所施設の差と課題

現段階で、国民年金のみの高齢者と厚生年金で高額の年金をもらっている人には差が出てきています。高額年金者には、毎日のように広告が入るような豪華な有料老人ホームが用意されているのです。

特別養護老人ホームは、要介護度が高い人、低所得者が入居するという住み分けができつつあるようです。しかし高級有料老人ホームは、どのような介護を受けているのか、介護度が3以上になっても住むことができるのかなど、内実がはっきりしていません。これは、第三者評価と情報公開が必要だと思います。

高級有料老人ホームが次々造られていますが、若い時からすでに収入が少ない世帯は多くなっているでしょう。この層がそのまま高齢化すれば、彼らの年収(年金額)も少なくなります。そうなれば、高級有料老人ホームは入居者が死亡退所した後、新規入所が減ってゴーストタウン状態になる可能性もあるのではないでしょうか。

訪問介護では介護保険で適用される範囲が決められており、融通がきかないことも多々あります。そのため、自由なサービスを組み込める民間のサービスに期待を持っています。

最初に述べたように、利用希望者が増えることは必ずしも事業者の収入につながりません。介護の大切さは知られていますが、同時に待遇の悪さも話題に挙がるでしょう。

「公務員相当の待遇で」

とよく言われますが、公共性と重要さを考えるとそのレベルは必要だと思っています。人間関係が特に大切な仕事ですので、長く務めている職員の存在はとてもありがたいこと。長くモチベーションを持って働くために、ベースアップは必要です。でも、その財源はどうすれば良いのか。また、民間参入で可能なのか。人件費は国が一定レベルを保証したうえで、サービスの内容で競争ができると良いな……などと、夢のようなことを考えてしまいます。

民間施設で頑張った職員の功績に合わせた給料体制を組んでいけるのか。この点については、今後も議論が必要でしょう。

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