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AIでケアプランを作れるのか?ケアマネジメントのこれからと課題

2017-06-12

将棋で高段位の名人を負かしたことなどでも注目されている「AI」。介護分野でも官民一体となり、AIを使ってケアプランをつくらせる試みがなされています。これは、いったい現場にとってどんな影響をもたらすのでしょうか。

AIの導入によって期待されていること

まず介護分野におけるAIの導入では、以下のようなことが期待されています。

AIは現段階で考えられる「要介護区分が改善したグッドケアプラン」を学習。要介護度認定調査の項目やアセスメント項目など、体調・症状に合った質の高いサービスをアウトプットします。介護サービスを受けた多くの人のうち、その状況など約400項目についてまとめるものであり、ケアマネジャーがこの項目すべてを入力するのは、業務上かなりの負担になるでしょう。また、要介護者についてある1つの状態を入力する場合、すべてのケアマネージャーが同じ記述をするとは限りません。

ケアプランを作る際には、要介護者の容体や生活環境などを打ち込むことになります。しかしこの作業は要介護認定の作業と被っているため、整理した方が良いでしょう。

介護度認定の際、要介護者の協力によって身体状況や生活状況など、多くの貴重な情報を得ています。介護度を出すだけではなく、これら情報をAIに入力してモデル案を作り、それをもとに現場のケアマネジャーがより細かなプランを作る方が合理的ではないでしょうか。

AIに作られたブランに「どんな支援が必要か」という情報がアウトプットされても、「どの事業所を使うか」を決めるのは現場のケアマネジャーです。そのためアウトプットされたプランに、ケアマネジャーの所属事業所の意向を変えられるほどの力はないと思います。

AIのために集められた情報の活かし方

ケアマネジャーの質にはばらつきがあります。このばらつきが資格試験、そして充実した研修体制がある中でも起きているのであれば、選抜方法や研修内容の改善が先決でしょう。

5年毎の研修を受けて現場に戻ったとき、研修内容が仕事に活かされたという人は多くないと思います。ケアプランを作る研修もありましたが、新任研修と同じことをやっていては意味がありません。同じグループで作成したプランを発表し合いますが、福祉系ではない人の視線が役に立つという良い点がありつつ、反面、5年間で新しくできた制度を使うとどのようなプランができるのか、「良いプラン」とはどのようなものなのかを知ることはできません。AIへ学習のために集めた最新情報を使い、研修内容を設定することは有意義だと思います。

AIのために膨大な量の情報を得たのに、現場の人間のために使わず、いきなり現場でコンピューターにプランを作らせるのでは本末転倒でしょう。得た情報は、まず現場で働いているケアマネジャーのために活かして欲しいものです。

AI導入の問題点

また、この試みにおける一番の問題点は、要介護5など重度の方々に対する「自立」を目的としたプランが、表向きだけのものになってしましがちだということです。

重度高齢者は「死」へと向かっています。そのため、人生の最後のステージとして苦しい思いをせず、安らかに亡くなっていくプランも必要でしょう。しかし今開発されているAIは、「自立」に向かうプランのみを良いプランとしています。医療の場でもAI導入は進められていますから、連携することで本人にとって最善な人生の終え方を考えることが必要です。

人手が足りない状況を打破するため、介護ロボットや外国人の受け入れなどが進めています。AI導入も、その一端を担う取り組みと言えるでしょう。しかし、例えば会話から相手の表情や言い方、言外に込められた思いを読み取る。あるいは、ちょっとした体調変化に気づき、医療に繋げていくといったことは、AIやロボットにできることではありません。介護する側もされる側も「人間」。その現場にとって重要なことが、少しずつ忘れられていくように感じます。

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