予防医学の教育と地域における支え合いこそが大切 - 佐々木淳氏インタビュー vol.3

2015-11-02

日本は高齢化社会になり、介護や医療の負担がどんどん増えている。このままでは、国家財政の破たんも目前に思えてくるほどだ。佐々木淳氏は、その近い将来の深刻な問題点を指摘する。介護保険や医療保険を必要以上に使うことをやめるには、どうしたらいいか。その答えは、「予防医学の教育」「地域ぐるみの活動」にキーワードがありそうだ。連載3回目は、日本の介護や医療を変革するヒントが満載。ぜひ、読者のみなさんも、いっしょに考えてください。

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高齢者をもっと社会に引っ張り出そう

介護保険制度を使う、使わないの前に、介護保険の位置づけをもう少し考えたほうがいいと思います。保険事業というのは、人が生きていくうえでの最後の受け皿だという視点を持ってほしいと思いますね。これは、医療保険についても同じです。

たとえ要介護の高齢者でも、まだまだ「できる」ことはあるのに、それを無視して「できないこと」のための、穴埋めにサービスを使う。高齢者は穴だらけだから、医療も介護もお金をすごく使ってしまいます。これでは、財政は破綻しますよね。かといって、自費でヘルパーを雇えばいいというのではありません。社会に参加するのに必要なレベルに達しているのであれば、高齢者でも社会に引っ張り出していくことが大切なのかなと、思いますね。

認知症の高齢者は急増している、だけど、実際に目にすることは非常に少ない。障害者にしても同じですよね。それは、介護施設や障害者施設の中にしかほとんどいないで、社会に出てこないからです。介護施設自体、コミュニティではあるのですが、はたして一般社会に確立されたコミュニティだろうか、というとそうではありません。

タバコ屋のおばあさんは、右手はちょっと不自由だけれど、ちゃんと店番をしている。保育園でアシストしてくれる女性を探しているから、じゃあ、あのおばあちゃんに頼もうか、など。地域の開かれた場面に、高齢者も障害者も、もっと出ていくべきだと思います。それには、できないところを埋めていくというより、「できるところを生かしていく」ということが大事だと思います。

一方で、地域住民の医療に対する考え方も変えないといけなくて。夜中に救急で病院に行ってもレントゲンを撮ってもらえるものではありません。日ごろから健康管理をちゃんとしておくことが、大前提ですよね。後期高齢者は、薬局で売薬を買うよりも、病院で薬をもらったほうが安いからそうしてしまいます。が、「税金を使っているからこそ、自分の財布が痛まなくてすんでいる。でも、実は高額の医療費を使っているのだ」という意識が必要です。

価値観を変えないと。それは医療関係者や介護事業所もそうだし、家族も本人も。介護保険や医療保険に頼らず、できるだけ自立支援するのだという覚悟が必要です。

医療の超先進国とは、高度急性期医療を受けられるということではなく、患者に上質な医療教育をし、自分で健康管理が適切にできて、最小限の医療ですませられるということではないか、と僕は思っています。どこそこに500床の病院があって、となりの市に300床の病院があって、というのは医療後進国がやることです。自分で必要な健康管理がきちんとできれば、人生が違ってくるわけですから。

そして、元気なうちに、人生のシミュレーションを、いくつかしておくといいですね。そうすれば、いざ終末期になっても、バタバタしなくてすみます。

Nudist Cafeで開催されているケトジェニックセミナー

予防医学を普及させるために、地域で健康教育を

しっかりおいしく食べながら、「太らない」「老けない」「病気になりにくい」低糖質な食生活を提案しています。健康管理で一番行いやすいのは「食」ですし、継続しやすい健康食を模索した結果、糖質制限食が一番合理的かなと思っています。これは、いわば「食育」ですね。

ガンは早期発見しかないけれど、動脈硬化性の疾患、脳梗塞や心臓疾患、インシュリン系に基づくアルツハイマー病などは、糖質を食生活の中でしっかりと管理すれば、リスクはかなり下げられます。実行しやすいので、普及させたいと思っています。

これは、次代を担う我々世代、若い世代向けの食生活ではありますが、実は、低たんぱく質になりやすい高齢者にも悪くないと思っています。

これまで、予防医学を論理的に説く医者が少なく、情報のサプライヤーがサプリメントの会社だったりしたことも大きいのかもしれません。恣意的な情報が流れてしまって。予防医学は、きちんとしたエビデンスをもって介入しないといけませんよね。

現在の医療は9割が急性期医療です。しかし、少子高齢化で人口構成が変わっているのだから、医療の比率も変わっていく必要があります。3割が急性期医療、3割が慢性期医療、4割が予防医学、と。ただ、慢性期や予防医学がきちんと成立していないと、急性期医療は減らせないので、まだまだ時間がかかります。各地域で医療教育をすすめ、浸透させるという方法で、地道に変革していくといいのでしょう。

我々も、多職種連携だけにとどまらず、地域、町とつながる努力をしていきたいですね。その町が5年後、10年後にどう高齢者が増えていくのか、あらかじめ知っておけば、もっといい町づくりができるのではないでしょうか。

切迫しているのは2025年問題ですね。団塊の世代が後期高齢者になると、介護現場も混乱するかもしれませんが、医療のほうも亡くなる人が増えて、病院のスペースが少なくなってきます。ますます在宅での看取りが重要になりますね。これは、悠翔会にとっても、ゆゆしき問題なのです。

現在、9つのエリアで2,300人もの患者さんを在宅医療で診ていて、年間500人の看取りをしています。これは、同業の中では、圧倒的に多い数字でしょう。しかし、僕ら在宅医療だけで、増え続ける高齢者の看取りの数に対応していくのは難しい。患者さんにしてみても、これまで主治医にしていた地域の開業医の方に最期までみてほしいという希望があるでしょう。

できれば、そのまま昼間は開業医の先生に訪問診療も含めて診てもらって、僕らが週末と夜間を担当する。そんな形をとるのが、有効ではないでしょうか。ここでも、地域との連携は欠かせませんね。高齢者は、地域で診療し、地域で看取る。その流れがスムーズに進むためにも、町とどうつながるか、今から考えて実行していきたいと思いますね。

青山にあるNUdist Cafeではオーガニックで低糖質の食材を使ったメニューが評判だ。

関連サイト:悠翔会

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