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家事援助、こだわりの強いご利用者にどう対応する?

2015-07-17

訪問介護では、色々なご家庭を担当することになります。その中で、例えば調理方法についてこだわりを持っているご利用者もいることでしょう。ここでは高齢のご利用者がこだわりやすい家事援助について、訪問介護の経験から考察していきます。

こわだりがトラブルを引き起こす

他人にはどうでも良いように思えても、本人からすればどうしても譲れないことがあります。特に、生活に密接にかかわる家事一般については、その傾向が強いようです。

物の置き場所や掃除の仕方、調理の手順、洗濯の仕方などは、女性を中心に強いこだわりを持つことでしょう。年齢を重ねるにしたがって、より一層強まっていくようです。

すると訪問介護の際、ヘルパーとの間で行き違いが生じたり、トラブルの原因になったりするという話をよく耳にします。

では、いったいどのようなことに「こだわり」を持つことがあるのでしょうか。その具体例を知り、頭の片隅に置いておくことで、ご利用者と上手にコミュニケーションを図れるようになるはずです。

根菜の皮、葉物野菜の茹で方とあく抜きへのこだわり

70代後半の女性のお宅で、肉じゃがを作っていたときのこと。当然のように人参の皮をむいていると、その女性が「人参の皮はむかないで!」と突然言いました。

ケアマネさんから調理に関して特に注意すべき点は聞いていなかったのですが、その方によれば「根菜には皮との間に一番栄養があるから、自分で料理していたときには皮をむいていなかった」とのこと。その後、調理の際には念入りに洗って、皮はむかないという申し合わせになりました。

その他、ホウレンソウのおひたしを作る際は通常なら茹でた後に水にさらしてアク抜きをしますが、担当者はほんの少し水洗いしただけで済ませていました。それを見ていたご利用者からクレームが入り、「アクの残ったおひたしを出す担当者には、もう来ないで欲しい」と言われてしまったのです。担当者は手を抜いたわけではなく、自分が家で行っている手順通りにしただけでした。

出がらしのお茶で玄関を

80代前半の男性のご利用者のこだわりは「玄関のお掃除」です。「玄関はその家の顔だから」と特に気を使っておられ、必ず出がらしのお茶の葉を撒いてからほうきで掃き、掃除をして欲しいと言っていました。

限られた時間で家事援助をしなければならず、当然、いくつかの家事を同時に進めていく必要があります。気がつくとお茶の葉はカラカラに乾いており、「手間が増えるだけなのに……」というヘルパーの声。しかしこの作業もまた、本人にとっては大切なこだわりなのです。

古新聞がどこからか…

1週間に1度訪問させて頂いていた男性のご利用者は、新聞へのこだわりが強く、自分が取っている新聞以外の新聞をどこからか家に持ち帰ってきます。その日の新聞だけでなく、何日分かまとめて持ち帰ることもあり、それが山積みになっていました。

訪問時に掃除しても、「全て読むまでは捨てない」と、ご家族も困っていました。

病気を疑って受診しても、認知の面では特に問題なし。医師は「何かの原因で強いこだわりがあるのだろう」と診断しました。

結局、本人が「もう処分してもいい」と言うまで、そのままの状態にとどめるしかありません。

「こだわり」と、どうつきあうか?

若いからこそ「こだわる」こともあれば、逆に高齢だからこそ「こだわる」こともあります。

「こだわり」は、その人のこれまで送ってきた人生に大きく関わっている場合があるようです。一見どうでもいいことに思えることでも、本人なりの意味があるのでしょう。

介護する人がそのこだわりだけに気を取られてご利用者の気持ちに思いを寄せなければ、両者の距離はどんどん離れてしまいます。「こだわり」に対する積もり積もった小さなストレスが、思いもかけないことをきっかけに爆発し、トラブルを引き起こす原因になることもあるでしょう。

「こだわり」をどうでもいいことと思わず、ご利用者にとっては大事なことなのだと考え、認めることから始めてみてはいかがでしょうか。

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