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利用者からの暴言や暴力をどう考える?

2015-10-23

高齢化社会を反映してか、高齢者に対する暴言や暴力といった虐待がたびたびメディアなどで取り上げられています。虐待する側は家族や親族、あるいは介護職員のケースなどがあり、最悪の場合には殺人事件にまで発展することさえあるようです。このような高齢者に対する暴力行為については、よく大々的に取り上げられます。しかし、その逆はどうでしょう? 利用者側からの暴言や暴力。よほどのことがなければ、誰にも相談できず悩んでいる介護者も多いことでしょう。

介護者が「怖い!」と思うのはタブー?

特に女性の介護職員には、利用者からの言動に「怖い!」と感じたことのある方もいるでしょう。私は訪問介護の仕事をしていた際、認知機能が低下傾向にある男性利用者に手首を掴まれました。いくら落ち着いてもらおうとしても上手くいかず、「どうしよう」と思ったことがあります。その時は利用者の奥様の名前を呼んだところ手を離してくれたのですが、それ以降は情緒の状態に、これまで以上の注意を払いながらお世話をしていた経験があります。

また、言葉のきつい女性利用者に暴言とも取れる言葉を投げかけられたこともあります。虫の居所が悪かったり、思い通りにならずイライラしていたり。そんな時、「お金を払っているのに、こんなこともしてくれないのか!」といった言葉がたびたび投げかけられました。それが、やがて「出て行け!」「役立たず!」などと怒鳴ったり、「泥棒!」と罵られたりすることもあったため、遂に事業所の上司へ相談。しかし、その問題が改善・解決するということは残念ながらありませんでした。

こうした話をすると、「あなたの介護の仕方や、言動に問題があるんじゃないの?」「その程度のことで悩んでいたら仕事にならない。」「認知症なのだから仕方がない。」などと思われる方もいるでしょう。もちろん私と同じ程度の経験は、多くの方々が経験しているのかもしれません。

要介護者の特性として、多少の認知症があるケースが多く見られます。そのことを考慮すると、利用者本人が意図していない暴言や暴力的行為は、いつ起こるかわからないもの。そしてそれが起きた際、周囲に誰もいないことも当然あるのです。

しかし利用者の家族が介護職員の虐待を疑うときのように、隠しカメラを設置するようなことは当然ながらできません。引っ掻かれたり強く掴まれたりしてアザができても、「わざとじゃないのだから……」と我慢するしかない状況。まさに、使命感だけで頑張っていた気がします。

介護する側の安全を守るには

以前、新聞の人生相談に、介護職従事者の家族からの相談が載っていました。簡単に書くと次のような内容です。

「訪問介護の仕事をしている家族に、傷や打撲の跡が絶えない。仕事を辞めるか担当を代えてもらえなければ、大変なことになりはしないかと心配だ。しかし本人は使命感を持って仕事をしているため、助言を受け入れようとしない。高齢で認知症だとはいえ、人に怪我を負わせれば傷害などにあたるのではないのか? 危害を加える恐れのある利用者への対策にはどのようなものがあるのか?」

これについての答えは

「認知症のタイプや程度にもよるが、まずは地域の包括支援センターへ相談すること。その結果として精神科等へ入院ということになるか、もしくは警察に届けて事件として扱い、刑事手続きを経た後措置入院ということになるだろう」

というものでした。

親身になってケアしている介護職員にとっては、不本意なことかもしれません。しかし最終的には、そうせざるを得ない場合も十分に考えられます。アルツハイマー型やレビー小体型といった認知症のタイプが、本人の行動に大きく影響することがあるのは広く知られていること。現在の医学では、多少進行を遅らせることはできても、治すことのできないのが認知症なのです。

今後、介護職員の安全を確保しなければならないケースはますます増えてくるのではないでしょうか。難しい問題ではありますが、やはり「何か打てる手はないものか……」と考えてしまいます。

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