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認知症による行方不明者を減らすための取り組み

2016-03-11

認知症の高齢者は約520万人。2014年時点で全国の警察へ届け出があった認知症による行方不明者は、1万人を超えると言います。今後も増えることが予想されるこの問題。対策として、どのような取り組みがなされているのでしょうか。

気になる認知症事故の判決

先日、多くの人が関心を寄せる裁判の判決が出されました。2007年12月、愛知県大府市の当時91歳の「要介護4」と認定されていた認知症男性が、徘徊中に電車にはねられて死亡。介護していた当時85歳の妻が、ほんの少しうたた寝していた間に外に出てしまい、大府市のJR共和駅構内で電車にはねられるという事故でした。この事故によって、鉄道会社は運転停止を余儀なくされ、代替輸送などの費用が発生。そのため、遺族に対し賠償を求めたのが発端です。

認知症が引き金となって徘徊し、行方不明になる高齢者はこれからさらに増えると思われます。在宅であろうと施設であろうと、介護者が気付かないうちに外に出てしまう。24時間常に目を離さず生活することは不可能です。また、徘徊の心配があるからと、ずっと閉じ込めておくわけにはいきません。しかし、家を出てすぐに見つかるケースばかりではないため、外出して行方不明になってしまうと、家族だけでなく地域の人や警察などの協力も必要になります。

これからますます増加が予想される認知症の行方不明者。少しでも減らすためにどのような取り組みがなされているか、また、介護者やその家族はどのような手段を講じているのでしょうか。

家族にできること

家族の中に徘徊の心配がある高齢者がいる場合、ほとんどが着衣や靴に名前や住所、連絡先を記載しています。また、玄関を含む出入り口にセンサーを設置して、そこを通ったら音が鳴るような仕組みをとり入れている家も多いようです。よく行く場所やそこまでの通り道を地図に記し、もしもの時の備えにしているという方も少なくありません。

さらに、近隣の住民への声がけや、最寄りの交番や警察署に徘徊の恐れがある高齢者がいる旨を知らせておくなども有効な手段といえるでしょう。

地方自治体による取組み

家族ができることにも限界はあります。そこで、地方自治体の中にも徘徊による行方不明を防ぐ取り組みを始めたところがあります。

例えば京都市は、「いなくなる前にできること!いなくなってもできること!」というハンドブックを制作。認知症の人が徘徊して行方不明になることへの備えと、その対応について分かりやすくまとめました。先に述べた家族でできることのほか、できるだけ速く警察の力を借りるよう助言。その連絡先まで記載されています。

また、「認知症による徘徊では?」と思われる人への声掛けの訓練を行っている自治体もあります。中学校の総合学習の時間を利用し、中学生も訓練に参加。警戒感や恐怖感を持たせないよう声を掛ける方法を学びます。これによって、認知症の高齢者への理解を深めると同時に、行方不明を防ぐ一助になってもらえればという取り組みです。

携帯電話の利用

京都府長岡京市では「迷い人情報メール」というネットワークを構築しています。登録者の携帯電話に、認知症で徘徊し行方不明になった人の情報が送られるというものです。例えば時間や場所、年齢、性別、身長、体重、服装、履物、持ち物など。

携帯メールは、多くの人々が利用するものです。そのため、これを使った情報提供はスピーディな捜索を可能にするでしょう。行方不明者を一刻も早く見つけるために役立つのではと期待されています。

民間企業による取組み

民間企業でも、認知症による行方不明者の居場所をいち早く探すための商品開発が進められています。ある高齢者向け住宅を運営する企業では、徘徊する人の多数が裸足ではなく靴を履いて外出することから、GPS(全地球測位システム)付きの靴を開発しました。また、GPS付きの靴に関しては、発信機が超小型で取り外して付け替えられる商品もあるようです。そのため、靴そのものが傷んでも、新たに機器を買わずに済むというものもあります。

また、不意の外出そのものを防ぐ商品も。徘徊をカメラで検知するだけでなく、例えば家族の声で呼び止めてくれるもの。あるいは、さらに外出を家族や介護者に知らせてくれる徘徊感知器も開発されています。 

短時間の行方不明でも、寒い時期や暑い時期ならば最悪の事態に繋がりかねない徘徊。ハイテク機器と人的ネットワークの活用で、行方不明者を減らすことが急務といえます。

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