高齢者のプライドに配慮した対応は千差万別

2016-03-25

介護の現場で、何かにつけて他の利用者の世話を焼きたがる高齢者に困った経験はないでしょうか。例えばトイレに連れて行こうとする、あるいは食べ物を口に入れてあげようとする……。下手をすると、ヒヤリハットになりかねない事例もあります。そんなとき、いったいどのように声をかければ相手のプライドを傷つけずに対応できるのでしょうか。

高齢者にとっての人との関わり

高齢者にとって周囲の人との関わりは、社会の一員として生きていくうえにおいて、また自分の居場所を明確にする意味でも大切です。近所の人と他愛ない会話を交わしたり、一緒にお茶を飲んだり。あるいは、作った料理のおすそ分けをするなど、それぞれが色々な場面で他者と関わって生きています。

それが自宅でなく、グループホームやデイサービス、施設などでも、気持ちのうえでは変わらないでしょう。ただしさまざまな機能が低下しつつあったり、その場の正しい状況判断ができなかったりする場合があることを除けば。

デイサービスで―ある女性利用者の言動

ここで、1つ事例を挙げてみましょう。利用者のA子さんはとても面倒見がよく、世話好きな方でした。みんなの座る場所が暗黙の了解で決まっているのですが、たまに別の場所に座ろうとする利用者さんがいると、A子さんは「そこはあなたが座るところじゃないわよ」と、その利用者さんをいつもの席に連れて行こうとします。手を引いて行こうとするため職員が代わろうとすると、「せっかく私がしてあげようと思ったのに!」と怒り出すこともありました。

転倒事故を防ぐため、職員は当然A子さんに他の利用者の手を引かないよう声がけをします。しかし「どうして、あんたにそんなことを言われなければならないの」と言われるので、職員同士でどのように声をかけたら受け入れてもらえるのか、意見を出し合う必要に迫られました。

A子さんの場合、特に20代の若い職員への反発が強く、40代・50代の職員の言葉には割と素直に従います。そのため若い職員は、ただ「若い」というだけで自分を下に見て、指示に従ってくれないA子さんを敬遠。見守りはするものの、声がけは年配の職員に頼むケースが増えてきたのです。

しかし、いつまでもそれが通用するわけがありません。「介護職員であれば、若かろうがそうでなかろうが、きちんと話して利用者に納得してもらうべき!」という声は当然あるでしょう。それでも、一筋縄ではいかない利用者がいるのは事実なのです。

高齢者のプライドに配慮した声がけ

そこで職場で研修会を開き、そのような高齢者への声がけを学ぶ機会を設けることに。これまでA子さんに行った声がけで、スムーズに受け入れてもらえた職員の記録を頼りに、具体的な言葉や態度を書き出していきました。それをご紹介すると、次のようなことが挙げられます。

「A子さん、○○さんに場所を教えてくれてありがとうございます。でも、狭い所を通るので私が連れて行きますね」

「いつも周りに気を配ってくれて助かります。あとは私がやるのでA子さんはゆっくりしていて下さい」

「A子さんは色々なことをちゃんと見ていてすごいですね。私も皆さんがいつもの席に座れるように気をつけますね」

やはり、最初に感謝や褒め言葉があると、比較的スムーズにいくようです。しかしヒヤリハットと紙一重の場面が想定されるため、A子さんからは目が離せないというのが共通の認識になりました。また、若い職員からの指摘には激高しやすい面があるので、特に話し方や声のトーンに気をつけてみようという結論になったのです。

中には、「A子さん本人を含め、周囲の利用者を危険にさらす恐れがあるのだから、そんな悠長な声がけでいいの?」という意見もありました。確かに緊急の場合には、そうはいかないと思います。施設によって対処の仕方はさまざまでしょう。しかし、出来る限りA子さんのプライドにも配慮した声がけをすることで、存在価値を認め、より良い介護に繋げようとする一歩だと感じました。

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