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探し物が多くなったら・片付けられなくなってきたら―認知症を疑ってみる

2016-04-08

「もしかして認知症かも……」そんな疑いを持つキッカケは、人によってさまざまでしょう。例えば、食べたにもかかわらず「ご飯を食べていない」と言ったり、大事な約束を忘れたり。あるいは頻繁に何かを探したり、家や部屋が散らかっても片付ける気配が見られなかったり場合も、認知症を疑ってみてください。早めに受診することで、悪化を遅らせることが可能になります。

生活の質に繋がる周囲の気づき

年を重ねるにつれ、身体機能はもちろん認知機能にも衰えがみられるようになるのは当然のこと。衰えの程度には個人差があるので、顕著に表出する人とそうでない人はいます。しかし、ちょっとしたきっかけを掴むかどうかで、その後が大きく変わることがあるのです。

残念なことですが、現代医学を持ってしても、アルツハイマー型やレビー小体型などを含む認知症を治すことはできません。また、認知症治療薬または抗認知症薬と呼ばれるアリセプト(ドネペジル)を服用しても、脳神経細胞の破壊を食い止めることはできず、進行の速度を遅らせるにとどまります。

大切なのは、本人もしくは周囲の人が「物をどこに置いたか忘れて、しょっちゅう探し物をしている」「何だか部屋が前よりも散らかっていて、だんだんひどくなっている」などの助教を感じとること。それがきっかけで病院へ行き、早く治療を始めることに繋がるからです。

認知機能を可能な限り良い状態に保つことができれば、本人の生活の質はもちろん、介護の負担も軽減されるでしょう。大げさかもしれませんが、小さな「気づき」にどのように反応するかが、人生のターニングポイントになるかもしれないのです。

本当に年のせい?

ホームヘルパーとして、70代後半の男性の生活支援に携わっていたときのこと。ふと気づくと、男性が何か探していました。「何かお探しですか?」と尋ねると、「テーブルの上にあるはずのメガネがない」とのこと。ついさっきまでメガネをかけて新聞を読んでいたことを伝えると、「ああ、そうだったか……。この頃、物の置き場所がパッと思い出せなくて困る。年だからなぁ」と言うのです。

何度かそのようなことがあったので気になり、事業所を通して遠方に住む親族とケアマネージャーに連絡。しかし、すぐに病院へ行くということはありませんでした。そうしているうちに、家の様子が変わってきたのです。

きちんと整理整頓する方だったのに、物が乱雑に置かれ何がどこにあるのかわからず、ますます探し物をすることが増えました。さらに、「何を探しているの?」と聞いても、答えが返って来なくなったのです。

最初に異変を感じてから、1年ほどして病院を受診。すると、「アルツハイマー型認知症」と診断され投薬治療が始まりました。しかし、進行を遅らせることはできても完治はさせられない以上、「もっと早く治療を開始できていれば、よりその方らしい生活を長く続けられたのでは……」という思いを拭いきれませんでした。

高齢者、特に自立して生活している一人暮らしの人ほど、何か変わったことがあっても表に出にくいという面があります。介護認定を受け、何らかの介護サービスを受けているのであれば、ヘルパーや看護師が定期的に訪問するので異変に気づくことがあるでしょう。しかしそうでない場合、最悪のケースに至ってしまう事例はいくつもニュースになっています。

最後に

現在はさまざまな条件はあるものの、認知症により「時間」「場所」「人物」のいずれかの認識ができなくなった際に保障する“認知症に備える保険”まで販売される時代です。また、マウスでの実験段階ながら、「リファンピシン」という抗生物質に認知症の発症を防ぐ効果が確認されたとの研究も発表されています。

新薬が開発されること、あるいは認知症保険がさらに加入しやすくなることには大いに期待が持てます。しかし、何よりも見守りや気づきといったマンパワーが大切なのは、介護にかかわる多くの人が実感していることなのではないでしょうか。

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