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介護保険法施行当時の輝きは何処へ

2015-06-22

「介護保険法は、創設時の思想を失いつつあるのではないか」ということを、ここのところ考え続けています。介護保険法施行前の措置制度下の介護は、「困窮者の社会的救済」であり「保護施策」でした。

「保護」の精神のもとでは、人間としての尊厳は担保されていなかった

「保護」の精神のもとでは、自己選択、自己決定、自己表現、自己実現、自己責任という現在の私たちが当たり前に行っている「生活プロセス」は存在せず、人間としての尊厳は担保されていなかったとも言えると思います。

しかし、世界に先駆けて急激に進行する少子高齢化によって、国の生産性は著しく低下し、反比例するように、医療・介護・年金等の社会保障支出は上昇をつづけています。現行制度のままでは、2040年度末の名目政府債務は約2,700兆円、GDP比は280%となり、実質的な財政破綻を迎えると予測されるほどです。国民負担増の施策を取ることで、一時的な回避は可能ですが、万が一バランスを誤れば国家が破たんし、国民の生活も崩壊する可能性すらある危険な綱渡りをしている状態だとも言えると思います。

地域包括ケアシステムの確立へ

このような時代背景の中、2015年度の改正介護保険法では、所得による一部利用者の負担増(応能負担化)、介護報酬の大幅削減、実質的総量規制(地域密着事業への移行)など、広い意味合いでは需要抑制と捉えられる方針が示され、公助・共助の拡充が困難な中、2025年にむけて自助・互助の拡充を前提にした地域包括ケアシステムの確立へ向けてさらに速度を増してきています。

しかし、地域包括ケアシステムが互助・自助を前提にし、且つ、事業性を軽視する観点から抜け出せないならば、介護サービスの質は低下し、量は不足することになると思いますし、ボランタリーな事業が増えれば、利用者の生活の継続性が担保できなくなる可能性が高まることも想定されます。

その時、高齢者の人間としての尊厳は如何にして担保すればいいのでしょうか。

介護報酬による収入が売上の90%近くを占め、その大部分を保険料と税金で賄っている以上、需要をコントロールせざるをえない事は明白ですし、需要を中心とする供給の拡充という本来あるべき姿には到達し得ません。

コンセプトは「混合介護」

事業モデルは流行ではありますが、変わらない事、変えてはならない事は、「質の高い介護を必要な時に必要なだけ必要な場所で利用でき、年をとっても障がいをえても、病におかされても、人としての尊厳が尊重され当たり前の生活を住み慣れた地域で営む事が出来る社会を実現する」という原点です。

正に不易流行です。

最適化され、優れた事業モデルを新たに構築する為には、現場を知っている経営者をより多く輩出する事、もしくは経営を知っている介護職員をより多く輩出する事が重要であると考えております。

夜間対応型デイサービスの夜間部分は、介護給付の対象としないが、国がガイドラインを定め、介護保険事業との関係性から実地指導の対象にするとQ&Aに明文化されている点、介護給付本体は、「公助・共助」に限定し、その他付随する支援・予防については、「互助・自助」へと移行させている点、それらをあわせて考えるとき、「金は出さないが、口は出す」が主流となる可能性は高く、夜間対応型デイサービスは、そうした時流に対応した未来形の1つであると言えなくもないと思います。

今回の介護報酬改定には、自助・互助・共助・公助のバランスを一変させるという意図があるのではないかと考えています。重度者・認知症高齢者への対応については高く評価し、不足する介護職員への処遇改善については上乗せする。反対に、実を伴わないサービスを提供する事業者は排除していく。こうした動きは、「高齢者が安心して住み慣れた地域で当たり前の生活を営むことができる社会」を実現するための第一歩だと受け取っています。

未来に向けた新たな事業モデルの構築を

国は、これらを実現する為に必要な形態として、地域包括ケアシステムを示し、在宅生活の限界点を高めるサービスの要として、小規模多機能型居宅介護等を軸に据えています。社会保障費の抑制、効率化の観点から考えを進めると、2025年には在宅介護サービスの多くが包括報酬化されることもあり得ると推測できます。

今回の法改正によって、小規模通所介護(定員18名以下/日)の地域密着型サービスに位置付けられ、同時に、設備・基準を満たさない事業所でも小規模多機能型居宅介護のサテライトとして指定を受け、運営することができるようになります(その場合には、介護報酬30%減)。

そのため、今ある事業モデルの生存のみをテーマとした議論ではなく、未来に向けた新たな事業モデルを構築していく可能性を追求していく事こそが本質であると考えています。先人たちが築いた豊かな社会資源を分解し再構築していく事、「協業」により地域の資源を最大限有効活用していくことで、「最低限のコストで地域包括ケアシステムを実現する。」可能性を感じています。

このことに通ずる一手法としての「夜間対応」であり、空き家改修型であったことを考えるに、夜間対応型デイサービスが誕生した本質がそこにあるのだと思いますし、そこに止まらず新たな付加価値を求め続けなくてはならないのだと思います。

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