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介護事業所におけるインターネットサイトへの投稿トラブルとその防止策

2015-12-02

介護職員のインターネットサイトへの投稿をめぐるトラブルが、後を絶たない。その背景には何があるのか? 安易に利用者情報を洩らしてしまったり、法人への不満や鬱憤を投稿サイトへぶつけてしまう職員に対して、そういった行為が法人やその利用者にとって、どういった不利益やプライバシーの侵害につながるのか徹底した教育が必要である。

投稿の背景にある「認識不足」と職場への「報復感情」

つい最近もFacebook上で「私の働いている施設はひどい施設で、ご利用者がこんな扱いを受けている」と、ご利用者の実名・写真付きで公開されているのを見たことがある。そもそも、職員は、なぜこうした投稿をしてしまうのだろうか? その要因は、大きく分けて次の二つがあると思われる。

投稿した本人は、仲間内に向けて軽い気持ちで投稿しているつもりでも、インターネットにおいては、実は全世界、不特定多数に対して公開されていることが多い。そのため、想定していない人の目に触れ、問題が起きてしまうのだ。また、こうした行為がプライバシーの侵害や個人情報の漏えいに当たることを理解していないなど、認識の甘さや規範意識の低さも一因にあげられる。

筆者の関与先でも、ネットの掲示板上で、内部の者しか知らないであろう施設の運営上の問題や、施設長(実名)は殺人者、○○は殺人施設だ、などの批判が行われたことがあった。

待遇や就業環境、人間関係などに不満が募った挙句、こうした書き込みをすることでその鬱憤を晴らすことに加え、会社に何らかのダメージを与えることを期待しているのだろう。

各事業所におけるインターネットリテラシーの教育は必須

冒頭の裁判で、ヘルパー側は当該ご利用者に「好意的な感情を持っており、プライバシー侵害の意図はなかった」と主張していたが、判決は「私生活上の公開されたくない事実を書いた」と判断した。そして「個人が容易に情報発信できる状況なのに、会社は研修などを開いて、十分な指導監督をしなかった」として、賠償額のうち130万円を事業者側に求めたという。

投稿したヘルパーの責任が問われるのは当然のことだが、同時に会社のインターネットリテラシーに対する指導、教育の姿勢も厳しく問われているということだ。もはや「職員が勝手にやった」では済まないのである。風評被害やイメージダウンによる実利的な損害が生じる可能性もあるため、会社は書面や研修等を通じて、次のようなことを教育する必要がある。

先に述べたように、本人はほんの軽い気持ちで、あまり深く考えずに写真や実名を載せてしまうこともある。そうした行為が、個人情報の漏えいやプライバシーの侵害等につながり、ひいては事業所の信頼を失墜させる要因ともなり得る、ということを周知徹底しておこう。

「してはいけないことをしたらどのような罰則があるのか」を就業規則や個人情報保護規程などに記載し、それ相応のペナルティが課されることを理解してもらおう。就業時間中の投稿は職務専念義務違反になるし、たとえ就業時間外に行ったことであっても、それが不適切な内容で、事業運営に与える影響が大きい場合には処分の対象になりうる。

「罰則がある」という意識を持たせることが、安易な投稿への抑止力に繋がるのだ。

公開範囲はどこまでの設定なっているか(友人だけなのか、不特定多数なのか)など、インターネット投稿サイトの仕組みやスキルを学ぶことで、思わぬトラブルを未然に防ぐことができる。

不平不満を吐き出しやすい職場環境をつくる経営側の努力と介護のプロとはいかなる者なのかといった働く側の自覚も重要

こうした研修を実施したとしても、会社に対する報復目的で悪質な投稿をする輩は少なからず存在する。職員とのコミュニケーションを密にし、不平不満を吐き出しやすい職場環境を作るなど、不適切投稿を予防する努力も必要だ。

以前、「介護事業所の人財育成-3」で書いた「モデル行動」などの人事評価制度に、「そうした行動はわが社の理念に沿ったものなのか」という項目を入れ、常に意識付けをしていくのもいいだろう。

曲がりなりにも、お金を頂いて介護の仕事をしている以上、職員はその道のプロである。

プロである以上、ご利用者の意思に反して不適切な行為をすることは許されないはずだ。たとえインターネットという仮想の空間であっても、それは同じなのである。

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