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意外と盲点!事業所のIT力が関係する人材定着率について

2016-03-23

IT化のメリットとして、誰もが頭に浮かぶ言葉は「生産性向上」「効率化」や「セキュリティ強化」と言ったキーワードだと思うが、正直読者の皆さんは多くのIT業者のセールス等を充分に聞かされ飽き飽きしている事だろう。そこで今回は、読者の皆さんの興味を持つテーマであり、そして、あまり知られていないIT化のメリットである「離職率抑制」について、2つの観点で論じてみようと思う。

介護職員の離職理由

早速だが、介護職員の主な離職理由に関して皆さんはご存じだろうか。

2013度の「介護労働実態調査」の結果から見てみると、俗に言われる低賃金や重労働と言われる理由からでは無く、上位3位は以下の通りの結果であった。

<介護職員の離職理由ベスト3>

1位:職場の人間関係に問題があったため(24.7%)

2位:法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(23.3%)

3位:他に良い仕事・職場があったため(18.6%)

良いチームワークは定着率を上げる

先の調査結果の1、2位の内容から、チームワーク(組織)形成に不具合が発生し、それが離職に繋がっている事が言えるのではないだろうか。

それを逆説的に言い換えると、チームワーク形成が適切に成されていれば離職の防止に繋がるのではないかという事だ。

では、チームワーク形成に必要な要素とは何だろう。

度々良いチームワークを発揮するのに大切なこととして、以下のポイントが挙げられる。

1.同じヴィジョン・目標の共有・浸透

2.個々の役割の認識

3.円滑なコミュニケーション

4.リーダーシップの発揮

これらのポイントを押さえる事でチームワークを強化する事が出来れば、結果的に職場の人間関係の改善、組織の理念・運営指針の浸透に繋がると言えよう。

皆さんの事業所においてこれらが適切に成されているのであれば、他に大きな問題が潜んでいるのかもしれない。

しかし、多くの事業所ではこれらが十分に根付いていないのではなかろうか。

チームワーク形成に密なコミュニケーションは重要

介護の現場では非常に多くの職種や関係者が連携し、職務を全うしている事は言うまでも無い。多くの人間が関わるからこそ、つぶさなコミュニケーションを行わなければ、これらのポイントを押さえ続ける事は困難だ。

そこで、ITの力を借りコミュニケーション強化を図る事を考えてみよう。

ITによるコミュニケーション活性化のすゝめ

以前「安価(無料)で便利なソフト&サービス「情報共有ツール編」」という題名でコラムを書かせて頂いたので、具体的なサービスの説明については割愛するが、ITツールを活用する事で、コミュニケーションを活性化させることは可能だ。

例えば、チャットワークやトークノート等のSNSツールは、LINE等と同様の使い勝手である為、ITが苦手な方でも比較的導入がし易いツールだ。

この様なツールを活用することで、同じ事業所のスタッフ間はもちろんの事、外部の関係者も招いた形でのコミュニケーションが物理的に離れていても可能になる。

もちろんリアルなコミュニケーションは重要であるが、顔を合わせての会話には時間的にも物理的にも限界がある。

オンライン上での会話も加える事で、より密で頻度の高いコミュニケーションを図る事が可能だ。

更に、ご利用者さんの様子といった、口頭の会話では正確に伝える事が難しい事でも、写真を投稿することで、言葉を超えたコミュニケーションも出来る。

リアルだけでなく、オンライン双方のコミュニケーションを強化し、前述のチームワークを発揮するポイントを意識したコミュニケーションを行い、是非チームワークの形成に繋げて頂きたい。

経営者・管理者が気付いていない若手介護職員のストレス

続いて、若手介護職員の定着率についてお話させて頂く。

私は職業柄多くの介護事業所へ顔を出すのだが、若手介護職員の定着率がなかなか上がらないという事業者の声を聞く事が少なくない。

そこには前述の職場人間関係等の多くの要因が潜んでいるが、読者の皆さんはITの観点で考えたことは無いと思う。

若手介護職員のITリテラシー

まず、若手介護職員のITに対する慣れの度合いを考えてみよう。

10代、20代の職員は、子供の頃から周りにIT機器が溢れる環境で育ち、また公立私立問わず小中学校でパソコンの授業に慣れ親しんだ世代である。

以下の調査結果からも、IT機器がいかに身近な世代であるという事が言えよう。

事務仕事のストレスについて

一方、介護事業における事務業務ついては説明するまでも無く重労働であり、それが起因するストレスも問題となっている。

介護現場と政策の調査のプロフェッショナルとして著名な、独立行政法人 労働政策研究・研修機構 堀田聰子さんの論文「介護保険事業所(施設系)における介護職員の ストレス軽減と雇用管理」内にも、多くのストレス因子と一つとして事務的仕事の負荷がストレス因子として挙げられている。

「大変な事務作業」と「ツールの不一致」

皆さんの事業所が当たりまえの様にIT化が進んでいて、多くのソフトウェアを活用し事務作業などが進められているのであれば申し上げる事は無いが、そうでない事業所も少なくない。そしてそれは、ITが身近な若手に取ってストレスとなっているのだ。

もしあなたの事業所が、旧態のツール(紙や鉛筆、ソフトであってもExcel、Word程度)のみで事業を運営されているのであれば、それは極端ではあるが「ノートと鉛筆で記録を取るのが当たり前の世代」の方が、「パソコンまたはスマートフォンでの入力作業が必須」となっているに等しい。

しかもそれは毎日の事で、更に大量の事務業務をこなさねばならない状況なのである。

若手職員にとっては相当なストレスになっていると言えよう。

管理者の皆さんは一度、若手職員の意見を聞き、IT化のレベルアップを検討しても良いのではないだろうか。

まとめ

今後我が国の社会保障費がますます厳しくなっていく事が予想される中では、IT化による生産性や効率性の向上は重要である事は言うまでもなく、そしてそれは多方面で議論が展開されている。

今回は、離職率抑制という全く違う観点でのIT化の効果を述べさせて頂いたが、他にもIT化がもたらす価値は数多く存在する。

今後も様々な角度から介護×ITについて発信させて頂くつもりであるが、次回は同じく、人材確保(採用面)に関わるテーマで述べさせて頂こうと考えている。

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