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介護現場と地域住民との架け橋になる

2016-04-07

ともすると閉じた場になりがちな、介護の専門職の現場。介護職同士、そして多職種とのつながり、さらに地域に出て、地域の一員として多くの人とつながることが求められてくる。そういったときに、介護職として求められるアプローチは何か? どういった点に配慮すればよいのだろうか?

サービスによって求められる方向性が違うことを知るのも仕事を深める大切な要素に……

介護の現場で働いていると、どうしても自分の組織の仲間だけ、もしかするともっと狭く同じ職場の人としか交流がなかったり、情報共有ができていないのが現状かもしれません。

「介護の仕事」といっても施設介護や在宅介護があり、細かく見ていくと、施設では特養や有料、グループホーム等々があります。訪問型や通所型などもあるだろうし、直接利用者さんケアをするのではなく、福祉用具などの提案や提供することなども介護の仕事です。

そうすると、ひとつの介護現場だけで介護を考えていくのは、どこか凝り固まってしまう感があります。

介護と一口に言っても、提供しているサービスによって、考え方の違いや優先順位の違いなどがあるでしょう。

「生活」を見ることが介護の仕事であり、「人」という多様性を対象としていく。そうであれば、サービスによる「違い」を知るということも、介護の仕事を深めていくためには必要なポイントだと考えます。

一方、デイサービスにおいては、施設に比べると利用者の方の要介護度は低く、ご自分でできることが多いので、どうやって残存機能をさらに発揮してもらえるのかといった、手を引く介護技術がより求められてきます。また、デイに行くという、外出の機会をどう楽しんでもらい、満足感を得るのか。自宅で生活し続ける力を維持し続けるのか、といった面もあるかと思います。

「違い」を介護職同士で共有することが仕事の魅力発見につながる

私自身、特養で介護の仕事を経験してから、デイサービスで勤務していると、介護職として求められるものの違いを多く感じています。

例えば特養では、要介護度の高い方が多いので、身体介護の知識・技術。さらには感染症やその他医学的知識。残存機能の維持向上のためのリハの知識や技術といった部分が、多く求められます。

そういったことを求められながら働いていると、学びが多くなり、積み重なって力になっていきます。

このように、サービスによって求められることの違いを、同じ介護職同士で共有していくことが、介護という仕事のもつ魅力の新たな発見につながるのではないでしょうか。ひいては介護サービスの深みを知ることにも通じるでしょう。

他職種の専門家たちとの交流の中で介護職としての立ち位置を見直す

そして、さらに介護職以外の、他の多くの専門職同士の関わりも大事です。介護職と医師や看護職などの医療職や理学療法士などのリハ職。さらには歯科衛生士などなど、あげればきりがないかもしれません。「生活」という面をしっかりと支援していくためには、かなり広い分野の専門職たちと、関わり合いを持っていくことが必要になってきます。

ふだんからこういった専門職同士での意見交換ができていると、大きな学びがそこには待っています。

私も同じ地域の医療法人の歯科衛生士の方と理学療法士の方と意見交換をしたりもしています。これって堅苦しいものではなく、一緒にご飯を食べに行ったり、飲みに行ったりというものだったりします。

そこで何を話し、何を聞くかです。相手が「どんな視点で物事を考えているのか」や「何を大事にしているのか」を知ることが大切です。

このとき、しっかり意識するのは「私は介護のプロだ」ということです。どっちの立場が上とか下とかじゃないんです。専門職同士でお互いの意見を尊重し合えるかどうかです。相手の意見をしっかり飲み込み、解釈する。そして自分の意見もしっかり伝える。これこそが重要なのです。

介護職は「生活」を見るプロです。利用者さんと関わる時間が多い職種ですから、生活の視点からどう考えるのか。どんな気づきがあるのか、を伝えることができるのです。

アプローチは違うがめざすゴールは同じであることを理解し合う。それが専門職同士のコミュニケーションを円滑にする秘訣に

他職種と関わっていくと、それぞれの視点の置き方や大事にしている部分。さらには優先順位の違いが理解できます。目的・目標は一緒であるが、山頂(ゴール)に向かって、山の登り方がそれぞれ違うという点もわかってくるのです。それが理解できると、利用者さんや患者さんに対して、お互いを尊重した上で、それぞれの役割は何か、ということを、より明確にできるようになります。

相手のことが理解できていないとよく起こるのが、専門職同士のぶつかり合いです。実は目標・目的は一緒なのに、目標達成までの道のりの違いが見えていないために、ぶつかってしまっていることがよくあるのではないでしょうか。

これって実は介護職同士でもあるのだと思います。利用者さんに対する想いや目標が実は一致しているのに、互いのコミュニケーション不足から、山の登り方(手段)が違うためにぶつかってしまったりしていませんか?

実にもったいない状況です。

介護現場職員や福祉・医療に携わる者同士がお互いを理解し合い、強みを引き出していける関係づくりがどんな現場や社会にも必要だと思います。

介護技術・知識は専門職だけのものではもったいないですね。

介護現場のノウハウを地域の人たちとどうやって共有するかがカギに……

これからは、介護現場のノウハウを地域住民の方と共有していくことが、今後さらに進む高齢化社会には求められてくるかと思います。

では、どうやって住民の方々と出会っていくのか?

まず最近各地域で広がっている認知症カフェへの参加が考えられます。そこに地域住民の困りごとを聞くという立場で参加し、運営のお手伝いをするということも一つの手段となります。

また、地域のお祭りや催しものに出店するのも、地域のつながりつながりや、介護の相談窓口としての機能を果たすことにつながります。

私が勤務していますデイサービスの地域でのお祭りに、駄菓子屋と介護の相談窓口としてお店を出させていただいています。

オープンな介護家族の集まりや地域住民と専門職が自由に交流できる場を作っているところもあるかと思います。そのような場所に参加し、専門職としての助言を行うことも、私たちのできることの一つです。

私の勤務する事業所がある、世田谷区には、「せたカフェ」といって介護家族と専門職、行政をつなぎ情報共有するネットワークができています。私も介護技術の講師として参加させていただきながら家族の方々の在宅介護での困りごとを改善できるような取り組みをさせていただきました。

専門職が地域住民と関わる際に忘れてはいけないこと

介護家族や地域住民の方と関わる際に専門職として忘れてはいけないことがあります。これは数年前に、家族介護者の方に学ばせていただいたことです。

「まずは受け入れる事。認めること」。

介護を職業としていない方々にとって、介護は突然訪れ、試行錯誤の中で実践するものです。そんな状況下で、より良いケアや行いやすいケアの方法を求めています。

そこで相談があったからといって、専門職の経験値から、より良いケアを提示するだけだと、その方のそれまでのケアのすべて、努力や実践を否定することにつながりかねません。まずは「大変でしたね」や「そういったやり方をされてるのですね」など、相手のこれまでの努力を受け入れましょう。

その上で、専門家として提案できるケアがあるのかを伝えることです。

家族介護は24時間365日続く、精神的負担がまったく異なることを認識する

家族介護と仕事の介護はまったくの別物だと専門職は認識すること。仕事ではできても家族介護では難しいことがあること。 さらに、仕事ととは違い、24時間・365日続いていくという精神的な負担がまったく違うことを忘れないように認識し続けるべきでしょう。

さあ、一歩外へ出て行きましょう。

介護福祉を通じて地域社会に何を還元できるのか。介護を知らない、未経験の方の目線に合わせることを意識する。

その際には、「介護の専門職」という立場は二の次です。まず同じ地域に住む仲間として地域がより良くなるために何ができるのかを、立場を超えて考えていけるネットワークが築けると地域が活性化していくと思います。さらに、介護現場と地域をつなぐことで、介護現場にもさまざまな人の交流が生まれ、福祉施設特有の閉塞感の改善にもつながると、期待できるでしょう。

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