特養の待機老人は本当に52万人か

2015-08-05

政府が作る「数字」には、好都合なものもあれば不都合なものもある。その代表格が「待機老人」であろう。年々増え続け、全国に約52万人いると言われている。

待機老人の定義

待機老人とは、厚生労働省の定義によると、特別養護老人ホーム(特養)に入所できない高齢者のこと。つまり、在宅介護やデイサービスを含めた介護保険サービスを受けられない老人のことではなく、「特養に入れない待機老人」のことである。

2013年度現在で約52万人。介護施設の中で「終の住処(ついのすみか)」となるのは特養だけなので、特養の待機老人が即ち、子どもや孫の世話にならない終の住処の待機老人というわけだ。

この52万人という数字は、前回調査の2009年度から4年間で約10万人増(24%増)となっている。

特養は現在、全国に約7,800箇所。待機老人は2009年度は42万人だった。その後、地方自治体が特養整備を進め、入所者数の枠は2009年時点から7万5,000人分も増えたが、それ以上に待機老人が増えたことになる。

入所の優先度が比較的高いとされる在宅で重度(要介護4〜5)の待機老人は、2009年度比28%増の8万6,000人。また、待機老人には、症状が軽いのに早めに申し込む人もいるとの指摘もある。

52万人は本当か?

ところで、この「待機老人52万人」という数字には、大きな違和感を覚える。

特養入所も含めて、費用の9割が補助される介護保険の適用には要介護認定が必要。2015年1月現在で介護認定者は601万人。居宅など介護予防サービス受給者は420万人、施設サービス受給者は特養52万人を含め90万人で、計510万人に保険が適用されている。

要介護認定者でも介護保険を受けられない者は90万人。更に、介護は家族ではなくプロ任せにすることで、子どもや孫など現役世代に迷惑をかけないことが介護保険の真の趣旨なので、特養以外の介護保険サービスの受給者450万人も待機老人となり、計約550万人が待機老人という計算になる。

私の試算である「550万人」と、厚労省の試算である「52万人」では、桁が違うほど大差がある。なぜ、このような大差がなぜ生じてしまうのか?

これは、先述のように、「待機老人」としての定義付けが異なることによる。厚労省は、特養への入所申込みをした高齢者のうち特養に入所できなかった高齢者の数を「待機老人」とするとのスタンスのようだ。私としては、特養への入所申込みをしていない高齢者であっても、家族の手を煩わせないための介護ニーズを最大限把握すべきとのスタンスで試算をしている。

「待機老人」の数を出すということは、介護政策の主たる対象者数を出しているのと同義だ。そう考えると、厚労省はあと52万人をどうするか、という姿勢になっているはずだ。私の試算では、あと550万人をどうするか、ということになる。ところが、これでは介護関連予算額も膨れ上がってしまう。厚労省のみならず、財務省も含めた政府全体としては、それは回避したいと考えるだろう。

私としても、徒らに介護関連予算額を増やすべきとは思っていない。むしろ、実際にはそうそう増やすことは叶わないと予想している。しかし、だからと言って、介護政策の対象とすべき高齢者の数を小さく見せるのは得策ではない。むしろ、その数は極力広めに把握しておく方が、結局は公平な介護政策の一助になるはずだ。

いずれにせよ、本稿で呈示した「550万人」は、あくまでも私の試算である。異論があるならば、お寄せいただきたい。

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