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受け入れ拒否の実情と介護士のもつべき心構え

2015-10-05

介護現場で働いていると、さまざまな疾患や障害のある方とお会いする機会があり、教科書には載っていないような「困難事例」を経験することになります。認知症ひとつとっても、一人ひとりの性格や心身の状態、疾患、家庭環境等により症状は千差万別。事業者によっては、受け入れ態勢に応じた独自の厳格な利用基準を設け、サービス受け入れを拒否する場合もあります。一方、介護士はというと、困難な方に直面したとき、思わず仕事を投げ出したくなり、不満を言い募る人もいます。本当にそれでよいのでしょうか? 事業者や介護士はどんな心構えで利用者を受け入れればよいのでしょうか?

利用基準の規定に反する事業者独自のルールがまかり通る現状

指定居宅介護支援事業者以外の指定サービス提供事業所についても定められていますが、事業者は正当な理由(利用人数や医療行為等)がなければ、サービス提供を拒否してはいけないことになっています。

しかしながら、実情は、事業者の受け入れ態勢に応じた各々の利用基準が存在しており、利用者の心身の状態や医療ニーズや家庭環境など、さまざまな角度から検証したうえで利用可能かどうかを判断しています。つまり、判断基準は、事業者ごとのルールに基づいていて、多くの場合、事業所の施設長(管理者)が、利用者の選択をしています。

そのため、一部の事業者では、利用者を選り好んでいて、手がかからずに報酬が多くもらえる、介護度の高い利用者を選ぶ傾向にあります。その一方で、困難な事例を積極的に引き受ける事業者もあり、ケアマネや家族から評価され、事業者の入居率(稼働率)につながっているケースもあります。

同じ介護度なら、比較的手のかかる利用者が敬遠されがちに

認知症の方で常に見守りが必要なAさんと、認知症等はない比較的元気なBさん。どちらも要介護1ですが、事業者としては、介護度が同じなら報酬も同じなので、手のかからないBさんを選択するほうが楽でしょう。

「手のかかる方」とは、具体的にどういう方かというと……

在宅か施設かによっても、困難な事例はさまざまありますが、リスクのある方は避けられがちです。

現場の介護士からすると、予期していなかった利用者に対して「負担が増える」「この事業所に合っていない」「早く退去しないかな」「(施設長に対し)なんでこの人を受けちゃったのだろう」「家族が介護を放り投げたのになんで自分たちがやらないといけないのか」と、嘆くことがあるかもしれません。

施設では、比較的手のかかる人が一人入るだけでも、介護士は、いままでやっていたことができなくなってしまいます。また、現場の混乱はどうしても避けられず、どうしても上記の会話のように、感情が外に出てしまうことがあります。

介護するときに忘れてはいけない「利用者やその家族の視点に立つ」こと

介護するうえで迷いが生ずることがありますが、そういったときにはどうすればいいのでしょうか。利用者の受け入れの問題に限らず、あらゆるシーンにおいて、事業者や介護士が持つべき視点とは、徹底して「利用者や家族の視点に立つ」ことだと思います。

事業者や介護士から歓迎されていないと気づいたときの、介護サービスを利用する方の心情がどういったものなのか、想像できますか? 利用者も一人の人間なので、歓迎されていないという雰囲気や心情を過敏に察知するものです。

家族自身が信頼して任せたつもりなのに、当の事業者が、自分の親を嫌な目で見ているという事実に直面したら、どんな気持ちになるでしょうか。想像してみてください。家族にとっては自宅での介護に困った挙句のやむを得ない決断であったわけで、事業者という存在は、自分の親を引き受けてくれる一筋の光なのです。

家族は、自らの置かれている経済状況・仕事・生活を考慮して、自分の親を預かってもらえる事業者はどこなのか、自分の親を看取ってくれる信頼のおける事業者はどこなのか、と探したことでしょう。仮に、サービス提供中に、サービスの受け入れの拒否があったとすれば、家族はまた、ふりだしに戻って、初めから事業者を探すことになります。

事業者や、我々介護士が介護を行う際に大切なことは、利用者の心情を理解するとともに、家族の心情をも理解しなければならないという点です。もっと利用者や家族の立場に立って、介護を考える介護士が増えてくれることを願っています。

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