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施設職員が考える、介護士の専門性

2017-09-01

お年寄りの介護において、介護職員の「専門性」とは何なのでしょうか。ケアマネジャーはケアのマネジメント、ケアプランの作成のための情報収集。看護師は医療的処置や、ご利用者の既往と現状をはかり、医師との連携を行う。他にも、理学療法士、栄養士、生活相談員など、介護に携わる職種は現在多数存在していますが、こと「介護士」に関して考えてみると、「介護をする人」とはわかるものの、専門性が何であるかと問われると、どうでしょうか? そこで今回は、介護士の役割と専門性について、考えてみたいと思います。

ご利用者をみるという専門性、伝えるという役割

まず初めに「介護士」とは造語です。さまざまな言論の場で「介護士」というワードがよく用いられますが、通常は、介護福祉士の略称として「介護士」と用いていることが多いようです。しかしここでは、介護福祉士の略ではなく、「お年寄りの介護職に従事している者」という位置づけで、「介護士」という言葉を敢えて使用させていただきたいと思います。

介護士は、ケアプランの作成はしません。医療行為もできませんし、本格的なリハビリテーションもわかりません。しかし、これらのどの行為をとっても「ケア」であることに相違はありません。ですから、介護職員=ケアワーカーとした場合、どの行為にも多少なりとも関わりますし、介護士は必要とされています。

施設の介護現場でよくあることの一つに、便秘に対しての下剤対応があります。

便秘3日目、4日目、5日目……と日を追うごとに看護師と相談し、頓服の下剤調整や、時には浣腸を検討します。

毎日さまざまなご利用者の便秘対応を考えているうちに、多種ある下剤の種類や効能は全て頭に入っています。その気になれば浣腸や摘便もできるかもしれません。しかし、実際に下剤を決定するのは看護師であり、浣腸や摘便を行うのも看護師です。

早くご利用者に便秘解消してもらいたいのに、看護師に適便してもらうのを、介護士はただただ待つしかありません。

同じ「ケア」なのに、介護士にはできないことがたくさんある……。いいえ違うのです、役割が違うだけで、「できないこと」という解釈ではありません。「ご利用者の情報を伝える」というところに主眼を置いてみると、このことももっとすっきりします。

ご利用者の便秘の傾向を看護師に伝える。その方に最も適した便秘対応を看護師に提案する。

「ご利用者の日常」に最も長い時間接している、介護士にしか解り得ない情報を、必要とされる他職種へ伝達する。これは、介護士にしかできないことです。

介護士の周りには他に多くの職種が存在します。ケアマネジャー、看護師、相談員……。これら他職種の方に、それぞれの専門性を発揮してもらうための情報伝達をする役割。介護士の役割は「日常のケアをしっかりみること」に加え「他職種への情報伝達」が求められるのではないでしょうか。

専門性と役割を発揮する対象は、ご利用者とそのご家族へ

さて、次に介護士の職域について考察してみたいと思います。

「ご利用者のケアをみること」が介護士の専門性、「みた情報を伝達すること」を介護士の役割としたとき、伝える先はどこまで及ぶべきなのか。ケアマネジャー、医師、看護師、理学療法士……etc.

伝える先の視点を変えて、今度はご利用者のご家族(身元引受人など)に伝達するということについて考えてみましょう。

施設入居者の場合、ご家族の面会時に日ごろの様子を伝達する。在宅ヘルパーの場合も同様に、日ごろの様子やサービスを提供したときの様子を伝達する。

ご家族の立場になって考えると、日ごろお世話になっている介護職員に対しては、毎日の様子や込み入った質問など、遠慮してしまうケースが多いと考えられます。状態の変化や病院受診の相談ばかりではなく、何気ない日常の様子やちょっとしたエピソードなどを率先してご家族へ伝えることについて、不要と思う方はいないでしょう。

さらにもう一歩。介護士は、ご家族が「知りたいこと」「大切に思っていること」をキャッチし、職員間で共有しておくことが重要です。

ご利用者のニーズと同様に、ご家族にもそれぞれのニーズがあり、重んじているポイントもそれぞれ違うでしょう。ご利用者のニーズをアセスメントする機会は多くありますが、ご家族の重んじているポイントをみて共有することはまだまだ少ない気がします。これも、介護士の役割の一つとして考えてよいのではないでしょうか。

介護士が、介護士のためにできること

ご利用者の日ごろのケアをみて、他職種へ情報伝達。そしてご家族へも的確に情報を伝達し、時にはご家族の重んじるポイントもみさせていただく……そのうえで、さらに幅を広げると、世間へ介護実情を発信していくことも、我々介護士の役割として挙げられます。

テレビやインターネットのニュース等で語られる介護の話題はことごとく「よくない切り口」が多いです。マイナスイメージを先行させるメディアの手法を感じますが、それが「世間がみた介護のイメージ」でもあり、事実なであるのかもしれません。

筆者も参加した、介護の魅力と可能性を示唆する「介護男子スタディーズプロジェクト」。

あるトークイベントの中で、仲間の介護男子がこう言いました。

「介護という仕事は、外からではなかなか魅力がわからない。実際に介護をしている我々が、中から介護の魅力を発信する必要がある」と。

介護士は、ご利用者をみることに専門性を持ちます。それを伝える役割があります。みる力と伝える力に長けているわけですから、世間一般の方々へ「介護の実情」を伝えることもまた、介護士の義務のような気がします。

新たな介護人材の獲得と、今現在を頑張っている介護士を大切にすること。そして、メディアによる介護についての報道姿勢を変えるためには、介護士の必要性と可能性を説いていくことが、今後いっそう求められることとなるでしょう。

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