「廃用症候群」について

2016-03-21

過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じた状態を指す「廃用症候群」。例えば病気によって安静にしていなければならない時期は、誰にでもあるでしょう。外科的手術の後や脳卒中・心筋梗塞の急性期は、まさにそれに当たります。しかし急性期を過ぎたならばすぐに、極端に言えば急性期であったとしても、動かして良い・動ける部分から少しずつでも動かした方が良いのです。

廃用症候群とは?

動かさなければ動かなくなってしまう。それが人間の体というものです。表からは見えていない部分も、いつしか衰えていってしまいます。 筋肉量が減って力が出なくなったり、動かさないことによって硬縮が始まり可動域が狭くなったり。そして活動量が減ると食欲まで減退して内臓機能が衰えてしまう。これが「廃用症候群」です。ですから今の医学では、リハビリテーションが大きな位置を占めるようになってきています。

何らかの理由で安静を余儀なくされていても、その後、医師からの指示や助言によって患者はリハビリを開始します。「寝たきりにはなりたくない」という思いがある、あるいは「開始が遅れればかえって辛くなる」ということが分かっていたとしても、特に高齢者になればなかなかそうはいかないでしょう。

ただしこれは、一概に高齢者と括ってはいけないのかもしれません。たとえ歳をとっていても、一生懸命リハビリをする人もいれば、若いのに努力しない人もいるもの。個人の性格も左右しますが、それでもやはり高齢になると、「もういいよ、今さら辛い思いはしたくない」といった方が多いように感じます。

廃用症候群の起こった事例

このリハビリが上手くいかない要因に、認知症が挙げられます。ここで、実際に私が現在関わっている事例をご紹介しましょう。

84歳・女性。認知症ながら、同居する夫と近所に住む娘の力を借りて自宅で暮らしていました。しかし半年ほど前、様子がおかしいということで受診したところ、「軽い脳梗塞」と診断されたのです。本来ならば一昼夜ずっと点滴を流し、梗塞した部位の回復を試みます。しかし認知症によって点滴の方が危険だということで、内服薬のみで帰宅しました。認知症にはさまざまなパターンがあり、この女性の場合は「攻撃性が強く暴れてしまう」という方なのです。

そこから、「寝たきり」の生活が始まりました。

右半側に麻痺があるものの、発症直後は左半分がほぼ正常に機能していました。そのため、車椅子への移乗時などは、左足で突っ張るという協力動作が望める状態。内臓も正常ですので、常食を普段通りに食べていました。1日3回訪問し、おむつ交換や食事の介助等を行います。そのたびに女性は、「何をしにきたの? そんなことは自分でできるから大丈夫よ」とおっしゃるのでした。もちろん次の瞬間には「あれ、おかしいな。どうしてできないのだろう?」ということになるのですが、半年間ずっと毎日こんな感じです。つまり、自分の体が動かないこと、歩けないことを未だに理解していません。そして、これからもすることはないでしょう。

半年が過ぎようという現在、体の硬縮が開始。自ら体を動かすことがないので、おむつ交換を行うときには大変に痛がるようになってしまいました。それでも私たちは、「これは動かないことによる痛みなのだ」と理解しています。そのため少しずつ、そしてだんだんと大胆に動かしていくのです。そうすれば、2〜3分で痛みはなくなります。

痛がるからと言って、何もしないことが良いわけではありません。例えば以前に関わった男性は家族介護が長く、主介護者は高齢の妻。しかし「痛がってかわいそうだから」とそっとしておいた結果、本当に棒のようになってしまいました。当時、私は「もう少し、早く関わっていたら」と思ったものです。

この女性は1日3回の訪問介護、週に一度のデイサービスを利用して半年が過ぎました。体重は7kg減り、もうマヒのない左側にも力を入れることができない状態です。そして、近頃は食事量も激減してしまい、1日に食べる量が以前の一食分にも充たなくなってしまっています。つまり、内臓機能も低下してしまったのです。

この女性はもともと、内臓に疾患はありません。しかし脳梗塞を患ったことによって物が食べられなくなり、食べないことにより、さらに内臓機能が衰える負のスパイラルが起きてしまっているのです。これこそ、まさに「廃用症候群」です。

廃用症候群を理解した適切な対応を

事例としてご紹介した女性な場合は、もちろん認知症も大きく関係しています。しかし、先に挙げた家族計画介護による要因や、他にもぎっくり腰が原因で行けなくなり、飲まず食わずのまま数日過ごした結果「廃用症候群」になりかけた等のケースもありました。自分なりの考えや思いだけで判断し、目の前のことしか見えなくなってしまう。すると近い将来、自分がどんな風になるのかが判断できなくなっているのです。

これは、高齢者にだけ起きることではありません。しかし、体全体の機能が低下したことによって、主訴である部分の回復が遅くなってしまえば、それだけリハビリが遅れてしまいます。その点においては、やはり「廃用症候群」は高齢者に多くなると言って良いでしょう。それでもプロとして、関わった利用者にはそうならない為の的確なアドバイスを提供し、対応していかなければと思います。

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