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「生活保護制度」について考える

2016-05-23

憲法25条に基づき、「健康で文化的な最低限度の生活」を具体的に保障する仕組みとして「生活保護制度」があります。第1条によれば、「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」とのこと。生活保護法は1950年(昭和25年)に成立しており、「すべての国民に対し」というところが1946年(昭和21年)に成立した「旧生活保護法」と大きく違うところです。今回は、この生活保護制度について考えてみましょう。

日本における生活保護の現状

旧生活保護法には、「能力があるにもかかわらず勤労の意思のない者、勤労を怠る者その他生計の維持に勤めない者や素行不良な者を除く」という欠格条項が存在しました。この欠格条項が除かれた理由のひとつは、「貧困は個人のみの責任、個人のみの問題ではなく社会全体の問題であり責任でもある」という捉え方にあります。

生活保護被保護人数は2011年1ヶ月平均206万人以上(人口比16.2%)、世帯数は約150万世帯。2014年3月時の概数では217万人を越え、世帯数も過去最多を更新しています。1996年以降の世界的不況を背景に生活に困窮する人数が増えているのは、日本に限ったことではありません。世界的な現象であることは誰もが周知のことでしょう。

介護の仕事に携わっていると、必ず生活保護世帯と関わることになります。私が今担当している訪問介護世帯数は約40件、そのうち3世帯が生活保護を受給しています。さらに3件のうち1件は息子と二人暮らし、2件は独居。3名とも女性です。独居の2名の方にも子供はいますが、扶養はしていません。訪問介護では金銭の管理は行いませんので、どれくらいの金額を受給しているのかは不明であり、その管理を行うのは子供たち。制度の細かな内容は市町村によって異なりますが、「医療と介護」について現物支給であるのは全国統一項目です。

医療はいつ、どのくらいの頻度でお医者さんにかかり、どれだけ多くの薬を処方されても、本人は窓口で料金を支払う必要がありません。介護でも、デイサービスやショートステイ利用時の食費を除いて、自己負担はありません。つまり、費用を心配することなく医療も介護も受けられるということ。また、限度額はありますが、家賃を支払うこともありません。その他に、「生活扶助」として現金が支給されます。細かいことまで挙げれば、ごみ出しに使用する指定ごみ袋まで支給されるのです。

こういったお宅に訪問していて感じるのは、「生活に工夫がないな」ということです。 誰だって病気にはなりたくないでしょう。しかし、もし病気になってしまったら、「辛い」という他に「治療費が……」という懸念が頭を過ります。そして長引いてしまえば、仕事にも不安が伴うはずです。しかしこの方々は、その心配がありません。ごみ袋だって、ぎゅうぎゅう詰めにしなくても良いのです。

本来あるべき生活保護制度とは

息子さんと同居している方のお宅で、こんな事がありました。息子さんの勤務する会社から、「残業を頼んだら保護費が貰えなくなるから、と断られた」と連絡があったのです。

本来ならば働いても生活するために不足があり、それを補うためのものが保護費です。しかし、それが貰えなくなるから働かないというのでは本末転倒です。この際にはケアマネジャーから双方に説明し、きちんと働くということになりました。しかし、保護するというところにばかり目がいってしまい、自立を助長するという部分が見落とされがちになっているのではないかと考えてしまいます。

近年の生活保護受給者の特徴として、若年層の増加と受給期間の長期化があるといいます。ストレス過多の現代社会において、就労困難な人が増えているのでしょう。しかし1度このような保護を受けてしまい「自分で何とかしなければ!」という気力が薄れてしまっているとは考えられないでしょうか?

不慮の事故や予期せぬ難病にかかってしまい働くことができなくなってしまったというような場合には、社会全体として支える仕組みは必要なことであり安心なことです。しかし、税金や年金を未納状態にしたまま、生活が困窮したからといって全ての人に対し“同様に”受給資格があるというのは、果たして平等といえるのか。「努力しなかったのだから、放っておけばいい」などとは思いません。しかし、これだけ人数が増えてしまったのでは、行政の目も行き届かなくなってしまいます。

旧生活保護法にあった「欠格条項」が正しかったとは考えないまでも、まずは「自助」、次に「共助」、そして「公助」ではないでしょうか。社会全体の仕組みとして、「生活保護は楽でいいよね」では困りものでしょう。もう1度、工夫と見直しが必要になってきた制度なのだと感じます。

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