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質の高い介護とは?

2016-06-27

介護という言葉から、まずどんな事を思い浮かべるでしょう。恐らく「下の世話」が思い浮かぶ方が多いかもしれません。私達の預かっている訪問介護の現場でも、介護保険を利用してヘルパーの訪問を受けている方々は、口々に「下の世話にはなりたくない」と言います。自分が高齢になり、トイレに行けなくなったらと想像すれば、それはやはり介護の代名詞的な意味があるでしょう。しかしそれでも、オムツ交換は介護の中のほんの一部でしかありません。では、介護とはいったい何なのでしょうか。

介護とは何なのか

辞書を引いてみると、介護については「障害者の生活支援、あるいは高齢者や病人などを介抱して世話をすること」といった内容が書かれていることでしょう。私は介護について、「暮らすを支えること」だと捉えています。

医療と介護の違い。医療は「病んでいる人」を看るのに対し、介護は「人が病んでいる」のでお手伝いをする。まずは「人」から見ていくというのが、介護の入り口と考えているのです。例を挙げれば、「糖尿病の人」ではなく「この人は糖尿病」と見ていくということ。1つ事例をご紹介しましょう。

生活面から健康状態を改善した事例

糖尿病で薬を飲んでいるのに、いっこうに改善されないという女性がいました。お医者さんはお薬を増やしていきますが、血糖値は下がりません。85才、独居です。1ヶ月に1度来訪する息子さんは、その女性を叱ります。「ちゃんと薬を飲んでいるのか!? 好きな物ばかり食べているから駄目なんだ!」と。その頃、週に1度訪問していたヘルパーは気付きました。

「薬はほとんど飲めてない。それなのに、飲んでいても下がらないと診断され、無駄に薬の量が増えている。さらに調理もできなくなり、ほぼ毎日お餅を焼いて食べている」

このことを、ケアマネジャーを通して家族に伝えてもらいました。なぜなら本人が、息子さんに叱られるとヘルパーに打ち明けたからです。

そこから話し合いが行われ、計画の立て直し。当初は独居である母親の安否を気遣い、ヘルパーの訪問を依頼した息子さん。しかし、このような事態に気付くヘルパーなら、何か改善策を見出だしてくれるのではないかと感じたようでした。以後は毎日、朝夕2回ずつヘルパーが訪問。一緒に調理を行い、服薬の確認をすることになりました。さらに半年後、主治医からこう聞かれたそうです。

「驚くほど検査の結果が善くなっているが、どんなことをしたのですか?」

息子さんは、ヘルパーに食事の支度を依頼し、服薬の確認も行ってもらっていると伝えます。するとお医者さんから、バランスの良い食事で血糖値が下がっているため、薬の量を減らすと言われたそうです。この時、息子さんからはとても感謝されました。そして言わずもがな、息子さんのヘルパーへの態度も変わったのです。

独り暮らしで若干の認知症がある。そして、一人で食べる食事には魅力がなく、バランスが偏っているので糖尿病は改善されない。薬を飲んでも血糖値は下がらない状況で、それを生活面から支えて改善した事例でした。

質の高い介護とは

病んでいる部分だけを見る。あるいは、薬でなんとかしようとするだけでなく、「人」の部分である生活から入っていう。それこそが介護なのではないでしょうか。

介護保険を学び始めた頃、この制度は「ケアマネジャーがまずアセスメントを行い、ニーズを明らかにして計画を立て、その計画に添って現場は動くのだ」と言われました。もちろん、それは間違いではありません。しかし、現場には「そこ、ちょっと違いますよ!」と言える発言権はないのか。そんなことはないはずなのに、なぜかケアマネジャーは偉くて、ヘルパーは下っ端なのだという空気がありました。つまり、ケアマネジャーに意見などすれば、仕事を回してもらえなくなるといった雰囲気があったのです。

介護保険は契約により成立するサービスだから、計画に含まれない行為を行ってはいけない。「頼まれれば何でもやりますよ」では、責任の所在がなくなってしまうので困る。決められたことだけしていれば良いというのでは、プロとして情けない話ではないでしょうか。計画通り決められたことだけを、時間内にきっちり作業が行えること。果たして、それが「質の高い介護」なのか。私は疑問を感じます。

人としての温かさとプロの視点を持ち合わせて、少しでも気持ちよく生活できる手助けをする。あるいは、その方法を考え、気付きを得ることが「質の高い介護」なのではないでしょうか。「こうだ」と決めつけられたような介護保険制度ではありつつも、解釈の仕方には多少の幅があっても良いはず。人が人として関わっていくのですから、法令遵守に幅を持たせても良いと思います。

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