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ヘルパーはお手伝いさんではない

2016-07-11

ヘルパーとは介護保険法により定められた職業の名称。文献によれば、「高齢者や身体に障害を抱える人に対し日常生活上で困難な事の援助やケアを行う」とあります。それに対して「家事のプロ」と記されているのが家政婦です。つまり、ヘルパーは資格を持った介護者であり、介護保険で定められた範囲の家事援助のみが義務づけられている者。あくまで介護がメインで、家事のプロではないのです。しかしこの辺りについて、誤った認識を持たれるケースが少なくありません。

ヘルパーとお手伝いさんの違い

ヘルパーは何よりも、利用者の健康状態や生活の変化などを見逃さないようにするのが仕事です。ですから日常的な家事は行いますが、大掃除や草花の水やり、ペットの世話などは行ってはいけないという規定があります。利用料金も介護保険で定められており、内容や利用時間により全国ほぼ一律。そして、その利用料金の9割は税金で賄われ、本人負担は1割です。家政婦やお手伝いさんの場合は依頼主が全額支払いますので、やってほしいことは何でも自由に頼めるでしょう。

細かな区分はあるものの、ヘルパー料金は大まかに計算すると、週に1回・約1時間ヘルパーの訪問により家事援助を受けた場合、1ヶ月の本人負担は約1,200円です。曜日契約ですので、例えば月曜日が1ヶ月に5回あれば5回の訪問の料金となります。私はこの利用料金について、時に利用者の意識を変えてしまうのではないかと感じることがあります。

高齢で関節痛等があり、掃除を自ら行う事が困難な方の場合。ヘルパーが訪問して掃除機をかけ、雑巾かけを行い、さらにトイレや風呂掃除までして1ヶ月・1,200円。つまり、1回の料金が300円程度なのです。訪問先でよくこんな会話を聞きます。

「今、大掃除屋さんが来ているから」

などと、友人や家族に伝える姿。『暮らす』を支える職業ですが、家事援助はあくまで介護の中における必要なことの1つとして行っているもの。やはりこういった言葉を聞くと、複雑な気持ちになってしまいます。

仲良くなり過ぎることの弊害

それでは、ヘルパーをお手伝いさん代わりに利用するという認識を改善するためには、利用者の意識改革だけで良いのか。これは実際のところ、そうとは言えない一面が現場では見えてきます。

ヘルパーの資格を取得して高齢者の自宅に訪問すると、とても感謝され、ありがたがられるでしょう。やがて仲良くなり、高齢者の方々はヘルパーの訪問を心待ちにしてくれるようになります。これはヘルパーとしても非常に嬉しいことですし、仕事もしやすくなることでしょう。

しかしここで、“仲良くなり過ぎてしまう”ヘルパーが出ることがあります。これは、いったいどういったことなのか。例えば、契約時間を無視して勝手に延長し、ダラダラといつまでも訪問し続ける。そして、足りない物があれば自分の家から持ってきてあげてしまう。あるいは、自宅で調理したものをお裾分けしたり、あげくには休日にまで訪問して家事を手伝ってしまったり。このようなことは、プロとして行ってはいけません。近所の親切な友人ならとてもありがたい行為でしょうが、ヘルパーはそうではありません。あくまでも契約により、計画に則って訪問介護を行っているのです。

自分のシフト的に「この後は時間に余裕があるから」と残れば、一人暮らしの方は淋しさを紛らわせて嬉しいでしょう。しかし別のヘルパーが時間通りに帰ってしまえば、そのヘルパーには「素っ気ない人だ」といった感情をもってしまうかもしれません。これでは、チームワークが乱れてしまいます。

あるいは、自宅で調理したものがもし痛んでいた、もしくは痛んでから食べたてしまったら。「休日なのだから良いだろう」と訪問し、もしその際にケガさせてしまったら、いったいどのように対応し誰が責任をとるのでしょうか。

「もし」とばかり言っていたのでは、何もできなくなってしまうということはあります。ですから、プロとしてその仕事の範囲内で行うことについては、その全てをヘルパー本人と事業所が責任をもって行うことでしょう。および腰にならずに行えば良いのです。

しかし、公私混同はいけません。事業所に籍のある間は、高齢者の自宅へ遊びになんて行ってはいけないのです。こういった職業意識の低いヘルパーを、これまで少なからず見てきました、もちろん、一緒に仕事をしたこともあります。その時に思ったのが、「ヘルパーの社会的地位を上げるためには、現場の意識も変えていかなければならないのだ」ということでした。

ヘルパーには「温かい心」と「冷静な頭脳」が求められます。自宅で暮らす高齢者や障害を抱えた方々の生活の質をよくするお手伝いは、本人が「やって欲しい」ということを何でもやってあげるのではなく、本当に必要なことを見極め、本人の持っている能力や気力を最大限に引き出してあげることなのです。

安く使える、お手伝いさん代わりのヘルパー。そうではなく、介護のプロとしてのヘルパーを目指し、現場からも変わっていく努力をしなければと思います。

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