認知症における周辺症状(BPSD)について

2016-08-08

認知症という病気は、随分と社会に周知されてきていると感じます。例えばアルツハイマーと聞いて、何の事か解らないという人は殆どいないでしょう。しかしそれでも、そういう病名の方にどのように接すれば良いのかとなると、まだまだ理解されていないのが現状と感じます。ここでは認知症について、その周辺症状(BPSD)を詳しく見ていきましょう。

認知症と物忘れ

認知症の種類といえば、脳全体が萎縮してしまう「アルツハイマー型」と、脳梗塞等が原因で発症する「脳血管性」の二大病が大半を占めます。さらに現在では、これに並んで「レビー小体型」が多いとされている状況です。細かく挙げれば、それぞれの病名により出現する認知症状に違いはあります。しかし、まずは一般的に知られている記憶傷害が現れると、生活をするうえで周りの方々は対応に苦慮することになるでしょう。そしてこれが、家族が認知症に気づく際のキッカケにもなるのです。

ただの物忘れと認知症の違い。これを説明するときによく使う例は、「食べた物を忘れてしまったのは物忘れで、食べた事を忘れていたら認知症」というものです。つまり体験の一部を忘れるのは「物忘れ」、体験した全てを忘れたら「認知症」となります。

在宅で生活できている認知症軽度の人は、食べることや排泄すること等、身の回りのことは自分でできる方がほとんどでしょう。それでも、認知症特有の行動に家族はしばしば振り回されたり、行き詰まり感を持ったり、時には腹立たしい思いをするものです。もちろん、その対応の仕方によって症状を悪化させている場合もあるのですが、そのことを家族は知りません。このことについて、少し例を挙げてみます。

周辺症状(BPSD)とその原因

いつも何かを探している。これは、認知症軽度の方によくあることです。お財布や鍵等の毎日使う物から、ハサミやボールペンといったちょっとした物。あるいは、預金通帳や印鑑のように大切な物まで。時間があれば、いつも何かを探しています。

これは、自分が目立った物忘れをするようになり、保管場所や置いた所がすぐに分からなくなってしまうという自覚のある方が、「なくしては大変だ」と常に不安な気持ちを持つために取る行動です。そんなとき家族は、つい次のように声を掛けてしまいがちでしょう。

「また探している。そんな物は、今必要じゃないのだから!」

実はこれが、症状を悪化させてしまうのです。こうした声がけで、物忘れという中心的な症状が「責められた、否定された」という感情的症状として残ってしまいます。この感情が、「周辺症状(BPSD)。相手は「何を叱られたのか」は忘れてしまっても、「叱られた」という感覚だけが残ってしまいます。

どう接すれば良いのか

もっとも良い接し方と考えられるのは、「一緒に探す」という行為です。しかし実際に探している物が、本当にその人の手元にあるとは限りません。例えば通帳等は、すでに家族が保管している場合も多々あるでしょう。つまり、その事自体を忘れてしまっているのです。

それでも一緒に探すふりをして、何気なく気をそらすのが得策でしょう。しかし毎度、そんなに時間をかけられるものでもありません。そんな時には、気持ちを他に向けさせると良いと思います。

「回覧板を隣の家に届けてほしい。帰ってから一緒に探そう」

といった具合に役割を与える。そうすると、しばらくは探し物から意識が離れます。恐らく、「洗濯物を取り込んだから、さて、また探し物の続きをしよう!」とはならないはず。認知症に限らず、人は誰でも一人でいる際に辺りが暗いと、なんとなく不安な気持ちになるもの。そして、自分の意見や思いを否定されれば、良い気持ちはしないものです。

繰り返しになりますが、認知症の人は理解できなくなっている上に否定されてしまうので、何を否定されたかは忘れてしまい、「否定された」という感情だけが残ってしまいます。そして常にその感情が残り、否定した人のことを「あの人は嫌な人だ」という思いが湧いてきてしまうのです。

認知症は脳の萎縮や脳血管の梗塞等により、理解力や記憶力の低下が起こる病気です。しかしその中核症状に加え、出現する不安や情緒不安定という周辺症状(BPSD)へのアプローチの仕方が、中核症状の悪化にも改善にも関わってきます。

しかし家族には、これまでの生活歴やそれぞれの生活もあり、上手く対応することは難しいと思います。せめて私たちプロはその症状を受容し、冷静に対応すること。そして、振り回されて苦悩している家族にも、分かりやすく対応のコツを伝えていけたらと考えます。

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