特養の入所基準について

2016-10-18

介護保険制度では原則、「要介護3」以上でなければ特別養護老人ホームに入所することができません。しかし一口に「要介護3」といっても、身体の状態や認知機能の程度により、その症状はさまざまです。「在宅で暮らすにしても、ほぼ24時間誰かの助けがなければならない」状態であり、それはとても大変なため、施設入所ということになります。そして入所時に住民票は施設の住所へ移転。ですから、郵便物は施設に配達されるようになります。もちろん選挙の投票用紙も。そうした背景から、最近では「居住する場所なのだから『入所』という言葉がおかしいのではないのか」という意見も出ているようです。

いきなり要介護3の認定は難しい

「要介護3」でなければ入所できない特別養護老人ホーム。とはいえ、介護申請していきなり「要介護3」の認定結果が出るはあまりいません。一人暮らしであっても家族と一緒に暮らしている場合でも、何かしらの手助けが必要になり、初めて認定を受けた際には、大抵の場合「要支援」もしくは「要介護1」程度の結果になるでしょう。そこから少しずつできないことが増え、何かにつけ手助けが必要になって「これでは周りの人の生活が脅かされてしまうし、本人の安全も確保できない」ということになれば「要介護3」の認定となります。もしそれを待てない場合には、変更申請を行うことが必要です。

入所後に状況が改善される

中には認定結果が待てずにショートステイを利用し、預かってもらうというケースも珍しくありません。このように在宅での生活が困難になって入所された方々も、介護保険制度では1年に一度、もしくは2年に一度の更新認定調査があります。そして調査の際に、在宅での生活時にはできていなかったことが施設で24時間・365日、プロの介護を受けるようになりできるようになるケースが少なくありません。

例えば居住空間の違いによってトイレでの排泄を行えなかった人が、部屋・廊下・食堂全てに手すりがあることで、少しの見守りがあればトイレに行ける。車椅子の生活ながら全てがバリアフリーの設計であり、トイレもそのように設計してあるので、オムツを汚さずに生活できるようになった。管理栄養士によるバランスのよい食事内容で、身体機能に合わせた食事形態での提供があり、栄養状態が改善されてADLが向上したなど。

また施設では、色々と自立に向けた取り組みが行われており、個人に合ったリハビリプログラムが組まれていたることもあります。そんな多くの試みと取り組みにより、入所当時よりも生活の質、身体機能全体が向上する人が少なからずいるのです。ですから「要介護3」の認定で入所した人が、次の更新認定時には「要介護2」の結果を受ける場合が起こりえます。もちろんこれは「手助けがあれば」の状態なのですが、ここで問題が起きてしまうのです。

介護度の更新で退去することになる

介護保険では「要介護3」が 入所要件ですので、それ以下の結果が出た場合には原則として退所しなければならないという規定があります。果たして、そんなことが可能なのでしょうか?

前述の通り、入所時には住民票も移してあります。何より家族では面倒を見ることが限界だからこそ、入所に至っているのです。そのため、「介護度が軽くなったので退所してください」と言われたところで、家に帰れないでしょう。

これについては、行政への働きかけにより退所回避の方法はあります。しかしこのような流れを見ていると、建て前により事務手続きを増やしているだけなのでは……と感じてしまうのは私だけでしょうか。先日、このような入所・退所にまつわる話を特養の職員とした際のこと。相手の方は次のように話していました。

「本人の生活の質の向上の為に自分達は色々な事に取り組んでいるが、そのことが却って本人や家族を翻弄する結果になっているようで複雑な気持ちだ」

在宅が良いのか施設が良いのかは、見る角度や考え方、それぞれの環境により違うと思います。すべての人にとって100%ベストな法整備は不可能なのかもしれません。しかしそれでも、少し現実に添った介護保険制度であるようにと願うばかりです。

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