在宅介護・施設介護のメリットとデメリット

2016-11-04

年をとって、自分自身で身の回りの事ができなくなってしまった場合。住み慣れた家で訪問介護等を受けながら生活を続けるのが良いのか、それとも、施設に入所して手厚い介護を受けた方が良いのか。親の面倒を見る立場の人だけでなく、「いずれ自分が老いたとき、どちらを選択したら良いのか」ということは、多くの方が考えてしまうところでしょう。

自宅介護と施設入所、いったい何が最適なのか

施設入所と言えば、少し前までは近所や親戚の方々から「老人ホームに入れられちゃった」というような表現で、批判的な印象がほとんどだったように思います。しかし介護保険制度が施行されて17年目。これだけ世の中が少子高齢化という状況を社会問題にしている現在では、「周りの人たちに迷惑をかけて生活しているくらいなら、施設に預かってもらったら良いのに」などという声も聞かれるようになってきました。

在宅で生活することと施設へ入所すること。どちらが本人や家族にとって良いのかは、本人の状態と環境によって違ってくるでしょう。そしてこれは、介護度だけで判断できない部分も大いにあると思うのです。ここで、事例を挙げながら比較してみましょう。

Aさん、81才(女性)。身体には何の病気もなく、歩行もしっかりしていて失禁もありません。認知症の症状が出始め、同じ話を何度も繰り返したり、親戚や息子のところへ1日に何十回も電話をしたりということで介護認定は「要介護1」です。

世間話をする程度であれば、全く認知症であるということには気づきません。それでも振り込め詐欺に引っ掛かりそうになったり、預貯金の管理ができなくなって現金のしまい場所が分からなくなったり。次第に問題が多くなってきたため、グループホームへ入所することになりました。いろんな部分で、まだ在宅で暮らせる能力は残っている状態。しかし、一人暮らしは無理という結論です。

性格も穏やかなため、誰かが同居していれば家での生活も可能だったことでしょう。都内に住む息子も、これだけ能力が残っている母親を施設に入所させるということに、随分と葛藤があったようです。しかし現在、もともとの明るい性格と行動力で、ホームでの買い物や調理に進んで参加しながら生活している様子を見て、安心しているようです。

Bさん、84才(女性)。数年前から認知症の症状が表れ始め、一緒に住む夫への暴言、ときには暴力も。しかし同市内に住む娘が手助けすることで、在宅での生活を可能にしていました。

しかし1年ほど前に軽い脳梗塞を起こし、認知症のためにリハビリが全くできないことから寝たきりの生活に。軽い脳梗塞で右半身麻痺だったので、発症後2ヶ月ほどは左手左足を使った食事や移動移乗時の協力動作も可能でした。しかし、次第にその左半身の力も落ちてきてしまい、1年経った現在では全く身体に力を入れることができません。食事量も減って内臓機能も低下してしまったため、自力排便もままならず定期的に摘便をしてもらっています。

脳梗塞発症前は「要支援1」でしたが、現在は「要介護5」です。寝たきりで食事も全介助。1日3回の訪問介護と週1回のデイサービスを利用。夫への暴言や暴力は今でも続いています。そればかりではなく、ヘルパーやデイサービス職員への暴言・暴力もある状況です。ヘルパーは車椅子への移乗時に数回噛まれてしまったことがあるため、家族の同意のもと、移乗介助時は10秒ほどマスクを着用してもらっています。

市内に住む娘もさすがに介護の疲れを訴えてきますが、それでも在宅にこだわるのは夫の存在があるためです。夫は「要支援1」の認定ですが、動脈瘤があり、生活するうえで留意しなければならないことがあります。さらに依存度の高い性格のため、一人暮らしができないのです。1日3回妻の所へヘルパーが訪問中することにより、直接は夫の面倒を見なくても他者との交流や会話が増え、夫の情緒不安定の緩和になっています。また妻にしても、同じ寝たきりの生活であるならば、家族の声が聞こえる自宅の方がいくらかでも心地よいのではないかと感じています。

本人の望み、家族の考えに寄り添う

身の回りのことを自分でできなくなってしまったとき、どこで暮らすのが良いのか。あるいは何が幸せなのかは、本人の状態だけでなく、考え方や状況が大きく左右すると思います。自宅なら家族と一緒にいられる安心・安楽があり、施設ならプロによる安全が確保され、一人暮しよりは淋しくないかもしれません。しかし、施設では行動範囲にかなりの制限がかかってきます。

もちろん金銭的な問題も絡んでくるでしょう。本人が何を望んでいるのか、家族がどう考えているのかをよく見て、寄り添う気持ちで助言・提案ができるように心掛けたいものです。

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