施設介護がアットホームにならないのはなぜか

2016-12-23

施設介護には、生活の場としてアットホームさを求められることが少なくありません。しかし実際のところ、これはなかなか難しいことと言えるでしょう。ここでは施設を主に老人介護を目的とするものとして指し、その要因や現状について考えていきます。

行政からの要望と現実のギャップ

老人介護を目的とした施設でも、特養とよばれる特別養護老人ホームやケアハウスのような軽費老人ホーム、比較的入所する人の少ない小規模多機能型と、数えあげればきりがないほど多種多様。そして入所されてる方々の介護度や障がいのかたちも、同様にさまざまです。身体的な部分での介助を必要とする方が多い施設、身体的にあまり不具合はないものの認知機能の低下が著しい方が中心の施設、また、受け入れ人数の多い施設ではその両方が多く入所してていることも珍しくはありません。

いずれの施設であっても、ほとんどは自宅で生活できない、あるいは24時間誰かの見守りがなければ危険といった状態の方々が生活しています。ですから介護保険制度の定める基準により、365日・24時間職員が交代で勤務しているのです。しかし入所されている方にとっては生活の場であり、国では「できる限り家庭的な雰囲気を」と求めてきます。つまり、「楽しく笑顔で場の提供を目指してください」と言うわけです。しかし、それが非常に難しいだということは、施設介護の経験はなく同僚の働く姿を見ている私ですら理解できます。

施設介護に求められることは、第一に「安全」でしょう。これはどのような形態の施設であっても間違いないと思います。体が不自由で、お風呂や食事、トイレにお手伝いが必要な人、車椅子で生活している人、自分が誰なのか分からなくなるほど認知症の進んでしまった人など。そんな方々がひとつ屋根の下で暮らすのですから、それをお手伝いしながら安全を確保することはとても大変なはずです。それは、精神的にも肉体的にも言えることでしょう。

それでも仕事として取り組んでいることですから、よほど「嫌だ」と思えば辞めることも可能です。ですからある程度、割りきった考え方はできるでしょう。少しくらい辛いと思っても、「どうしても嫌いだ」とまではいかない方々が介護職として働いているのだと感じます。しかしそれでも、行政が求めるような『アットホームな雰囲気』まで辿り着けないのは、なぜなのでしょうか。

なぜアットホームな環境が実現できないのか

少し乱暴な言い方をさせていただけば、それは「責任のなすり合い」が施設内にあるからではないでしょうか。これほどリスクを持つ方々が大勢で暮らしているのですから、事故の起きる危険性は数え切れません。もし1対1の付きっきりで介護できたとしても、事故の危険はなくならないでしょう。そんな状態の方々をお世話しているだけでも、精神がすり減る作業です。まして、もしケガでもさせてしまうことがあれば、始末書ものとなります。誰が、何処で、いつ、どのような状況でケガをさせたのか。リスクマネジメントはきちんとされていたのか。あるいは今後の対応はどうするのかと責められるのです。

もちろん事故は、故意に起こしたわけではありません。細心の注意を払っていても起きてしまうことはあるのです。「だから仕方がない」とは言いませんが、直接介護に当たっていた人だけを責めるのはおかしいと思います。もちろん、その上司に責任を取れと言うのも違うでしょう。

このような事故への対応策として、施設にはリスクマネジメントの取り組みと細かな書類記入が義務づけられています。そして介護職員には、現場以外にこれら書類の記入という仕事が。何か1つでも事故が起きれば、その日の担当は誰だったのか、その前後の様子はどうだったのか、あるいは入所者の体調や気分の変化などについてきちんと記入されていたのか等がチェックされます。そして、その事故は誰の責任で起きたのかを決定されるのです。そうなれば、職員はそれぞれ自分の持ち場以外のことに関わりたくないと思うでしょう。本来ならば協同作業、連携で成り立つ仕事が、ギスギスした空間になってしまいます。

それでも入所者の人数に対して職員配置に余裕があれば、目が行き届くのかもしれません。しかし、施設に入ってくるお金には限りがあります。人件費にばかり費用をかけることはできません。ただでさえ給与が安いと言われている介護職。配置規準以上に職員の人数を増やせば、ひとり当たりの金額がさらに少なくなってしまうでしょう。

介護保険制度が施行されて17年目。来年の4月からは、また大幅な制度改革があります。「年をとっても認知症になっても安心して暮らせる」をスローガンにしていますが、その為には、その生活を支える場で働く方々にもより目を向けてほしいと思います。高齢者が安心して暮らせるよう、それを支える方々もまた安心して働ける環境が求められるのではないでしょうか。義務として働くのではなく、本当の笑顔で接することができる職場環境。これが整えば、自然とアットホームな施設になってゆくのではないかと思うのです。

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