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介護職員のスキルアップについて

2017-03-07

「スキルアップ」という意味を辞書で調べると、「腕前をあげること、技術力をあげること」などと書かれています。介護現場においても、スキルアップはよく話題になることの1つ。それではいったい、介護職員にとってのスキルアップとはどのようなことなのでしょうか。

介護職にとってのスキルアップ

介護職員にとってのスキルアップ。単純に考えるなら、おそらく「上手にオムツがあてられるようになる」「入浴介助の時の衣服の着脱がテキパキできるようになる」など作業的な事が頭に浮かぶことでしょう。確かにきちんとオムツがあてられず、排泄物が漏れてしまっていたのでは本人も気持ちが悪いはず。もちろん後始末も大変です。

また、入浴介助の際に衣服の着脱で手間取っていては、介助される人が寒かったり疲れてしまったり、認知症のある人なら入浴そのものを嫌ってしまうキッカケになりかねません。ですから効率的にテキパキ作業できるようになるということは、スキルアップとして評価されるでしょう。また、介護職員にとって大切なことの1つと言って良いと思います。

しかし、それだけでよいのでしょうか?

私は介護職員にとって本当の意味でのスキルアップとは、別のところにあるように思います。つまり、作業ではなく“気付き”の部分だと思うのです。

気付きというスキルアップ

オムツ交換している際、排泄物を見て体調の変化に気付く。あるいは体に触れて動かしてみて、「いつもと違う」と感じる。入浴介助や衣服着脱の作業をしながら、関節の可動域の異状に気付いたり、お風呂場までの移動時に歩行状態がいつもと違うと感じたり。このように、1つ1つの場面で「いつもと違うぞ」と感じるキッカケは無数にあります。

それでも新人の頃は、目の前の作業に精一杯で、本人の変化に気付く余裕などないもの。3ヶ月、あるいは半年と経験を積んで毎日その人に寄り添うことでこそ、「いつもはこうだった」「今日はどこかおかしい」と気付けるようになるものです。この時点で、すでに新人の頃に比べれば、スキルアップできていると評価できるでしょう。

しかし、それだけで満足してはいけません。「何か違うぞ」と感じ取っていただけでは解決になりませんから、気付いたことを他の人(先輩や上司など)に報告し、体調不良等の手当てに結びつけることが大切です。

とはいえ多くの場合、ここで問題が起きてしまいます。こうした被介護者の変化は、施設介護のようにルーティーンで生活支援を行っていると、「面倒な出来事」と捉えられてしまいます。例えば一定の時間内にオムツ交換を完了しなければいけない、今日は何人を入浴させなければいけないと決まっているため、スムーズに作業が進まないと時間内に予定を完了できなくなってしまいます。そして1つの作業で遅れが出れば、次の作業がまた予定時間内に終わらなくなってしまうのです。

もちろん全てがそうだとは言えませんが、何か気付いたことがあっても、誰かに伝えられない雰囲気が現場にはあるのではないでしょうか。もしそのことを自分の中だけで呑み込んでしまい、後になって何か病気になっていた等と分かっても、気付かなかったことにすれば良いのですから。忙しく黙々と作業を行い、余計なことを言って先輩に「うるさい、面倒な奴だ」と思われて疎まれるくらいなら、「気付かなかった」で済ませた方が楽なのです。

そしてそんなことを繰り返していると、いつしか本当に気付かなくなってしまうもの。テキパキ作業を行って時間内にきっちり決められたことが終了すれば、「腕を上げたね」と言ってもらえるようになるのですから。

介護職にとって本当のスキルアップとは

少々極端な部分もありますが、あながち「そんなことはない」とは反論できない内容ではないかと思います。どのような職種でも、あるいはどんな仕事場でも理想と現実はあるもの。そして価値観は人によってさまざまですから、介護職でも「スキルアップとは、効率よく作業ができるようになること」なのだという意見も間違ってはいないと思います。

それでも、在宅・施設に限らず人の命を預かって「暮らす」を支える仕事が、単に作業するだけのものになってはいけないのではないでしょうか。

作業を通して被介護者の人となりを理解し、その人の望む暮らしを実現できるよう寄り添う。そして、理解力の低下してしまった人の安心と安全が守られるよう、色々な変化に気付いて重篤な状態にならないような手立てをしてあげること。そうなれることこそが必要なのだと思うのです。

介護職員にとってのスキルアップ。それは、ただ必要な作業を時間内に遂行できるようになることに留まらず、日々の作業の中から被介護者の変化に気付けるようになること。そして、その気付きを正しい形で解決していけるようになることではないでしょうか。そのためには、もちろん良い職場環境が不可欠です。しかしその職場環境を作れるようになることも、また1つのスキルアップなのではないでしょうか。

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