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実習生に伝えたいこと

2017-07-21

介護に限らずどんな職種・職業であっても、多くの場合は実習や研修というものがあります。中には雇用されてからある一定期間を「実習期間」と位置づけて、仕事を覚えてもらう期間に当てることもあるでしょう。教職や私たち介護職も、資格を取得するにあたって実習が必要です。今回はそんな実習を受ける側である実習生に向けて、経験をもとに何点かお伝えしていきます。

研修を受ける方は年齢層もさまざま

かつては私自身もさまざまな実習機関にお世話になり、そして現在は、実習生を受け入れる立場となっています。実習に来る方々はもちろんとても緊張していますが、実は受け入れ側もかなり緊張するもの。中でも介護の実習生は、その目指す資格によって年齢の幅が大きいのが特徴です。

一般的なヘルパー、現在ならば初任者研修における実習生は年齢の高い方が多く、介護福祉士等の国家資格取得のための実習生は一般的な大学生の年齢の方がほとんどとなっています。年齢によって感じ方や価値観が随分と違いますので、伝える側はそれを考慮して実習を進めていかなくてはいけません。

それぞれの学校や研修機関によって若干の違いはありますが、私のような訪問介護への同行実習は全実習期間のごくわずか。1日か、多くて2日間くらいというのが普通です。その他は施設実習を数日間、また長い場合には1ヶ月ほど施設実習を設けている場合もあります。

それでは1〜2日で、いったい実習生に訪問介護の何を教えればよいのでしょうか? また、何が教えられるというのでしょうか。このことについて、実習生を受け入れる立場として考えてみます。

限られた期間で何ができるのか

1〜2日で介護技術を教えることは不可能です。特に訪問介護は自宅を訪問し、個々の要求している事柄に沿って、今一番望ましいと判断する援助を行わなければなりません。もちろん、施設介護も個別援助であり、一人ひとりに向き合った介助であることには変わりないでしょう。しかし施設内でその施設のスケジュールに合わせた援助となるため、訪問介護とは大きな違いがあります。

施設での介護に調理や掃除はありません。しかし訪問介護は、寝たきりの方のオムツ交換から認知症の方の望む調理や掃除まで、幅広い介護技術や介護行動が求められます。それら多様な事柄の全てを、1〜2日で覚えることはできないのです。

ではなぜ、それでも実習が位置づけられているのでしょうか。恐らく、次のような部分を垣間見てきてほしいということなのだと、私は考えました。

「訪問介護ってどんなものなのか」

「他人の家におじゃまして介護するとはどういうことなのか」など

介護への心構えや介護技術といったことの大半は、教室の中で多くの時間をかけて習得しています。その頭で覚えたことを踏まえて、実際の現場を見てきてください。

「教科書を読んで想像していたものと、何が違うのか?」

こんな意味合いでの実習なのではないでしょうか。それならば受け入れる側、私たち現場の者は何を伝えるのか。もちろん、単なる職場の厳しさや仕事の大変さではないでしょう。介護職は離職率が高い職業ですが、やり甲斐があって楽しいと感じられる部分もたくさんあります。また、社会からとても必要とされる職業なのです。そうしたことを、実習を通じて伝えなければいけないのだと思います。

私が実習生に伝えること

私は事前のオリエンテーションで、実習生へ次のように伝えています。

「多分、これから先に1度もお会いすることのない方のお宅に訪問します。ですから、この利用者さんに対してヘルパーがどのような援助を行っているのかを見たり、覚えたりしてもあまり役に立つことはないでしょう。ですから、同行したヘルパーがどのようにして利用者さんと仲良くしているのかを感じてきてください。見るのではなく、覚えるのでもなく、感じてきてください。ヘルパーは七変化です、1件目に訪問した際と2件目に訪問した際とでは、まるで別人のようになることもあります。それは、個々の利用者さんにとってもっとも良いと思う対応を工夫しているからです。それを感じてきてください。そして最後に、1日の同行訪問を終えたとき『なんだか楽しかったなぁ』と思っていただければ実習は大成功です。たった1日同行した実習生に仕事の大変さを見せてしまうようでは、利用者さんに安心した在宅生活のお手伝いなどできないのですから」

実習生は成長の途中です。この段階で「大変だな、嫌だな」という印象を持ってしまったのでは、せっかく志した職業への熱意が失せてしまいます。

もちろん、安易な気持ちで職業にしてしまうのは困ったことです。しかし、実習してみたら嫌になってしまった……というのも寂しいものでしょう。大変な部分はたくさんあるけれど、それでもやり甲斐のある素晴らしい職業なのだという決心をつけて、実習を終わらせていただきたいものです。

お金を稼ぐようになれば、どんな職業でもストレスは伴います。せめて実習期間には楽しい一面を感じてもらい、志した職業に希望をもって就いていただきたいと思います。そのような場面を作ってゆくことも、先を歩いている者の務めなのではないでしょうか。

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