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排泄に関するある施設の取り組み

2017-10-13

先日、施設介護をしている知り合いから相談を受けました。その人の勤めている施設では、「オムツ外し」の取り組みをしているそうです。色々な理由で、やむを得ずオムツをあてての生活になってしまった方々。水分摂取や食事形態、運動習慣により、排泄をオムツではなくトイレで行えるようになるよう、さまざまな取り組みをしているようです。

施設の取り組みとそれに対する疑問

世の中には、さまざまな理由からオムツを使用している人がたくさんにます。例えば体の病気や認知症によって排泄の感覚がなくなってしまったため、オムツを使用するようになった人。

あるいはよく言われることですが、高齢になると喉の渇きを感じなくなり、水分を摂らなくなってしまうことで水分量が不足して便秘気味になる人もいます。すると便秘でお腹が苦しいので、食欲が落ちて便秘が酷くなってしまうのです。その場合、腸閉塞等の病気も懸念されますので、ある程度のところで排便薬を使用することになるでしょう。

こうやって少しずつ排泄の感覚がなくなってしまい、オムツを当てるようになっていきます。

それでも水分量や食事内容の工夫、生活リズムの中でトイレへの定時誘導等を行うことにより、トイレでの排泄を可能にしようという取り組みが知人の働く介護施設で行われています。しかし知人は、この取り組みに疑問を感じていました。 理由はいくつかあるのですが、具体的には次のようなものです。

「体を動かし運動量を増やすことでトイレでの排便が実現した利用者さんが、身体機能が向上したために、今まではほとんど車椅子に座りきりだったのに、自ら立ち上がり歩こうとするように。危なくて片時も目を離すことができず、また元の生活に逆戻りしてしまった。こんなに労力をはらい、データを取ったり集計したり。その取り組みに関わるのは1人や2人ではなく、職員の仕事量は莫大に増加して大変に疲労している。それなのに、上手くいっても逆戻りの生活……」

こういう言い方は、差別になってしまうのかもしれません。しかし高齢になって家で暮らせなくなった人に対して、本人が嫌がることをこちらの都合で押し付けるように行うことに、何か意味があるのだろうか? と疑問を持っているようです。そのため知人は、「静かに今のまま暮らさせてあげたら良いのではないのか」と私に話してきました。

疑問から変化・進化が起こっていく

生活の中では、さまざまなことで常識は変化するもの。身近なことでいえば、ダイエットや美容関連でも、少し前までは最良と言われていたものが今では全く逆の考え方になってしまっていることがあります。医療や介護の分野でも、技術や科学的知見が変化することにより、これまでの常識が非常識になってしまうことも多々あるものです。

世の中すべてのことに対して言えるのだと思いますが、「これでいいのだ」と思ってしまってはいけないのでしょう。常に「これで良いのだろうか?」と疑問を持つことによって向上心は生まれ、向上心を持つことによって変化・進化に繋がるのです。さまざまな取り組みは、もちろん良い結果を目指して行われます。しかし、時に失敗は起こるもの。それでも何もせず、「これでいいのだ」という考えだけでルーティンワーク的に仕事をしているよりは、ずっと良いのだと思います。時に残念な結果が出てしまったとしても、それを考えて改善することによってまた違った良いことが見えてくるものなのです。

このような意見を知人にも伝えたところ、返ってきたのは「その考えを皆に話してほしい」という言葉。そこで私は、この取り組みについてのもうひとつの問題点に気づきました。それは、取り組みに対する意味や意義を管理者が、全員に説明、納得させていなかったこと。そして課題の決定も管理者が行い、押しつけるような形で現場に「させていた」ということです。

向上心を忘れずに取り組みたい

より良い施設介護を実現するためには、さまざまな取り組みが行われています。介護職員それぞれに、日々の仕事の中で疑問に感じ、「ここをもう少し……」などと思っていることがあるはずなのです。ですからその疑問や思いを持ち寄り、話し合いの中で取り組んで行く課題を決定すること。そして、自らがプログラムを作成するような形をとれば、職員の意識も変わり、取り組みにもやり甲斐を持てるのではないでしょうか。

もちろん、必ずしも私の考えが正しいとは言えません。しかし今回知人から相談を受けたことで、自分自身も管理者として現場に目を向け直し、考えるための良い機会となりました。仕事に対して、「これでいいのだ」ということはない。向上心を忘れずに介護にあたりたいと思います。

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