ヘルパーの持つべきプロとしての意識とその影響

2017-11-16

介護保険で利用できる訪問介護、ホームヘルパーは全員が有資格者です。2000年に介護保険制度がスタートするのにあわせてホームヘルパー3級から1級という資格が設けられました。その後、「介護職員初任者研修」「実務者研修」に変わりましたが、介護保険制度を利用して訪問介護をうけるお宅に訪問するには、一人ひとりが全員この資格を取得していなければなりません。今回は、そんなヘルパーという仕事について事例を挙げながら考えていきます。

在宅復帰したものの身体が弱っていってしまった

施設介護の場合は人員配置基準に従い、何名かの有資格者が配置されていれば全員が有資格者でなくても構いません。そのため、ヘルパーステーションは、そういった意味で高度な介護力を備えた場所だと言えると思います。しかし、そういった資格を有する職業なのにも関わらず、その業務内容が掃除や調理といった日常的内容のため、現場ではとかく低い位置にある職業として扱われ悔しい思いをすることが少なくありません。

自宅で生活する上でなくてはならない事をお手伝いするのですが、かつては自分でできていたこと、特に資格がなくても誰にでもできる作業内容だと思われてしまうのでしょう。そんな“誰にでもできる作業”内容ではありますが、プロ意識を持って関わる事により、クライアントの状態が大きく改善した事例をご紹介したいと思います。

Aさん(78歳・女性)は5年ほど前、口のなかにガンが見つかって2度手術を受けました。上顎を切除した事によって喉と鼻腔がつながってしまい、食べ物を飲み込むのに大変に時間がかかります。その他、舌の動きが悪いので言葉がはっきりしない、耳が聴こえにくいという障がいが残ってしまいました。それでも、一時は余命半年と診断された症状が順調に回復し、増設した胃ろうも必要ない状態までになり在宅復帰しています。

そんなAさんは一人暮らしです。認知症はありませんが、身体の状態から「要支援2」という認定がありました。そのため、ヘルパーを週に2回利用し、まずはしっかりと食べて生活するための体力をつけてほしいと希望し、それに沿った計画が立てられてヘルパーの訪問がスタートしたのです。食事はミキサー食なので娘さんが道具を揃え、味がわからないながらも食感や彩りだけでもと色々な食材も用意しました。

しかし、Aさんはどんどんと痩せていってしまったそうです。

娘さんがAさんにヘルパー訪問時の様子を聞いたところ、「食欲がなく今日は何も食べたくないと言うと、ヘルパーは『わかりました』と言って部屋を掃除して帰る」のだと言います。そこで娘さんはケアマネジャーを通して、「もしどうしても食べものはいらないと言った時には、コミュニケーションを取ってほしい」と要望しました。

舌の動きが不自由なAさんにとって、会話は大切なリハビリになります。また、一人暮らしでは会話する機会が乏しいので、認知症も心配だったのです。娘さんも週末には訪問していましたが、それでは回数に限りがあります。そのような要望を2〜3度伝えていたものの、ヘルパーの対応はいっこうに変わらず。そればかりか、慣れてきたヘルパーが来てくれなくなり、都度別のヘルパーが来るようになってしまったそうです。

ケアマネとヘルパーを変えて状態に変化

その結果、Aさんはいちだんと弱々しくなってしまいました。いくら一度は余命幾ばくかと診断されたとはいえ、ガンは取り除かれて再発もしていないのに、悪くなる一方の母親を見ているのは辛い。娘さんはそう考え、思い切ってケアマネとヘルパーをすべて変更することにしました。

介護保険は利用者が自由に事業所を選択できるシステムです。そのため、新しく担当になったケアマネにこれまでの事を全て話し、少しでもAさんが元気になるように、娘さんの希望が伝わるヘルパーステーションをということで私の勤務するヘルパーステーションへ依頼がきました。

ヘルパーステーションでは、特に変わった事を行った訳ではありません。娘さんの望むようにミキサー食を用意し、食欲の無いときには配膳後側に寄り添い、少しでも会話のできる環境を心がけました。

途中、更新時に書いてもらった医師の意見書が幸いしたのか、介護度が「要支援2」から「要介護1」に。これによって、ヘルパーの訪問を月曜日から金曜日まで毎日に増やすことができました。これもまた、以前のヘルパーステーションでAさんが「来てもらってもすることなんかない」と仰っていたものが、ヘルパーステーションを変更したことで「誰かが来てくれると嬉しい」という気持ちに切り替わったからこそ実現した事でしょう。現在、Aさんは随分とお元気になり、食欲も増してきて自分で調理することもあるそうです。

訪問介護の仕事は、介護計画に添って行うことではあります。しかし、掃除や調理といった作業ではなく、その作業を通してクライアントがいかに心身とも元気になるかということだと思うのです。滞在している時間内にどれだけきれいに掃除をするのかを考えるのではなく、「どのようにしたらこの人が元気になれるのかしら」という気持ちをもって接すること、それが重要なのではないでしょうか。同じ作業を行っていても、その気持ちがあるのとないのでは、内容は大きく変わってくると思います。

私たちヘルパーはお手伝いさんではありません。訪問介護員としての気持ちと誇りを持ち、日々の業務にあたりたいと思います。

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