力になりたいと思う気持ち

2018-05-07

介護の現場には色々な方がいらっしゃいますが、共通していることはご自身あるいはご家族のために少しでも力になりたいと思っていることです。介護するうえでの葛藤、介護職として何ができるのか、今回は病気のために片足を切断し、51歳という若さでベッド上での生活を余儀なくされたAさんの事例をとおしてお話します。

右足切断により排便介助が必要に

Aさん(男性、51歳)は糖尿病の持病があり、40歳のときに脳梗塞を起こして右不全マヒと軽い言語障害が残りました。在宅で療養生活をしていましたが、糖尿病が悪化したために右足を膝上から切断しなくてはならなくなりました。不安要素はあったものの手術は成功し、無事に在宅生活を再開できました。私達のもとにヘルパー訪問の依頼が入ったのは、この時点でのことです。

右足切断の手術をするまでは、なんとか自立でトイレに行けていたAさん。しかし右足を失ってしまったことにより、一人で行くことができなくなってしまいました。尿意や便意はハッキリ自覚でき、排尿は尿瓶を使って自分で行うことができます。しかし、排便は自分で処理することはできません。同居者は弟さんのみで、日中仕事をしているために頼ることもできません。いずれは訪問リハビリなどのサービスを使いながらポータブルトイレで排便できるようにしたいという長期目標はあるものの、それまでの間はヘルパーに頼るしかありませんでした。

排便後の処置については、排便のタイミングが分からないため訪問介護計画を作成できません。そこで話し合いの結果、昼食のお弁当を配膳するタイミングで体の清拭や着替え、尿瓶の処置を行うという計画にしました。これをベースに、もし排便が午後になった場合には電話をいただいて訪問をするということになりました。

見えてきた金銭面の厳しさ

訪問開始から約1ヶ月、さまざまなことが見えてきました。その一つが、Aさんご家族の金銭面が厳しい状態だということです。一戸建てに弟さんと二人暮らしですが、ローンがまだ残っていること、半年前に父親が他界してしまったことにより、父親の年金収入がなくなってしまったこと。ご自身の障害者年金と弟さんの収入でやりくりしていますが、Aさんの手術や入院にも相当なお金がかかっており、支払いも完了していないようでした。

Aさんも弟さんも料理が苦手なようで、お米を炊いたりはするものの、それ以外は出来合いのお総菜やカップ麺、パンなどを食べています。Aさんの糖尿病のことを考えると非常に心配な食生活です。そのうえ、先日などは金欠になってしまい年金の支給日までの数日間お昼を抜いていたとか。その時点でまだ1ヵ月ではありますが、このようなことを聞くと「なにかできないだろうか」と思います。

まずはケアマネジャーに報告、相談しました。ケアマネジャーも金銭的に厳しい状況であることは知っていたものの、節約のために宅配弁当を中止していたことについては非常に驚いており、危機感を持ったようです。そこで話し合いの末、昼食だけでもヘルパーが調理したものを食べるようにしたらどうかとAさんに提案しました。しかしAさんの返答は「少し考えさせてくれ」と……。何年も使っていない台所を他人に使われることに抵抗があるのかもしれないと思いました。

ケアマネジャーも簡単にはあきらめませんでした。金銭的に困難な状況を打破するため、次のような提案をしたそうです。それは、世帯分離して生活保護の申請を行い、Aさんは障害者として施設に入所。そして弟さんは家を手放すことにはなってしまうものの、負債を整理することができるといった内容です。

しかしもちろんAさんは「イエス」とは言いませんでした。二人きりの兄弟、お金はないかもしれませんが、住み慣れた自宅で肩を寄せ合い頑張って生活していくほうが良いと思われたのでしょう。たとえお金の心配をせずにすんでも、離ればなれで暮らすよりずっと心豊かにいられるに違いありません。

少しずつでも前に進むために

退院して1ヶ月余りが経ちましたが、当初目標としていたリハビリによるポータブルトイレでの排泄練習も、まだ開始には至りません。実は体重が100キロ以上あるAさん。リハビリを先延ばしにしてしまったことで、上半身の筋力が落ちてきてしまいました。果たして、ポータブルトイレでの排泄は実現できるのか……。不安にはなりますが、まだ若く回復力は十分にあるAさん。困難な状況であっても、希望はあります。

時間はかかるかもしれませんし、少しずつしか前に進めないかもしれません。しかし、できることを精一杯お手伝いして、笑顔で暮らしていけるようこれからも力になりたいと思います。

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