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利用者の「本当にしてほしいこと」とは

2018-05-22

世界に類を見ない超高齢化社会を迎えた日本。介護保険サービスの利用者は右肩上がりで増加しており、私たちのヘルパーステーションも休むことなく稼働し続けています。ヘルパーを続けていると、いろんな場面に出くわします。なかには利用者が普段心にしまっている思いに気付かされることも。今回はヘルパー業務をとおして感じた、利用者が本当に求めていることについて考えます。

ヘルパーに投げかけられる、さまざまな思いや希望

私達のクライアントである訪問介護の利用者の方々は、さまざまな思いや希望を私たちにぶつけてきます。一対一で対応するヘルパーには言いやすいのか、いろんな言葉が飛び出すものです。

例えば、「あなた、車で来ているのでしょう? ちょっとそこまで乗せて行ってくれない?」などはよく言われることです。介護保険制度では、ヘルパーは自らが運転する車に利用者を乗せてはいけないという決まりがあります。有償移送の届け出をし、かつ定められた講習を受けたヘルパーがケアプランに定められた内容で運転する場合のみ、乗車させることが可能です。万が一、事故などが起きてしまった場合、補償問題などで大問題になってしまうからです。そうした前提があるにも関わらず、利用者に「それはできないのですよ」と説明しても、「ケチね!」などと言われてしまうことがあります。

こんな経験もありました。利用者の家で昼食の準備をしていると、利用者が「どうしても鰻が食べたい」と言うのです。一人前では出前してくれないから、あなたの分も頼んだ、一緒に食べてくれと言われたのです。普通、一人前では出前してくれないのはわかります。しかしそれ以上に、「美味しいものは、一人よりも誰かと一緒に食べた方がもっと美味しいから」とおっしゃいます。お気持ちは分かるものの、その言葉に甘えて一緒にいただくわけにはいきません。仕方がないので昼食代をお支払いすると伝えると、「人の好意を踏みにじる人だ」とご立腹されてしまったのでした。

また、ある方からは「今日は何もしてくれなくていいから、じっくり腰を据えて話し相手になってほしい」と言われたこともあります。近所の同年代のお友達がみんないなくなってしまい、かといって子どもたちはいつも忙しそうで相手をしてくれない。たまに顔を見せても、必要な用事を済ませるとお茶を飲むことすらせずに早々に帰ってしまうのだと言って、昔のアルバムを広げています。これもお気持ちは分かるのですが、やはり、私たちにはできないことなのです。もし一人のヘルパーが対応してしまったら、他のヘルパーが来た時に「あの人はやってくれたのに!」といざこざの原因にもなりかねません。

こういうことが起きると、私たちはステーション全体で出来事を共有し、ケアマネジャーにも報告します。そして、この方がお茶飲み話をする機会や場所がないかを考えていきます。実際のところ、それくらいしかできないことが私にとってはジレンマです。

利用者が本当に“してほしいこと”とは何なのか

小さな出来事ですが、訪問したヘルパーに対する利用者の要望を通して、利用者が本当にしてほしいことが何なのかを考えてみました。例えば、こんな話もあります。

「『長生きしてくださいね!』なんて言われるけれど、もうこれ以上は長生きなんてしたいと思わない。できれば早くお迎えがきてくれないかなと思っているけど、勝手に死んじゃうわけにはいかないからね」

とても心に響きます。

自分のことを自分だけではできなくなっていき、配偶者にも先立たれてしまう。さらに、親しい友人もいなくなってしまった利用者にとって、今一番してほしいこととは何なのでしょうか。元気になるため、機能向上のためのリハビリももちろん必要ですが、それだけではなく、気の置けない人との緩やかな時間の共有なのではないかと考えます。

それができずに体の状態がどんどん悪化していっては、本人が人生をより寂しく感じてしまうことでしょう。ケアプランを立てるうえで、まるでモデルケースのように『〇〇介助』、『△△支援』といったものばかりで埋めてしまうのではなく、少し緩やかに、会話を大切にしながら、利用者の“生きる”や“暮らす”ことに対する意欲を引き出してあげる。そんなサポートを心がけたいと思います。

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