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介護施設の抜き打ち実地指導に備える

2016-05-20

神奈川県川崎市で起きた介護付有料老人ホームの虐待事件を受けて、厚生労働省はこれまで事前通知後に実施していた実地指導を、通知なしに行えるものとしました。これは、相次ぐ介護職員による虐待を未然に防ぐための対策です。事業所には、各自治体から通知が届いたことでしょう。抜き打ち実地指導の効果には疑問が残るところですが、介護職員による虐待に歯止めをかけるものになって欲しいと願うばかりです。

抜き打ち実地指導は他人事ではない

他人事のように、「うちは虐待なんてないから大丈夫」なんて思っていないでしょうか。たとえ虐待がなくても、抜き打ち実地指導はやってくるかもしれません。なぜなら通報する人には、以下のような介護の専門家ではない方々が多いからです。

きちんと手続きを踏んだやむを得ない身体拘束でも、何も知らない方が目にすれば虐待に見えてしまうかもしれません。つまり抜き打ち指導は、いつ、どの事業所に対して行われてもおかしくないのです。この「抜き打ち」に備えるため、施設として日頃から取り組んでおくべき事柄を考えていきましょう。

早速取り掛かりたい項目

<各種書類の整備>

通常の実地調査で必要とされる書類については、「まとめて後で」ではなく常に整備しておくことが求められます。今までは忙しさに紛れ、ついつい後回しになっていた事業所もあったかもしれません。しかし、これを機に改善すると良いでしょう。特に加算給付関係やケアプラン関係などの介護保険に係る書類については、毎月ルーチンで完結できるよう、仕事の流れや分担を見直しておくと安心です。

<虐待防止マニュアルの整備>

最初は何かを参考にしたものでも良いと思いますが、自施設の状況に沿った内容へ改訂していくことが必要です。これは「虐待防止」に対して、事業所としてどういった姿勢で向き合っているかという指針にもなり得ます。また、虐待を疑う事例を発見した際のフローなども作っておくと良いかもしれません。それが事実だった場合どのようなペナルティが課されるかなどを明記することで、抑止力としての効果が期待されます。

<研修の充実>

虐待防止や身体拘束廃止に関する研修を多く実施することはもちろん大切です。しかし、たとえ直接虐待に通じるものではなくとも、接遇や認知症対応などの研修内容を厚く充実させることも必要でしょう。基礎的なスキルが乏しく、どうすればよいか分からず虐待に繋がってしまう事例も多いからです。講義的に終わるものでなく、ディスカッション形式や実際に自分たちの施設での事例などを取り上げるなど、より身近に感じられるものが良いでしょう。

長期的に取り組みたい項目

<「あるかもしれない」と疑う>

「うちは虐待なんてないから」と決めつけた見方をしていると、虐待を見逃してしまいます。悲しいことですが、「介護」という仕事の性質上、虐待は起こりやすい問題です。そのため、「虐待はあるものだ」と思って対処するべきかもしれません。虐待には至らなくとも、虐待の芽を摘めるよう、職員の動向には気を配るべきです。また問題の対処にあたっては個人の資質としてではなく、施設全体の問題として対策を考えていきましょう。

<家族や近隣住民とのコミュニケーション>

「これって虐待?」と思う場面に遭遇したら、真面目で善意のある方ならすぐに通報されるでしょう。しかしそこに、懇意にしている職員がいたらどうでしょうか。恐らく通報前に、「こういうことを見たんだけど」と相談するはずです。ふと感じた疑問を気軽に相談できる職員がいることが、こうした誤解を防ぐうえでとても重要です。「聞いてくれれば説明できたのに」とぼやく前に、聞きやすい関係を作りましょう。それには、日頃のコミュニケーションが非常に大切になります。

<職員の労働環境改善>

虐待の原因が、全て待遇や労働環境の悪さに起因しているわけではありません。しかし、その一端であることは確かです。給与改善は難しくても、介護職員の負担を軽くするちょっとした業務の改善などは出来るかもしれません。経営・運営に携わる立場にあれば、職員の気持ちに添うことから始めてみることが大切です。虐待は加害者も苦しんでいる場合が多いもの。職員の悩みに耳を傾け、改善していこうという姿勢が何よりも大切です。職員側にその気持ちが伝わるだけで、何よりも安心できるでしょう。

ここまで、抜き打ち実地指導に備えるために日頃から取り組んでおきたい項目を挙げてみました。これらを日々実行していれば、抜き打ち実地指導を不安に思わなくて済むのではないでしょうか。慌てることなく、「どうぞお入りください」と胸を張って招き入れることができるはずです。

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